住民が反対し、県が自粛を求め、港湾労働者が抗議のストライキを決行する中での入港だ。何が何でも強行する理由がどこにあるのか。
米海軍のミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」が11日午前9時ごろ、石垣港に入港した。
県内の民間港に駆逐艦が入港するのは初めて。全長約155メートル、排水量約9500トンの巨大な艦船で、その大きさから石垣市は当初「入港不可」と判断していた。
それに対し米側は、駆逐艦を沖合に停泊させて乗組員はボートで上陸する計画に変更したのである。数日前には港の周辺に、関係者以外の立ち入りを制限するフェンス設置を市に要請する念の入れようだ。
そうした寄港の目的は「乗組員の休息と補給」という。ただ、スティーブン・D・ザクタJr.艦長は入港後「この時期に石垣へ来た理由は特にない」と述べており、必然性は見当たらない。
駆逐艦の入港は安全を脅かすとして全港湾沖縄地方本部八重山部会の組合員約50人は全面ストに入った。米軍の民間港利用に対してのストは極めて異例のことだ。
入港した駆逐艦は、敵地攻撃が可能な巡航ミサイル「トマホーク」などを搭載できる。昨年9月、14年ぶりに入港した掃海艦とは規模も機能も大幅に異なり、「港湾労働者を危険にさらすことはできない」との懸念は当然だ。
ストは駆逐艦の出港予定の13日まで続けられる見通しで物流への影響は避けられない。米軍は、入港が地元の混乱を広げていることの責任を自覚すべきだ。
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米艦船の強行はこれまでも繰り返されてきた。
2009年には当時の港湾管理者である市長が反対する中、復帰後初めての入港が強行された。当時も今も米側が根拠にするのは日米地位協定だ。
陸上自衛隊石垣駐屯地の開設以降、石垣市では有事を想定した配備や訓練が相次いでおり、そうした動きに合わせこうした米艦船入港のペースも上がっている。
政府は「特定利用空港・港湾」施策で、自衛隊などの艦船が平時から民間港を円滑に利用できることを狙う。八重山では石垣港を含め5カ所が候補に挙がっている。
政府は米軍も利用できるとの見解を示しており、今回の入港はその地ならしとしての「政治的行動」ではないか。
米軍は強行した理由を説明すべきだ。
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公共インフラの軍事利用に住民からは不安の声が上がっている。
波照間空港を有する波照間島の住民アンケートでは6割が軍民共用化を条件とする滑走路延長に反対した。
石垣市など5市町の首長が玉城デニー知事に政府の「特定利用」施策に同意するよう要請していることに対し撤回を求める動きもある。
空港や港湾は離島の人々にとって重要な生活インフラだ。特に国境を接する地域では、周辺の緊張を高める恐れもある。住民を不安に陥れるような利用はすべきでない。