日本の性同一性障害者の中に旅券の性別Xを必要としている人がおり戸籍の性別欄が空欄となる性分化疾患患者の例からMTFSRS手術済みGIDMTFの私にとって男女二元論に納得できない理由と特例法生殖能力喪失要件外観要件等手術要件が不可欠な理由。

特例法手術要件含むの母親の会さんの戸籍に出生時の性別を記載するのは良いですが続柄しか変更できない形に対する私の回答はNOである、出生時の生物学的性別を戸籍の性別に記載した上で性別適合手術後の生物学的性別を特例法手術要件含むに基づいて、家裁提出の性別適合手術済み診断書に基づき性別適合手術後の生物学的性別も戸籍の性別も記載する必要があります。
特例法手術要件に基づく戸籍の性別変更の記録は、転籍後も消えないように日本の戸籍制度の正確性確保の対策をする必要があります。
GC女性のいう身体の性別は変えられないは、出生時の生物学的性別の記録を示すものであり、お母さん連合会資料及び現行の手術要件含む特例法に基づくと18歳成人後、性同一性障害者の患者が手術要件含む特例法に基づく性別適合手術を行って特例法手術要件含むにしたがって、性別適合手術済み診断書を家裁提出し性別適合手術後の身体の性別に合わせて戸籍の訂正つまり戸籍の性別変更する手続きにより性同一性障害者は性別適合手術という外科手術により生物学的性別を変更し、特例法手術要件含むに基づく家裁での戸籍の性別変更手続きにより性別適合手術後の身体の性別に合わせた戸籍の性別になることが出来ます。
性別適合手術したが、戸籍の性別変更出来てない性同一性障害者や戸籍の性別らん空白の性分化疾患の患者は第三の性別である旅券の性別Xを必要としています。
またMTF性別適合手術後も女湯で盗撮等の犯罪する人いるについては、生物学的性別が同性間の犯罪であり公衆浴場等の利用規約に性別関係なく浴場の盗撮等の行為を禁ずるなどして対処すればよいと私は考えます。
性別適合手術は身体の性別違和解消の為に、身体の性別を変えるため性同一性障害者本人の意思で行うものであり性別適合手術しても身体の性別を変えられないという意見には私は同意できない。
性同一性障害特例法の手術要件に関する意見表明手術要件の撤廃には、更なる議論が必要 2019年2月20日の意見にあるとおり、生殖能力喪失要件違憲最高裁判決には特例法手術要件維持を必要とする権利が侵害される生物学的女性の意見が反映されてない事に加えて、
海外の手術要件撤廃の簡易化の失敗例を踏まえるならば、生物学的性別による区別を守り男性器付き女性を作らない形で性同一性障害者の信頼を守る上で客観的要件として手術要件を必要としている美山みどり代表のGID特例法を守る会さんの意見を日本のGIDの意見として対処する事で、エビデンスに基づく医療モデルを必要とするGIDである性同一性障害者と生物学的女性双方の権利を守る必要があるのではないか。
手術しても性別を変わらないといわれても、性別適合手術で身体の性別は移行後の性別の身体に代わっており特例法は性別適合手術後の身体の性別に合わせて戸籍の性別変更が行われるものである。
性別適合手術しても身体の性別変わらないという人に対して性別適合手術後の身体を持つ性同一性障害者は第三の性別である性別Xを必要とするのではないか。
また出生時の性別診断で出生時の戸籍の性別を空欄や保留とされる人もいる性分化疾患を持つ人も医師の診断で、成長後に身体の性別の特徴から戸籍の男性や戸籍の女性に割り当てされる人ばかりとは限らず、成人になっても戸籍の性別を空欄や保留とされる人もいる性分化疾患患者は戸籍の性別Xや旅券の性別X必要とするのではないでしょうか。

客観的要件であり性同一性障害者の生物学的性別に合わせた戸籍の性別変更には性別適合手術と性別適合手術済みである事を示す医師の診断書が必要不可欠であるとする生殖能力喪失要件外観要件の特例法手術要件が性同一性障害者に対する信頼と生物学的女性の身の安全を守っており、性同一性障害者が旅券の性別Xを必要としておりその旅券の性別Xは出生時の生物学的性別が男女二元論では非典型な為、戸籍の性別欄が戸籍法で空欄になる性分化疾患の患者にも必要であるのはないかという根拠を示す資料を下記に掲載します。





GID特例法の「生殖不能要件」を、2023年10月25日の最高裁大法廷は「違憲」と決定しました。裁判結果の詳細はこちらからご確認ください。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92527



 これについて、当会も参加している「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」は抗議声明を出しました。全文は以下のとおりです。また、全文のPDFダウンロードは「女性スペースを守る会」様のnoteから可能です。
 

2023年(令和5年)10月30日

声    明

女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会
女性スペースを守る 会
性 同 一 性 障 害 特 例 法 を 守 る 会
平 等 社 会 実 現 の 会
白百合 の 会
No!セルフ ID 女性の人権と安全を求める会
性 暴 力 被 害 者 の 会
女性の権利を守るトランスの 会
(旧性別不合当事者の会)
及 び 有 志 (順不同)

 当連絡会は、10月25日、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)がした、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に関する決定につき、次のとおりの声明を発する。

 最高裁判所大法廷は、上記特例法3条4号の「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」につき違憲とし、5号の「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。」については高裁段階で主張も憲法問題も検討されていないとして、自ら判断はせずに審理を広島高裁に差し戻した。憲法判断としては、15人全員の一致で4号生殖機能喪失の要件は違憲とし、三浦、草野、宇賀の3人の裁判官は5号の外観要件も違憲だから差し戻しせずに変更を認めよとして反対意見を示した。


 最高裁のとんでもない暴走である。それも制度上、相手方がいない法廷、申立人側の主張や立証だけの裁判にて、国会が定めた特例法の生殖腺機能喪失要件を違憲としてしまった。うち3人は外観要件についてもわざわざ違憲と判断した。
 それは、女性の権利を劣後・矮小化した暴走である。女性が差別され、不利益を被るのは、性別(SEX)を根拠としているという歴史的事実を無視して、つまりは男性の身勝手・女性の侮蔑・差別主義である「性自認至上主義」に侵された最高裁になってしまっていた。
 決定文は、いかに相手方が存在しない裁判であって申立人側とは見解を異にする主張に触れられなかっただろうとはいえ、この数年間ますます明らかになってきた様々な実態になんら言及していない。すなわち先行した国々で女性の安心安全が害されている状況、イギリスが正常化に舵を切り苦労している実態、国際水泳連盟や世界陸連では男性としての思春期を幾分でも経験した者は女子スポーツ選手権への参加資格がないとしたこと等の言及さえない。15人の裁判官はなんら知らないままなのだろうか、不勉強が極まるという外はない。

 決定文から読みとれることは、既に問題を露呈し続けているという外はない「性自認は他者の権利法益より優先すべきである」とする「性自認至上主義」に基づく論理展開ばかりである。
 まさに最高裁の暴走である。


 今回の最高裁決定には、下記のごとき文脈までもあり、批判を免れない。
① 「生殖能力の喪失を要件とすることについて、2014年(平成16年)に世界保健機構等が反対する共同声明を発し、また2017年(平成29年)に欧州人権裁判所が欧州人権条約に違反する旨の判決をしたことなどから(6ページ)」
② 「性同一性障害者がその性自認にしたがった法令上の性別の取り扱いを受けることは、(中略)個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益である(7ページ)」
③ 「本件規定がなかったとしても、生殖腺除去手術を受けずに性別変更審判を受けたものが子を設けることにより親子関係等に関わる問題が生ずることは、極めてまれでことであると考えられる(8ページ)」
④ 「そもそも平成20年改正により成年の子がいる性同一性障害者が性別変更審判を受けた場合には、「女である父」や「男である母」の存在が肯定されることとなった(8ページ)」
⑤ 「強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の取り扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一(8ページ)」等々である。


 右の①の、世界保健機構、欧州人権裁判所の判決などを無批判に記載したままであることは、信じがたい。申立人側の主張そのままであろう。

 国連の人権機関は、日本に対し死刑制度を廃止すべきと数十年も前から何度も勧告している。それでも、日本は死刑を廃止していない(なお、当連絡会は死刑制度の存否についての意見はない)。違憲だという下級審判決が出たこともない。死刑制度の違憲性の判断は具体的には刑事裁判の中で争われる。検察官は弁護側に対抗し国民の関心がある中で死刑制度の合憲性を説明し、裁判所が判断する。一方で、手術要件については家裁、高裁そして最高裁でも、検察官も国の訴訟を担当する訟務検事などその他の相手方が居ない。ために、死刑制度の論議と比較して、最高裁は課題に対する真摯な姿勢を失っているのではなかろうか。

 最高裁はまた、③の生殖腺機能喪失要件がない場合は「女である父」「男である母」が生じる可能性が相応にあることを知るべきである。従前から女性という性自認を持ちながら父となった方も相応に居るのだから、生殖腺を失わずに性別変更ができるのであれば「父である女」が続々と出現すると予想される。女性から男性へという静岡家裁浜松支部のこの10月11日付審判事例の類型に相当する方の場合でさえ、メディアで報道されている通り乳房切除までもしたがパートナーとの間で子を設けた例もある。性別変更が認められていれば「母である男」となる。決して稀なことではなくなる。 
https://www.hbc.co.jp/news/904c73d0a07a95672d701742821dfdd9.html

 ④の特例法の平成20年改正は、子の福祉のために、未成年の子がいる場合には「女である父」や「男である母」とはしないままとしている。まして子の出生時点にあっての「出産した母だが男」「生物学的な父だが女」という事態は、まったく段階が違う課題である。


 そもそも、「性自認は女だが書類上の性別は男という食い違いには耐えられないが、トイレや風呂でいつも見る精巣のある自分の体と性自認の食い違いには耐えられる」という事態は、どういうことだろうか。日々見る自らに精巣・陰嚢がある、これからも父となる可能性もあるにかかわらず、書類上の肩書の違和には耐えられないからとして法的女性になることを認めて良いのだろうか。

 特例法は、身体違和がきつく固着し、自ら希望して性別適合手術をした人の生活の不便さを考慮して法的性別の変更を制度化したものではなかったか。すでに法的性別を変更している方々が社会で一定の社会的信頼を得て生活しているのは、自ら望んだ手術を終えているからこそであるのに、その前提を欠けば皆の信頼が失われてしまう。最高裁はそれをどう捉えているのか。
 まして精巣の除去は卵巣や子宮の除去に比較して実に容易である。精巣を持ったままに、書類上である法的性別を女性に変更することが、どうして上記の②の「人格的存在と結びついた重要な法的利益」と言えるのだろうか。どうして⑤の生殖腺機能喪失要件が「過酷な二者択一」だといえるのだろうか。

 身体違和がさほどきつくなく精巣の除去を含めて性別適合手術を必要としない方は、法的性別を変更しようとしなければよいのである。変更せずとも生活に差し支えない社会を作ることこそが重要ではないのか。女性だと認識しいわゆる女性装を日々する人も、排泄は認識からではなく身体からするのだから男子トイレに入ることも相応にある。その際に時に男性から揶揄され、時に暴力を受けることがある。それこそが排除であり差別であろう。法的性別を変更して女子トイレを利用する権限があるなどとする前に、男子トイレで男性からの揶揄・暴力のない状態にすることが重要な人権ではないのか。

 はたして、憲法13条幸福追求権として、精巣があるままに②の法的女性になることが「人格的存在と結びついた重要な法的利益」として保障されるべきなのだろうか。日本にあって国民的に議論され、社会的に承認された考えだとは到底言えないのではないのか。


 最高裁は、女性スペースにおける女性らの安心安全という生存権を、いったいどう考えているのであろうか。女子トイレなどができた背景を考えたのであろうか。

 性犯罪は、圧倒的に生得的な男性からの女性や子どもに対するものである。また、性同一性障害であろうとなかろうと、生得的な男性は、体格、身長、筋肉ともに一般に女性より優位にある。強姦事件で妊娠の可能性があるのももちろん女性である。すなわち、女性スぺースにあっては、性同一性障害者を含む生得的男性すべてに比較し、女性こそが弱者の立場でありマイノリティである。性犯罪目的の男の一定数は、生殖腺除去を要せず、更に5号要件である陰茎の除去もなくなることとなれば、何としても法的性別を女に変更するよう努力するだろう。最高裁は、女性の安心安全という生存権を劣後・矮小化してしまったのである。

 あるいは、5号の外観要件までも違憲とわざわざ記載した3人の裁判官のように、共同浴場では身体的特徴によると法律で定めればよいと言うのであろうか。それでは、女子トイレはどうするのか、更衣室はどうするのか、シェルター、病室はどうするのか、刑務所はどうするのか、統計はどうするのか。「法的性別」が曖昧なものとなり概念として混乱するばかりとなる。


 最高裁は、「性別」を蔑ろにしている。性別は、動物である以上は現生人類が成立する前からある男女の区別である。血液型や年齢などと同様に生得的なものであり「所与の前提」である。

 最高裁は、「性別」を時代と地域で異なる「らしさ・社会的役割」である「ジェンダー」とを混同しているのではないか。どのような「ジェンダー」をまとうかは、それぞれの幸福追求権の一環として自由であり、これに縛られてはならない。生得的男性がいわゆる女性装や仕草をすることも、その逆もまったく自由である。各個人がいかなる性自認を持とうとまたいかなる性表現をしようと、他者の権利法益を侵害しない限りは自由である。それが、憲法の拠って立つ自由主義であったはずである。

 他方、法的性別は、制度の一部であるから、他者に「そのとおりに対応せよ」という強制の要素を持つものである。既に約13,000人が生得的性別は変わらないことを前提としつつも法的性別を変更している。特例法はこの19年間、特に社会的不安を起こさずに機能してきた。

 理由は単純である。法的女性とは精巣の除去、陰茎を切除した人であることが前提となっており、それが性犯罪目的などにより、男性から女性に法的性別を変更する人はまずないというハードルになっていたからである。特例法は、あくまできつく固着した身体違和を解消するために、自らの意思で性別適合手術までした人に対する個別救済法である。制度だから他者に「そのとおりに対応せよ」という強制の要素を持つが、いわゆる手術要件を中核とするからこそ、全会一致で成立した。決して、性別適合手術をするか法的性別の変更をあきらめるかを迫るといった「過酷な二者択一を迫る法律」ではない。

 また、この6月成立の理解増進法は、いわば「性の多様性」を承認し理解増進をとしているのであって決して「性別の多様性」を認めているものではない。ジェンダーアイデンティティがいかなる者であっても尊重されるが、「それにしたがった法令上の性別の取り扱いを受ける権利」を予定したものでは毛頭ない。その第12条に「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう」とするなどした立法過程を見れば明らかである。

 最高裁は、「性別」というものを蔑ろにして法的性別の概念をもてあそび、性自認至上主義により、安易に「女性」「男性」の定義を変更しようとしているという外はない。


 このような性別を安易に扱う考え方をとれば、性自認至上主義が先行した国々と同様の混乱を導くばかりである。多く誤解されているが、「ジェンダーアイデンティティ」が食い違うとするトランスジェンダーのうち、性同一性障害の診断がある人は15.8%にとどまり(令和元年度厚生労働省委託事業職場におけるダイバーシティ推進事業報告書105ページ)、84.2%はこれに入らない。

 そしてその診断も15分で済ませてしまうクリニックが存在する実態がある。日本精神神経学会性同一性障害に関する委員会のガイドラインに基づいた診断を厳格に実施することこそが重要であるのに厚生労働省の努力は見られず、GID(性同一性障害)学会は2021年5月、特例法の手術要件の撤廃を求めるあり様であって、概念の変更問題もあり特例法が性別取り扱いの変更に直結するにもかかわらずその責任を全うしようとしない。

 4号の生殖腺機能喪失要件そして5号の外観要件が外れれば、文字どおり「男性器ある女性」が続々と登場する、その先には「性同一性障害」ではなく、ジェンダーアイデンティティ(性同一性・性自認)に基づく法的性別の変更が認められる制度があり、やがては決定文中一人の裁判官が何度も言及したドイツにおける性自認至上主義のごとく、裁判所の関与さえないままに法的性別が変更できるとする方向性となる。先に述べた通り性犯罪目的の男や、女性を侮蔑・差別したくその専用スペースを侵害することによって喜びを得ようとする一部の男は、法的性別を女性に変更するよう努力するだろう。それで良いのであろうか。


 法律を違憲とすることは法の形成過程の一つであって、今回の最高裁決定は、まさに性自認至上主義を大きく伸展させる法律の登場である。先行する国々では混乱が多々あるのに、日本に周回遅れでこれに従えとするものであって、まったく異常である。

 ただし、最高裁の多数意見は今回、4号生殖腺喪失要件を違憲だとして原決定を破棄し、5号要件について事実関係の確認と憲法判断をさせるべく広島高裁に差し戻した。それは、3人の裁判官が5号外観要件をも違憲として自判により性別変更を認めるという姿勢と異なり、高裁に預ける手法による先延ばしであり責任の回避でもある。

 最高裁の多数意見が最終判断をしないという逃げの姿勢に至ったのは、私ども連絡会をはじめとする多くの国民が、最高裁に向けた様々な運動を繰り広げてきた成果ではあろう。私どもが、性自認至上主義の問題点につき報道が少なく、これに疑義を述べると「差別扇動だ」などと様々な方法で言論を抑圧されながらも、これに耐えて運動してきた意義があったのではないか。

 今、国民こそがもの言う機会を得た。政府やメディアが十分な調査と正確な報告を国民に提供し、国民的な議論のうえで国会がよりよい法律を作る、また最高裁を変える機会を得た。


 女性が、未だ経済的、社会的に様々な不利益を被るのは、性別(SEX)に拠るものであり、決して外見や行動の側面に基づくものではない。体格、身長、筋肉で男性より劣り、月経・妊娠・出産があることから社会構造的に様々な不利な状況にある。だからこそ、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)第1条は「on the basis of sex」と明記し、女性の権利の保障を要請している。その趣旨から、同条約の第5条aは「両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため,男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」を、締約国がすべき措置としている。今年のG7サミットのコミュニケにいう「有害なジェンダー規範」の打破もこれに類似する。

 しかるに、性自認至上主義は「トランス女性は女性だ」という思想であり、性別(SEX)を基本とした男女の定義を意図的に軽視している。これは明らかな誤りであるが、仮に性自認至上主義を採るのであれば、歴史的に獲得されてきた生得的な女性の安心安全という権利法益などが後退しないように、しっかりとした社会的合意を得るべきであるのに、それを議論しようともせず不公正きわまりない。


10 以上のことから今、私たちは次のとおり提案する。

 第1に、政府各省庁は、以下のような調査を行うべきである。
・先行した国々のここ数年間の状況と動向
・不特定多数が使用するトイレ、共同浴場などにおけるトラブルの有無、対応状況とその変化
・いわゆる女性スぺースにおける国内の刑事事件や女性装がからむ刑事事件の調査
・性同一性障害の診断の実態と信頼性に関する調査
・法的性別を変更した人のその後の調査
・性別適合手術をしたが法的性別を変更していない人の調査
・性別適合手術はしたくないが法的性別を変更したいとする人がどの程度いるかの調査
・性別移行を断念または中止した人の調査
・その他、シェルター、代用監獄、刑務所、病院、自衛隊などでのトラブルや運用実態の調査

 第2に、メディアは、性同一性障害とトランスジェンダーを混同して議論することは厳に慎み、上記の情報や、当連絡会を含め多くの国民のさまざまな見解、情報を報道し、また国民が自由に判断できるように意見の異なる者の間での公開討論の機会など用意すべきである。

 第3に、国民はそれらに基づいて、すべての人に人権があることを念頭に置いて、先入観にとらわれることなく自らの意見形成に努めるべきである。そのためには、差別者とは話さないなどと言って論者が議論を拒否する姿勢のまやかしを知り、言論の自由な市場が確保されなければならない。

 第4に、各政党は、当連絡会を含め多くの国民のさまざまな意見を聴取し、党内でも自由に議論して方針を定めるべきである。

 第5に、それら議論にあっては、女性は、性別(SEX)に拠ってこそ未だ経済的・社会的に様々な不利益を被っていることを前提として認識すべきである。それにもかかわらず、法的性別が生得的性別とよりかけ離れたものとしてよいものか、そうなれば、また女性スぺースや、男女の実質的平等をめざす様々な措置、統計、スポーツなどの場面で混乱していくことを認識すべきである。

 第6に、国会は、4号生殖腺機能喪失要件はもちろん、5号外観要件(特に男性の陰茎につき)は尚更に決して急ぎ削除などを検討すべきではなく、上記に基づいて慎重に対処すべきである。5号要件は決して違憲判断が示されたものではない。
 国会はまた、生得的な性別に基づく区別が差別にあたらないことを明確にする法律を成立させるべきである。特に、性犯罪は圧倒的に生得的男性の女性、子どもに対するものなのであるから、避難場所である「女性スぺースを守るための法律」を早急に成立させるべきである。

 第7に、この裁判を差し戻された広島高裁は、早期に本件の判断をすべきではなく、様々な調査結果と国民的な議論の行方をよく見極めるべきである。国から参加申出があったときは直ちに認めるべきである。

 第8に、そのためにも国は、これからでも法務大臣権限法と家事事件手続法に基づきこの裁判に利害関係人として参加すべきであり、仮に法律上どうにも参加できないとするならば法の欠陥であるから直ちに改正をして参加すべきである。

 第9に、国民は、次の衆議院議員選挙における国民審査において、この15人の裁判官につき4号生殖腺機能喪失要件につき違憲とする大きく間違った判断をした以上は、罷免させるべきである。

 第10に、内閣は、最高裁裁判官に定年等で欠員が出たならば、このような「性自認至上主義」に嵌っていない方をこそ指名すべきである。

 日本の主権者は我々国民である。それにもかかわらず国民的な議論がなされないままに、申立人側の主張立証のみでこのような違憲判断が下されたことは、極めて異常である。いかなる法律も、すべての国民の権利法益を守るために作られ運用されなければならない。国民間の権利法益が衝突するときは十分な調査と議論のうえで調整が図られなければならない。最高裁の暴走は許されない。

 以上をもって、声明とする。

https://no-self-id.com/2023/11/05/statement/
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日本の動き
「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」として、10/25の最高裁判決への抗議声明を出しました


【ガイドライン作成の目的(テーマ)】
 性分化疾患(Disorders of Sex Development:DSD)は,性腺,外性器および内性器の分
化が非典型的である状態をいう.生直後から生涯にわたり,内科的・外科的治療に加え,心
理的なサポートも必要となる.出生時にこの状態に気づかれた場合は,社会的性の決定に関
わる問題であるため,医学的にも,また両親の心理面においても迅速で適切な対応が必要で
ある.しかしながら,稀少疾患が多いこと,専門医がチームで診療できる施設が少ないこと
から,その対応は必ずしも適切に行われていないのが現状である.そこで,本邦における
DSD 診療の標準化・均てん化を目的として,出生時から 2 歳までの新生児・乳児期における
初期対応の手引きを作成した.
【対象とする疾患・病態(あるいは患者)】
 性分化疾患(Disorders of Sex Development:DSD),すなわち性腺,外性器および内性
器の分化が非典型的である状態を有する 0~2 歳の患者
【ガイドラインの利用者】
 小児内分泌専門医,小児科専門医,産婦人科専門医,新生児科専門医

 卵巣・精巣や性器の発育が非典型的である状態

外性器所見が典型的男児/女児とは以下の点で異なる.
1.性腺を触知するか?:停留精巣など
2.陰茎あるいは陰核の状態:矮小陰茎あるいは陰核肥大か?
 *‌亀頭が露出していれば陰核肥大を疑うが,露出していなくても陰核肥大でないとは
言えない.
 3.尿道口の開口部位:尿道下裂あるいは陰唇癒合がないか? 通常の位置と異ならない
か?
性分化疾患は,その取り扱いについて
経験の豊富な施設で扱うべき疾患である
附:戸籍の届出・戸籍法について
(1)届出
戸籍法第四章第二節 出生
第四十九条 出生の届出は,十四日以内(国外で出生があったときは,三箇月以内)にこれ
をしなければならない.
2 届書には,次の事項を記載しなければならない.
 一 子の男女の別および嫡出子又は嫡出でない子の別
 二 出生の年月日時分および場所
三 父母の氏名および本籍,父又は母が外国人であるときは,その氏名および国籍
 四 その他法務省令で定める事項
説明:上記の出生届が原則であるが,以下が可能である.
1)戸籍の未載について
 ◦男女性別は未載可,医師の証明書を添付し「追完」できる.
 ◦名前も未載可,「追完」できる.
 ◦ただし,いずれの場合も「追完」の記録は残る.
2)届出そのものを遅らせることについて
 ◦14 日以内が原則であるが,遅れても受理はする.
 ◦ただしその場合,以下の過料が課せられる可能性がある.
戸籍法第九章 罰則
第百三十五条 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は,五万円以下の過料に処する
(2)戸籍における性の変更について
 ◦医学的事由があり,妥当と認められる診断書が提出され家庭裁判所で認められれば性の
変更は可能.
 ◦変更の記録が残るが,転籍・結婚で性変更の記録は消える.
注)性同一性障害と性分化疾患における性同一性障害を伴わない性の変更の異同について
 性同一性障害者の性別変更については,厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書の提出などが定められている.基本的に性同一性障害を伴わない性分化疾患における性
の変更(診断の変更など医学的事由による)とは区別して扱うべきである.ただし,完全に
別個に扱うことが不可能な事例もあることを認識して対処する.
戸籍法第三章 戸籍の記載
第二十条の四 性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律(平成十五年法律第百
十一号)第三条第一項の規定による性別の取り扱いの変更の審判があった場合において,当
該性別の取り扱いの変更の審判を受けた者の戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれ
た者を含む.)が他にあるときは,当該性別の取り扱いの変更の審判を受けた者について新戸
籍を編製する.

seibunka_guide.pdf







外務大臣 岸田 文雄 様

【要望の要旨】旅券に記載する性別は、少なくとも身体の状態に合わせた性別表記としてください。更に、社会生活上の性別を基準とすることを検討してください。
パスポートの性別欄に、MとFだけでなく国際民間航空機関(ICAO)でも認められている 「X」記載を選択できるようにしてください。


【要望の理由】

平素は、性同一性障害の問題にご尽力いただき、心より御礼申し上げます。
私たちは、全国に1150名の会員が所属する性同一性障害の当事者団体です。
性同一性障害とは、身体上の性、社会生活上の性と精神の性が一致しないことにより、多大な苦痛 ・苦悩を有する状態のことをいいます。

現在、旅券(パスポート)の性別記載は、戸籍の性別を基に記載されています。しかし、性同一性障害特例法の要件を満たさないなどにより性別の取扱いの変更を行うことができない性同一性障害の当事者は、このために多大な苦痛を受け、弊害に遭遇しています。
まず、入出国のイミグレーションで本人かどうか疑われます。ホテルのチェックインやクレジットカード、トラベラーズチェックの使用と言った場合にも旅券の提示を求められることがあり、無用なトラブルに巻き込まれます。場合によっては、ヘイトクライム(憎悪犯罪)により、殺される可能性さえ無くはありません。特に男女に扱いが異なる国においては尚更です。

特に9.11同時多発テロ事件以来、入出国時に厳しく検査されるようになり、様々なトラブルが起きています。
旅券の最初のページには「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。」とありますが、性同一性障害の当事者が旅券を保持して旅行することは、逆に本人を危険にさらすことになりかねないのです。

そこで、旅券に記載されている性別を、少なくとも性別適合手術をすでに受けている者は、現在の身体の状態に合わせた性別表記とし、さらに可能であれば、異なる性で生活をすでに送っているなど、緩和した条件で性別記載が行われるよう要望いたします。また、国際民間航空機関(ICAO)でも認められている、性別欄「X」記載の採用もお願い致します。これは、オーストラリアを始め、多くの国で採用されています。 ぜひご検討をいただき、この問題の更なる解決に、ご助力いただきたくお願い申し上げます。

平成25年6月13日
一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる
代表 山本 蘭

https://gids.or.jp/info/jimukyoku/20130613_2
性同一性障害を有する者の旅券(パスポート)についての要望書2013|外務省

Posted by jimukyoku



2019年(平成31年)1月23日、最高裁判所は性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下性同一性障害特例法)が定める性別の取扱いを変更するための「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」と「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」という条文(以下手術要件と呼びます)が、憲法13条などに違反するとして、戸籍上は女性である岡山県在住の臼井崇来人(たかきーと)さんが手術を行わないで男性への性別の取扱いの変更を求めた家事審判で、「現時点では憲法に違反しない」との初判断を示し、性別の取扱いの変更を認めない決定を出しました。

これは裁判官4人全員一致の意見ですが、うち2人は手術なしでも性別変更を認める国が増えている状況を踏まえて「憲法13条に違反する疑いが生じている」との補足意見を示したとのことです。

私たちは最高裁判所判断を妥当である考え、支持します。

以下、性同一性障害特例法の手術要件について、当会の考えを表明いたします。



1.性別適合手術は、強制断種手術ではない

性同一性障害特例法に手術要件があることを「断種要件」と呼んだり、旧優性保護法下において、遺伝性疾患や知的障害、精神障害の方の一部が国によって強制不妊手術を受けたことに関連づけて、国による不妊手術の強要であるとか強制断種であるかのように報道されたり主張する人が存在します。
しかし、性別適合手術や手術要件は、強制不妊手術でも強制断種でもありません。
まず、国による強制不妊手術は、本人の同意無く行われたものです。しかし、性同一性障害における性別適合手術は、本人の強い希望によってのみ行われ、しかも全額自費です。
性同一性障害の当事者の多くは、手術を受けたいために懸命にお金を貯めて、精神科や婦人科や泌尿器科に(場合によっては何年も)通って診断書をもらい、更に手術まで何年も待たされたり時には海外に行ったりしてまで受けます。
元々性別適合手術は、手術を嫌がる医師を懇願の末になんとか説得して、ようやく始まったという歴史的経緯もあります。このように強制性は存在しません。
確かに一部の当事者に「手術は受けたくなかったが特例法によって戸籍の性別の取扱いを変更するためには受けざるを得なかった。これは一種の強制である」と主張する人もいるようです。しかしながら、これはおかしな話と言わざるを得ません。
そもそも性別適合手術は、身体に対して強い違和感があり、それを解消するために行われます。精神科医が患者を診察して、本人が強く希望し、性別に対する違和感からくる苦痛・苦悩を取り除くためには手術をするしかないと判断して初めて行われるものです。しかもその診断が間違いでないように2人以上の精神科医が診ることになっていますし、更には専門家による判定会議も行われます。
当然、戸籍変更したいからというような個人の利得のために行うものではありませんし、それを理由として手術を希望しても、本来精神科医の診断は得られないし判定会議も通りません。
もし、本当は手術をしたくなかったけれど、戸籍の変更のために仕方なくやったという人がいるなら、その人は精神科医も判定会議のメンバーも騙したということに他なりません。
また性同一性障害特例法は「性別の取扱いの変更を行うには、手術をしなさい。」と定めているわけではありません。
この法律は、手術を行い、男性として、あるいは女性として生きている人の戸籍上の性別を、そのままだとあまりに不便だろうから現状に合わせて変更しましょうというものです。
つまり、「特例法の要件を満たすために手術をする」のではなく「手術をした人の性別を追認する」ための法律なのであり、順序が逆なのです。

2.性同一性障害の当事者の中でも意見が分かれている

そもそも、この手術要件の撤廃を性同一性障害の当事者が全員望んでいるのかというと、そうではありません。特に当会に所属している当事者の方には、手術要件の撤廃に反対の立場を取る人も多く存在します。
性同一性障害の当事者のうち、特に身体に対する強い違和感がある中核群と呼ばれる人たちは、手術を必要としています。従って中核群の当事者にとっては、手術要件があったとしてもそれ自体は大きな障壁とはなりません。

3.権利を侵害されることになる側(特に女性)への配慮が必要

手術を必要としないとなると、男性器を持った女性、女性器をもった男性が存在することになります。
世の中にはトイレ、更衣室、浴場、病室、矯正施設など男女別の施設がいくつもありますが、これらの施設が男女別になっていることには意味があります。特に、性的被害を受ける可能性が高い女性にとっては「安心・安全な環境を提供する」という意味合いがあります。
しかし、手術を必要とせずに戸籍の性別変更ができるとなると、男性器をもった人、しかも場合によっては女性を妊娠させる能力を持った人がこうした女性専用の施設に入場してくることになります。
世の中に女装した人の痴漢行為や盗撮などの性犯罪が多く存在する昨今、これで本当に女性の安心・安全な環境を提供することができるのでしょうか。
実際、手術要件の存在しないイギリスやカナダでは、女性用刑務所に収監された未手術の受刑者による強姦事件も発生しています。
もちろん、そうした罪を犯す人が悪いのであって、それによって無関係の人にまで累が及ぶのはおかしいという考えもあるでしょう。
しかし、罪を犯す人が悪いだけという論法であれば「女性専用車両」というものは必要ないわけです。痴漢は、それを行った人だけが悪いのであって、他の男性は無関係です。しかし女性専用車両が必要となった背景には、そうでないと女性の安心・安全な空間を確保できないと判断されたからです。
女性は、多くの人が小さいときから性的関心を受けたり怖い思いをしたりしています。触ったり盗撮したりという明らかな犯罪まではいかなくても、じろじろ見られたり、迫られたりしたこともあるでしょう。
それを考えれば、これはやはり男女別施設によって安心・安全な環境を提供されるという権利を侵害していると考えられます。となれば、当事者側の権利の主張だけで物事を通すことはできません。
それでは、入れ墨のように施設によって未手術の人を排除するということは可能なのでしょうか。
これも難しいでしょう。特例法では、第4条第1項に「法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす」と定められています。従って性器の有無だけで法的に性別が変わった者を排除することに合理性は見いだしにくく「差別」にあたることになります。数年前に静岡で性別の取扱いを変更した人がゴルフ場への入会を拒否された事件では、差別にあたるとしてゴルフ場側が敗訴しました。
それでは「法律で別段の定めを作れば良い」という話になるでしょうか。例えば「未手術の人は特定の施設の利用を制限できる」とか。これもどうでしょう。これではある意味「あなたは完全な女性(または男性)ではない」と言われているようなものです。二等性別のように扱われることで当事者は傷つくことになります。

4.戸籍変更後に、変更前の性の生殖機能で子どもができる可能性

妊娠したFTMの人は生殖器をそのまま持っている訳ですから、当然男性に性別変更した人が出産したり女性に性別変更した人が妊娠させたりすることがありえます。つまり男性が母、女性が父ということがありうるということです。
実際、海外の事例で男性に性別変更した人が出産したという事例があり、ニュースにもなっています。
別に男性が母になってもいいのではないかという議論は確かにあるでしょう。が、こうなってくると男とは何か、女とは何かという定義というか哲学や宗教の扱う範囲になってしまいます。現状の法律や行政の体制はもちろんそれを前提としておらず、いろいろな制度で手直しが必要になってくるでしょう。
更に「家族観」も問題です。世の中には、保守系の方を主とする家族観に厳しい人が大きな勢力として存在しています。夫婦の選択的別姓が実現しないのも、代理母出産が実現しないのも極端に言えばこの人たちが反対しているからと言われています。特例法の「現に子がいないこと」要件の削除が実現しないのも「子どもの人権に配慮して」というよりはこうした人たちの家族観に反するというのが大きな要因と言えます。
そうした家族観からすれば、男性が母、女性が父となる要素は受け入れ難いと考えられます。私たちの存在は、そうした「家族観」を壊すものではあってはなりません。

5.要件の再検討が必要

現行の特例法から手術要件が無くなると、20歳(成人年齢が変更になれば18歳)以上、婚姻していないこと、現に未成年の子がいないこと、性同一性障害の診断を受けていることの4つが要件として残ることになります、果たしてこれでいいのかを考えなければなりません。
世界にはアルゼンチンのように、医師の診断書も必要なく申請だけで性別変更ができる国もありますが、日本もそこまで行くのでしょうか。
私たちは不十分と考えます。これだとホルモン療法も全くやっていない、身体の状態は完全に男性のまま、女性のままという人も対象になるからです。性同一性障害であるという確定診断は、身体の治療を始まる前に出ます。項目3に書いたように、権利を侵害されることになる側への配慮が必要ということを考えると、さすがに身体の状態が出生時の性別のままというのは厳しいと言わざるを得ませんし、社会適応できているとは言えません。髭もじゃの人を女性として扱うことに抵抗感があるのは当然でしょう。
とはいえ「性自認の性別で他者から見て違和感がないこと」のような基準は、客観性が無いため設けることは困難です。イギリスでは Gender Recognition Act 2004(性別承認法)において Been living permanently in their preferred gender role for at least 2 years(少なくとも2年間は望みの性別で日常生活を送ること)というように、性自認に従った性別での実生活体験重視の発想をしています。しかし、これもどうやって、誰が検証するのかという問題がでてきます。
基本的に法律は裁判官に判断を丸投げするような形ではなく、明確に判断できる基準を設けなければなりません。そのためには客観的な誰でもが評価できるような判断材料が必要となります。
それでは精神科医が判断するということではどうでしょうか?いや、これだと精神科医が完全に門番になってしまい、現在のガイドラインで唄われている当事者にサポ-ティブに接するということと反しますし、精神科医に人生の大問題を決める権限があるのかというのも疑問です。というわけで、手術を外すのであれば代わりにどのような基準を設けるのかについて、今後検討が必要でしょう。

6.性別の再変更の可能性の検討が必要

手術要件を撤廃すると、変更へのハードルはが大きく下がることになります。逆に言えば安易に性別変更を行う人が出てくるということです。現行の特例法では再変更は全く考慮されていませんが、手術要件を撤廃するとなると考えておかなければならなくなります。
もちろん自由に変更できて良いでは無いかという考えもあるでしょう。が、性別というものを、その時々の都合でそんなに変えて良いものなのか、私たちは疑問に思います。


7. 結論として

結論的に、現時点で手術要件を外すということについては議論が不足しており時期尚早と考えます。
少なくとも、当事者のニーズがどれくらいあるのか、実際に外した場合影響を受ける(特に女性)側の受け入れは可能なのかなどの調査が必要でしょう。また、上記項目5で書いたような要件をどうするのかという検討も必要です。
GID学会や日本精神神経学会には、まずはこうしたアカデミックなエビデンスを揃えていただくよう要望いたします。また、今後の性別変更の要件についても試案を提示すべきでしょう。
さらに、手術要件撤廃を訴えている人は、国に対してその要望を行う前に、世間に対して男性器がついていても女性、子どもが産めても男性なのだということについて、理解と支持をとりつけるべきでしょう。
以上より、私たちは「性同一性障害特例法からの現時点での性急な手術要件の撤廃には反対。撤廃するかどうかを含め、今後更なる意見収集や国民的議論が必要」と考えます。
これに基づき、今後国会議員や関係省庁にも議論をスタートするよう求めていきたいと思います。
私たちは、社会の一員です。当事者の主張がわがままになってはなりません。この問題は、みなさんで大いに議論をし、納得をした上で進めようではありませんか。

2019年2月 運営委員一同

https://gid.jp/opinion/opinion2019022001/
性同一性障害特例法の手術要件に関する意見表明

手術要件の撤廃には、更なる議論が必要

2019年2月20日



最高裁判所にあっては、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の「性別適合手術の要件」につき違憲判決を下さないよう求め、各政党にあっては、この要件を外す法案を提出しないように求めます。

提出先:最高裁判所戸倉三郎長官&各国政政党代表 担当者:女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会(性同一性障害特例法を守る会、女性スペースを守る会、平等社会実現の会、白百合の会、性別不合当事者の会、性暴力被害者の会、No!セルフID女性の人権と安全を求める会及び有志) ※担当者は提出先の機関内の担当者や関係者を想定しており、提出先を想定しています。本活動と直接関りがない前提でのご記載です。

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作成者:女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会

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署名終了 2023年10月23日(月)23時59分→10/24提出します
2023年10月25日が最高裁の判決日と決定しました。前々日23時59分までで締め切りとし、翌24日に第一次集約分とともに、まとめて全ての署名を提出します。


★ 第一次集約分
2023年9月25日23時59分に集約し、合計14,935 名の署名を、2023年9月26日に最高裁裁判官宛に提出いたしました。秘書官を通じて、速やかに各裁判官へ資料とともに配布されました。(署名計14,935 名のうち、オンライン署名14,652名、用紙署名283名)

特例法の手術要件について、
違憲と判断して効力を失わせたり
これを外す法改正をして、
「男性器ある女性」を出現させないで下さい!


 2023年9月27日、最高裁大法廷は、性別適合手術をしていない男性の「戸籍上の性別の変更」について弁論を開き、その上で「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の手術要件が憲法に違反するかどうかの判断をします。

 原告はこれを違憲だと主張し、その論者らは法的な性別を変えるのに手術をしなければならないのは酷だ、「断種手術だ」といいます。

 事案は、性同一性障害と診断されている男性で、高額の手術費や後遺症への不安から、精巣の摘出手術さえ受けていないということです。

―朝日新聞6月27日 https://www.asahi.com/articles/ASR6W3JM2R6RUTIL02Q.html


しかし、特例法は、身体違和が耐えがたい性同一性障害の人のうち、性別適合手術を終えた人が生きやすくするための法律です。法的性別を変更したいから手術をするのではなく、望んで受けた後に生活のために戸籍の性別も変えるのです。過去、知的障害者らにされた「断種手術」とはまったく違います。法的な性別を変更した当事者は、「手術要件があるからこそ社会から信頼される根拠になっている」と実感し、かつ公に主張しています。

 違憲の余地はありません。


 万一、特例法の手術要件が違憲と判断されると、男性器があるままの法的女性が現れます。性別が変わった後に「生物学的には父となる女性」「生物学的には母となる男性、出産する男性」もあることにもなります。

 法的女性となれば、女子トイレはもちろん女湯などあらゆる女性スペースに男性器のあるまま入れる権利があることになります。手術要件をなくしてしまった諸外国と同様に、社会的に大きな混乱が起きることは明白です。

 法を改正することは不適切です。


○ よって、最高裁判所にあっては、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の「性別適合手術の要件」につき違憲判決を下さないよう求め、各政党にあっては、この要件を外す法案を提出しないように求めます。


■ マンガですぐ分かる!
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『今、目の前に迫る危機』手術無しで性別を変えられる?



■ 漫画チラシをポスティングなどしてみようという方は、ぜひご連絡ください。

漫画チラシをお知り合い等に渡す、各戸にポスティングしていただく場合は、200枚単位で無料送付もいたします。ご協力いただける方は、送付先のご住所・お名前・希望枚数を

save@womens-space.jp(女性スペースを守る会)

へメールでお送りください。「漫画チラシの送付希望」というタイトルでお願いします。

※局留めも可能です。希望される方は郵便局の住所と名称、それにご自身の氏名をお知らせください。局留めの場合は受け取りの時に身分証明が必要ですので、本名でないと受け取れません。

※頂いた住所・氏名など個人情報の秘密は厳守致します。


■ 郵送での署名も受け付けております。

署名チラシのダウンロードはこちらのURLから。

https://gid-tokurei.jp/pdf/shomei.pdf



■ 連絡先

女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会

 【E-mail】 info@gid-tokurei.jp

 【FAX】 046-263-0375

 【WEB】 https://gid-tokurei.jp

 【郵送先】 〒242-0021 神奈川県大和市中央2-1-15-5階 大和法律事務所内


■ SNS

性同一性障害特例法を守る会
 https://gid-tokurei.jp
 https://note.com/gid_tokurei

女性スペースを守る会
 https://womens-space.jp/
 https://note.com/sws_jp

平等社会実現の会


白百合の会
 https://note.com/morinatsuko

性別不合当事者の会
 https://note.com/ts_a_tgism/

性暴力被害者の会
 https://reliefkids.wixsite.com/---------victim-surv
 komaken602@gmail.com

No!セルフID 女性の人権と安全を求める会
 https://no-self-id.jp/wrws/
 no.self.id.jp@gmail.com

https://voice.charity/events/534
最高裁判所にあっては、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の「性別適合手術の要件」につき違憲判決を下さないよう求め、各政党にあっては、この要件を外す法案を提出しないように求めます。


「男性器あるままの女性」 に反対します提出先:広島高等裁判所岡山支部 裁判官 、メディア各位 、(追加)岸田首相、法務省、厚生労働省、消費者庁、文部科学省、内閣府男女共同参画局、警察庁、内閣法制局




作成者:水田慧活動詳細
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活動詳細

※署名は、Voiceから届いたメールのリンクを承認して、完了します。メールアドレスは発起人には知らされません。メールをご確認のうえ、承認をお願いします!

1、署名の目的

「男性器あるままの女性」に、反対します。

10月25日最高裁大法廷の決定で、性同一性(障害)特例法の第4号規定が違憲と決定しました。

性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件(裁判所のサイト、判例結果のページに移動します)

第5号規定、外観要件は広島高等裁判所に差し戻しになりました。こちらも違憲となると、…

生まれが男性の身体男性の性別の取扱いは、その人が望む場合、「男性器あるままの女性」とみなされ法的に認められるようになるでしょう。

しかし多くの一般女性の声は聞かれていません。私たちは安全と人権を求めて声をあげます。

この署名とコメントとを一緒に届ける予定です。ご意見をどうぞお寄せください。



2、活動立ち上げの背景・理由

5年ほど前から、一般の女性たちは反対の声をあげてきました。しかし、その声が無視されてきています。名のあるフェミニストや学者は、これらの動きに賛同しているからです。ただ一部、千田有紀教授と牟田和恵教授、キャロライン・ノーマ教授、作家の笙野頼子さん、ジャーナリストの郡司真子さんたちは反対を表明したため、トランスヘイターとして糾弾されたり、不当に出版や講演会のキャンセル等をされています。

「半年ほどで外観要件は、違憲の判決がだされるはずだ」との予想もありました。時間がありません。

外観要件が違憲とされ「男性器ある女性」が認められたら、女性と子供たちは危険に晒される可能性が高くなります。考えや立場の違い、それらを越えて「男性器ある女性に反対する」とだけの署名運動が必要だと考えました。

3、 問題点は何か?

性別を変えることは基本的人権の問題だとされています。しかし、大法廷の決定で考慮されているのは性同一性(障害)の人の人権のみであり、一般女性の人権は無視され、消されようとしています。本来は女性のスペースの問題であり、女性の基本的人権が蔑ろにされようとしています。反対の声をあげる人は、トランスヘイター、TERFなどと糾弾されてきました。話す価値もなしと無視され続けています。話すことすら出来ない環境は、「言論の自由」が保障されていません。意見が違うならばなおのこと、議論されるべきではないでしょうか。議論もされず、言論統制のように黙らされる、全く不健康な社会になりつつあります。私たちは公正な議論を求めています。※この署名を立ち上げようとしていた12月3日、まさにこの言論の自由が脅かされるようなことが起きました。アビゲイル・シュライアー著「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇 」が翻訳・出版される予定だと知らせがあり、その後すぐ非難とキャンセルの動きが起き始めたのです。まだ日本で出版もされていない本なのに「この本はヘイト本!」と激しい調子で一部の人が言及しています。この動き、どう思われますか。

【追記】12月5日7:38 X(旧ツイッター)のKADOKAWA公式から「お詫びとお知らせ」があり、刊行中止になるとのこと。残念です。

【追記2】産経新聞出版から4/3に出版が決定。Amazonでは一位になる注目度。

4、活動内容の詳細


この問題はまだ多くの人に知られていません。この署名を通じて知ってもらい、判断していただきたいです。女性は、「男性器ある女性」と一緒に女湯に入ることができるのか。男性は、妻や母、娘が、「男性器ある女性」と一緒に女湯に入ってよいと思えるのか。女湯や女性トイレだけに限らず、女子スポーツ、女性の政治家を増やすためのパリテ法、クォータ制、医療の統計などにも混乱が生じます。不利益を被るのは圧倒的に女性です。女性専用の場所に「男性器あるままの女性」が入ってくる未来を、次の世代に渡してよいのかどうか。

この問題が詳しく知られていない、議論されていない事も大問題です。「性的マイノリティが好きなように生きる」というふんわりとした伝え方ではなく、現実を多くの国民に知らせなければなりません。しかし、メディアはトランスジェンダー擁護の立場からの記事しか出していません。メディアは速やかに現実を報道してください。

5、エールの使用法


広島裁判所に署名を渡しに行くための交通費、署名やコメントの印刷代、郵送代などに充てさせて頂きます。

↑上記のつもりでしたが、設定ミスでエール募集していませんでした。拡散エールのみです。もしカンパしても

いいよ!という方は、noteの方へよろしくお願いいたします。mizuのnoteはこちらです。訂正理由をnoteでも書くつもりです。

「広島裁判所に署名を渡しに行くための交通費、署名やコメントの印刷代、郵送代などに充てさせて頂きます。」※2024年1月31日 訂正します。こちらでの修正方法がわかったので覚悟を決めました。今までお金を渡していただくということにとても強い抵抗感がありましたが、印刷や、交通費にそこそこの金額はかかります。しがないシングルペアレントである自分には大きな金額です。でも、カンパをしていただくのは申し訳ないという気持ちがありました。しかし、日本ではカンパが集まりにくいとか協力しにくい空気があるのは、こう思う気持ちからだというのに気がつき、思い切ってエールをお願いする方向へ修正します。ご無理のない範囲でできる方がいらっしゃいましたら、ぜひお願いします。お気持ちに感謝し、大切に使わせて頂きます。



団体はありません。一般の個人の活動です。

■ SNS
twitter: @mizutaquu  @mizutayou1
みず 

「男性器あるままの女性」が、たとえ「みなし」でも実現してよいものかどうか。

1日診断などが横行する現在の状態では、当事者にも間違った身体にうまれて生きにくいという誤解をさせてしまいます。「男性器あるままの女性」を認めることが、本当に人権を守ることになるのでしょうか。当事者には早急な治療ではなく、時間をかけた後悔しない治療が必要ではないかと考えています。

女性と子供に安全な専用スペースが必要です。性犯罪が多くあり、届出も出来ない、裁判でも裁判官に女性が少なく正しい裁判が行われない現状では、被害を防ぐための予防策が大切です。女性専用の場所のセキュリティホールを大きくする違憲判決は支持できません。

手術をしない、「男性器あるままの女性」を法的に女性とみなすことに反対します。第5号規定、外観要件を合憲としてください。



※1月31日 訂正1 「提出先 岸田首相」追加。裁判所が署名を受け取ってもらえないという情報があり、首相はじめ各関係省庁へ追加提出をしたいと考えています。

※同1月31日 訂正2 エールの募集をしていませんでしたが、訂正方法が判明したのと考えを変えたので、エールを募集する設定に変えました。

https://voice.charity/events/644
「男性器あるままの女性」 に反対します




昨年、日本における女性と女児の権利はあいついで深刻な侵害を被りました。まず、国会内外での強い反対があったにもかかわらず、定義の曖昧な「ジェンダー・アイデンティティ」を保護対象とするLGBT理解増進法が6月に成立しました。最初の案よりは改善されましたが、それでもなお深刻な問題があることは、すでに私たちが指摘してきたところです。また、7月には、経産省トイレ訴訟において、未手術の男性職員に対する女子トイレの使用制限を違法とする最高裁の判決が下されました。さらに、10月25日には、性同一性障害特例法の生殖腺の除去要件(いわゆる4号要件)を違憲無効とする最高裁決定がなされ、多くの女性たちに衝撃を与えました。



 また、こうした法律や司法関係の動向だけでなく、市民社会においても、性自認を現実の性別よりも優先させようとする人々や団体による攻撃とキャンペーンが、言論・表現の自由や学問の自由に対して深刻な被害をもたらしました。根拠もなく「トランス差別者」とみなされた女性学者の講演会等がキャンセルされる事態があいつぎました(その一つについては、私たちも抗議を表明しています)。その最たるものは、世界的なベストセラーとなったアビゲイル・シュライアーさんの『Irreversible Damage』という著作(邦題は『あの子もトランスジェンダーになった――SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』)が出版直前に出版中止になったことでした。同書は、大手出版社のKADOKAWAから今年1月に出版される予定になっており、ネットでも宣伝され、多くの予約がすでに入っていたにもかかわらず、この著作を「悪質なトランス差別」だと一方的に見なした人々による抗議行動にKADOKAWA側が易々と屈服し、出版の中止を一方的に決定したのです。これは、戦後日本の出版史における前代未聞のスキャンダルでした(Wikipediaにはすでにこの事件に関するページが作られています)。



 しかしその一方で、前進と言える動きも見られました。まず、理解増進法案の制定過程をめぐって、かなり広範な反対世論が喚起され、そのおかげで、最終的に可決された法案は当初案よりもかなり改善されたものになったことです。とくに、同法の第12条「留意事項」がつけ加えられ、「この法律に定める措置の実施等にあたっては……全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」との文言が入れられたことは、市井の女性たちやLGBT当事者からの反対の声がけっして無駄ではなかったことを示しています。また、理解増進法の成立に伴って、自民党議員を中心に、「全ての女性の安心・安全と女性スポーツの公平等を守る議員連盟」が成立し、そこに100名以上の国会議員および地方議員が参加しました。私たちはこの議員連盟の発足にあたってさっそく歓迎の立場を示すとともに、協力関係を構築してきました。今後とも緊密に協力して、女性の安心・安全を守っていく所存です。



 上記の前向きな動きがあったとはいえ、全体としての状況は依然としてまったく予断を許さないものです。自治体レベルでは着々と、無条件に性自認を保護対象とする条例を制定する動きが進んでいます。そして何よりも、昨年10月25日の最高裁決定において、特例法の外観要件(いわゆる5号要件)に関する憲法判断が広島高裁に差し戻されたことを受けて、この広島高裁において、外観要件さえも違憲無効の決定が下されかねない状況にあることです。もしそんなことになれば、男性器を備えたままの「法的女性」が誕生することになり、法律による「別段の定め」がないかぎり、女性スペースに自由に入れるようになってしまう、あるいはその可能性が著しく増すことになるでしょう。それは、女性と女児の性的安全と尊厳、プライバシーを根本的に損なうものであり、女性と女児に対する性暴力に他なりません。このような事態を阻止するべく、性同一性障害特例法そのものに対する賛否を超えて、できるだけ多くの人が協力して、外観要件撤廃に断固反対する姿勢を見せる必要があると私たちは考えます。



 私たちは昨年11月と12月に、女性と女児の権利と安全を守るために、特例法の独自の改正案女性スペースに関する新たな法律案をそれぞれ提案しました。これらの問題についてはすでに、「女性スペースを守る会」など6団体が共同の法案を提案しています。私たちは、6団体が率先して法案を提案されたことに敬意を表するとともに、女性の安全・安心の観点から見て十分ではないと考えたので、私たちの会独自の案を提起させていただきました。特例法改正に関しては、最高裁決定で違憲とされた条項を取り除くだけでなく、診断の厳格化などを新たに盛り込みました。女性スペースに関しては、男女の生物学的区別をきちんと原則として位置づけたうえで、女性スペースの法的整備と安全確保の条項を細かく定めました。私たちは自分たちの独自案を絶対視するものではないので、広範な市民のみなさまと国会議員のみなさまによって真摯に検討していただき、最良の選択をしていただければと思います。



 最後になりましたが、私たちは今年も、性自認を現実の性別に優先させる方向に向けたあらゆる動きに強く反対するとともに、女性と女児の安心と安全、尊厳と人権を守るべく全力を尽くす所存です。そして、改めて性同一性障害特例法の手術要件の撤廃ないしいかなる緩和にも反対するとともに、特例法を厳格化し、女性スペースを守るための新法の制定を訴えていきたいと思います。

2024年1月27日
No!セルフID 女性の人権と安全を求める会
代表 石上卯乃

https://no-self-id.com/2024/01/27/2024newyears_statement/
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日本の動き
新年に際し、改めて手術要件撤廃に反対し、女性スペースを守る新法の制定を訴えます



10月25日の大法廷での決定を受けて、GID特例法は改正されることになります。
 これを受けて、当会からも下記の通り、独自に法律改正案を、「女性を守る議連」や主要政党に提案いたしました。
 今後の特例法には、厳格化が必要であると考えたからです。
 また、現行GID特例法第5要件(外観要件)の合憲性が広島高裁で判定されるのですが、私たちは、この要件について一歩も退くべきではないと、いま改めて主張すべきと考えたからです。
 法の下の平等という観点からも、今後改正される新たなGID特例法が、女性が生きる上での脅威となってしまうことは、絶対にあってはならないことです。
 なお、この提案は最終的なものではありません。今後の状況の変化やさまざまな意見を受けとめ、より良く、より妥当で、より実現可能性のあるものにしていきたいと考えています。
 





性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律案



性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成十五年法律第百十一号)の一部をそれぞれ次のように改正する。


 「第一条 この法律は、性同一性障害者に関する法令上の性別の取扱いの特例について定めるものとする。」を以下のように改正する(下線部が改正個所)。

第一条 この法律は、基本的に生物学的性別に基づいて成立している法秩序および社会秩序を著しく乱さない程度および範囲において、また全ての国民が安心して生活することができることを当然の前提として、性同一性障害者に関する法令上の性別の取扱いの特例について定めるものとする。


 「第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。」を以下のように改正する(下線部が改正個所)。

第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己の生物学的性別に特有の身体的特徴に対する強い違和を持続的に感じ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき、少なくとも一年以上にわたる継続的な診察を通じてその診断が一致しているものをいう。ここで言う「継続的な診察」とは、少なくとも月1回以上の診察をいう。


 「第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
……
 四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
 五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。」を以下のように改正する(下線部が改正部分)

第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
……
 四 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
 五 現に犯罪歴がなく、また刑法及びその他の犯罪の逮捕状の対象でないこと、又は逮捕後の拘留中でないこと、又はそれに係る裁判の被告人でないこと。


 同法の第五条として、以下を追加する。

(性別取扱いの変更の取消し)

第五条 性別の取扱いの変更の審判を受けた者が、暴力犯罪又は性犯罪等の重大な犯罪行為を犯して三年以上の実刑判決が確定した場合、法務省は、性別の取扱いの変更の取消しを家庭裁判所に求めることができ、家庭裁判所は性別の取扱いの変更を取り消すことができる。

 二 性別の取扱いの変更の審判を受けた者が、性別の取扱いの変更の取消しを法務省に申請し、かつその申請に十分合理的な理由がある場合、法務省は、性別の取扱いの変更の取消しを家庭裁判所に対して求めることができる。

 三 前項の一及び二の規定は、法律に別段の定めがある場合を除き、性別の取扱いの変更取消しの審判前に生じた身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない。

 四 家庭裁判所の審判によって性別の取扱いの変更が取り消されて、元の性別に取扱いが戻った場合、再度の性別の取扱いの変更を申し立てることはできないものとする。


 (施行期日)

 この法律は、公布の日より施行する。




説明

総論

 2023年10月25日の最高裁判所大法廷において、現行特例法の第三条第四号(生殖腺の切除を規定したいわゆる四号要件)が身体に対する侵襲性が著しく、憲法第一三条に反するとの理由で違憲の決定が下され、同条第五号(性器の外観を他の性別に近似させたものにするといういわゆる五号要件)については広島高裁に差し戻した。それと同時に、裁判長は同決定の補足意見として、同法に別の要件を加えることを是としている。以上に鑑み、身体に対する侵襲性とは別の要件を加える法改正を行なうことは、今回の最高裁大法廷の決定に沿ったものであると言える。他方で、この法律をめぐっては、女性や子供の人権と安全を危惧する立場から、さまざまな疑問や不信が多数表明されており、現状のままでこの法律を維持することはとうてい不可能になっている。そこで、ごく一部の小手先の改正をするのではなく、憲法の理念と、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」の第12条で定められた「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意する」に基づいて、抜本的な改定が必要である。



第一条の改正について

 すでに新聞などの報道で、「心は女性」と称する身体男性が女子トイレや女性用の浴場に入るという事態が頻発しており、女性や子供をはじめとする国民の安心・安全を脅かしている。このような事態は、この法律の制定時には想定されなかったものであり、この法律の正当性そのものを脅かすものである。この法律は、性同一性障害者が自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させていることを前提に、その人々が社会生活をスムーズに送るためのものであるが、それはあくまでも特例であって、基本的に生物学的性別にもとづいている法的・社会的秩序を乱さない範囲で認められているにすぎないのであり、すべての国民の安心・安全をいささかでも脅かすものであってはならないという基本理念を、最初の条項で明文上確認しておく必要がある。


第二条の改正について

 この法律は本来、性同一性障害という特殊な疾患を有している者のみを対象にし、その救済を目的としたものであって、単に性別を変えたい人や、別の性別で生活したい人のためのものではない。先に述べた報道などで問題になっている事例の多くは、実際には性同一性障害ではないにもかかわらず、性同一性障害の診断書を安易に得ている者によって行われていると推測することができる。そこで、既存の規定に加えて、性同一性障害者として「自己の生物学的性別に特有の身体的特徴に対する強い違和を持続的に感じ、」の一節を入れるというように基準をより厳格なものにした。また、現代の医学的知見においては、うつ病や自閉症、その他の精神疾患や発達障害等によって性別違和が生じうることが明らかになっているにもかかわらず、現在、15分から20分程度の簡単な診察で性同一性障害の診断書を発行する無責任なクリニックも少なからず存在している。こうした状況を踏まえて、少なくとも一年以上にわたる継続的な診察が必要であるとの文言を追加している。これは、この法律の立法目的を満たし、医療上の不備をなくすという点で必要かつ最小限の改正であると思われる。


第三条の改正について

 先の最高裁大法廷は、第三条第四号を身体に対する侵襲性が著しく、憲法一三条に反するとの判断を下したので、第四号を削除することはやむをえない改正である。しかしながら、それと同時に、大法廷の裁判長は補足意見において、侵襲性とは別の要件を加えることを是認している。以上の点を鑑みて、現行特例法の第四号を削除して、現行特例法の第五号をそのまま第四号にするとともに、新たに第五号として、「五 現に犯罪歴がなく、また刑法及びその他の犯罪の逮捕状の対象でないこと、又は逮捕後の拘留中でないこと、又はそれに係る裁判の被告人でないこと」という要件を付け加えることにした。

 まず、現行特例法の第五号を第四号として残したのは、女性と女児の安心・安全や公序良俗の維持のためには引き続き必要不可欠な要件であるからである。またそれは、外性器に関わるので、内性器の切除に関わる第四号と比べて、侵襲性は相対的に低いというべきである。また、すでに述べたように、この法律は、強い身体違和を持ち、「自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者」を対象とするものであるから、陰茎という典型的な男性器を保持しても身体違和を感じない者は、そもそも、性同一性障害者を救済対象としたこの法律の対象ではないというべきである。さらに、現行特例法の第四号と第五号の両方を削除した場合、未成年の子がいない者は、医師の診断書さえ取得できれば、身体に何の変更も加えることなく法的取扱いを他の性別に変えうることになり、基本的に生物学的性別に基づいている法秩序と社会秩序を著しく乱すことになるだろう。

 新たに第五号を入れたのは、犯罪歴のある者が、その過去を隠蔽するために安易に性別変更できることになれば、国民の安心・安全が確保できないことは自明なためである。また、現に何らかの犯罪で逮捕状の対象であったり、拘留中であったり、裁判中であったりしても、国民の安心・安全を守れないことは明らかである。諸外国の例を見ても、犯罪者が自己の犯罪歴を隠すために性別変更を申し立てる事例が見られる。とくに、手術要件が廃止された諸外国では、性犯罪者が実刑での有罪確定後に、女子刑務所に移送される目的で、自分の心は女性だと言い出す場合も多い。そして、そうした人物が男性機能を保持したまま女子刑務所に移送されて、女子刑務所で強姦ないし性暴力を起こした事例も多数存在する。そうした可能性を未然に防ぐためにも、この新たな規定は必要不可欠である。


第五条について

 この法律は、性別の取扱いを他の性別に変える規定は存在するが、その変更を取消して、性別の取扱いを元の性別に戻す規定が存在せず、この点は同法の重大な欠陥であると考えられる。そこで、第五条を新たに創設し、次の2つの場合に、法務省が家庭裁判所に対して性別の取扱いの変更の取消しを求めることができることとした。第五条第一項として、性別の取扱いの変更の審判を受けた者(以下、当人)が、何らかの重大な犯罪行為を犯して三年以上の実刑判決が確定した場合、第五条第二項として、当人自身が性別の取扱い変更の取消しを法務省に申請し、その申請に十分に合理的理由がある場合。
 
 第五条第一項について もし当人が裁判で有罪の実刑判決を受けた場合、現行法の下では、生物学的性別にもとづいた刑務所に入るのではなく、他の性別の刑務所に入ることになる。たとえば、実刑になるような重大な犯罪を犯した生物学的男性が女子刑務所に入ることになったら、他の女性受刑者の安心と安全を著しく脅かすことになるのは明白である。四号要件だけでなく、もし現行法の五号要件も違憲となったら、男性器を完全に保持したままで、法的取扱いが「女性」になれる男性が発生する。そのような人物が女子刑務所に収監されることを目的として凶悪犯罪をあえて犯す可能性は否定できない。そうした可能性を未然に防ぐためには、実刑を課せられるような重大な犯罪を犯した場合には、性別の取扱いの変更が取り消されるという規定を設ける必要がある。また逆に、現行法の四号要件が違憲となっている現在、女性としての生殖機能を残したまま性別の取扱いを男性に変更することができるが、そうした者が何か重大な犯罪を犯して実刑となり、男子刑務所に収監された場合、今度は、その当人の安心と安全が著しく脅かされるのは明白である。

 以上の点に鑑み、重大な犯罪を犯して、実刑判決が確定した者については、性別の取扱いの変更の取消しを求めることができるようにすることが必要である。だが、実刑判決であれば無条件に性別の取扱いの変更を取り消すというのも極端であるから、重大犯罪かどうかの一つの基準である三年以上の実刑判決が確定した場合に、性別の取扱いの変更の取消しを求めることができるとした。法務省は、性別の取扱いの変更を済ませた者が三年以上の実刑の有罪判決を受けた場合、すみやかに、性別取扱い変更の取消しを家庭裁判所に申し立てる必要がある。三年未満であっても、犯罪者が他の性別の刑務所に収監される場合にはさまざまな問題が想定されるので、これは別途、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)」を改正することで対処する必要がある。

 第五条第二項について 第一項は、当人の意志に関わらず行なうことのできる取消しだが、当人自身が性別の取扱いの変更の審判を受けた後で、そのことを深く後悔し、元の性別に戻りたいと思うかもしれないし、実際にそういう事例は少なからず存在する(外国ではいっそう多い)。とくに、すでに四号要件が違憲となって、すでに戸籍上の性別変更がより容易になっており、さらに現行法の五号要件まで違憲となれば、いっそう戸籍上の性別変更が容易になる。その場合、安易に性別変更の申し立てをして、性別変更を実現したものの、そのことを後悔する事例はいっそう多くなるだろうし、診断の誤りが後になってわかることもあるだろう。とくに身体的に元の性別の生殖機能や性器を残している場合、年齢を重ねることで子宮や卵巣などがガンやその他の病気になる可能性も十分予想される。そうした場合に備えて、元の性別に戻す可能性を保障するべきである。したがって、元の性別に戻す理由が十分に合理的であるかどうかを精査したうえで、法務省が性別取扱いの変更の取消しを求めることができることとした。当人ではなく、あくまでも法務省が変更取消しを求めるとしたのは、安易に、あるいは犯罪歴の隠蔽のために元の性別に戻すことを防ぐためである。

 第五条第三項について これは、性別取扱いの変更の審判に際して同様の規定があるので、変更を取り消した場合も同様の規定を設けたものである。

 第五条第四項について いったん、法的な取扱いを元の性別に戻した場合は、再度、他の性別への変更を申し立てることはできないとした。安易かつ恣意的な性別の取扱い変更ができないようにするためである。




2023年11月20日
No!セルフID 女性の人権と安全を求める会代表
石上卯乃

https://no-self-id.com/2023/11/24/gidbill/
【当会独自案】GID 特例法改正案(23年11月20日付)2023年11月24日
日本の動き
GID特例法, セルフID



当会は、女性専用施設・区画(=女性スペース)を守るための法案を作成し、「女性を守る議連」および各国政政党に送付いたしました。

今後、「特例法第3条第1項の「四」(=生殖不能要件)および「五」(=外観要件)」が廃棄された場合であっても、女性スペースをこれまでと同じ法的条件で守ることができるように、と考えて作成いたしました。



女性専用施設・区画等の設置推進と安全確保に関する法律案





(法の目的)

第一条 この法律は、トイレ、更衣室・脱衣所、浴場など、通常社会生活において隠されている身体部分の一部ないし全部が露出される場所において、女性専用施設・区画等の設置を推進し、その安全を確保し、もって女性と女児の人権と尊厳を守ることを目的として定める。




(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ各号に定めるところによる。

一 「女性専用施設・区画等」及び「男性専用施設・区画等」とは、トイレ、更衣室・脱衣所、浴場など、通常社会生活において隠されている身体部分の一部ないし全部が露出される場所において、それぞれ「女性用」及び「男性用」と明示された建物、区画又は施設等をいう。

二 「共用施設・区画等」とは、トイレ、更衣室・脱衣所、浴場など、通常社会生活において隠されている身体部分の一部ないし全部が露出される場所において、男女区別なく誰でも利用できる建物、区画又は施設等をいう。

 「第三の施設・区画等」とは、トイレ、更衣室・脱衣所、浴場など、通常社会生活において隠されている身体部分の一部ないし全部が露出される場所において、前項一、二のいずれにもあてはまらない建物、区画又は施設等をいう。




(男女別の施設・区画等における区分の原則)

第三条 第六条及び第七条で提示された例外を除いて、女性専用施設・区画等と男性専用施設・区画等を分ける場合、その区分は男女の生物学的性別による。




(女性専用トイレの設置義務及び努力義務)

第四条 国、地方公共団体及び公益法人は、政令で定める多数の者が使用するトイレを設ける場合は、他のトイレと明確に区分された女性専用トイレを設けなければならない。

 一で定めた者以外で、同時に就業する労働者の数が常時十人を超える事務所において、事業主又は施設・区画等の管理責任者は、政令で定める多数の者が使用するトイレを設ける場合、他のトイレと明確に区分された女性専用トイレを設けなければならない。

三 一で定めた者以外で、同時に就業する労働者の数が常時十人以下の事務所において、事業主又は施設・区画等の管理責任者は、政令で定める多数の者が使用するトイレを設ける場合は、他のトイレと明確に区分された女性専用トイレを設ける努力をしなければならない。




(その他の女性専用施設・区画等の設置義務及び努力義務)

第五条 政令で定める多数の者が使用する更衣室・脱衣所、浴場等を設ける場合は、他の更衣室・脱衣所、浴場等と明確に分離された女性専用の更衣室・脱衣所、浴場等を設けなければならない。

 建物の大きさや構造、敷地面積の不足その他のやむをえない理由により女性専用の更衣室・脱衣所、浴場等を設けることができない場合は、時間帯による区分を行なうなど、すべての利用者の安全と安心を確保する努力を行なわなければならない。




(女性専用トイレへの女性以外の者の立ち入り禁止)

第六条 第四条で定めた女性専用トイレには、緊急事態の場合、又は清掃・点検・修理など管理上の必要性等の合理的な理由がある場合を除き、政令で定める年齢以上で生物学的女性以外の者は、原則として立ち入り又は利用することはできない。

 女性専用トイレの管理責任者は、生物学的女性のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づいて性別の取扱いを「男性」に変更した者については、女性専用トイレへの立ち入り又は利用を禁じることができる。

三 女性専用トイレの管理責任者は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づき性別の取扱いが「女性」に変更された者のうち、その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている者については、女性専用トイレへの立ち入り又は利用を許可することができる。

四 女性専用トイレの管理責任者は、生物学的男性のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づき性別の取扱いが「女性」に変更された者のうち、三で定められた場合に該当しない者が、男性専用トイレを利用することが心理的又はその他の事情により著しく困難である場合、共用トイレ又は第三のトイレを設けて、その者の立ち入り又は利用を求めることができる。

 女性専用トイレの管理責任者は、生物学的男性のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づき性別の取扱いが「女性」に変更された者のうち、三で定められた場合に該当しない者が、男性専用トイレを利用することが心理的又はその他の事情により著しく困難であり、かつ、建物・区画又は施設内に共用トイレ又は第三のトイレが設けるのが困難である場合、男性専用トイレの一部または全部を共用トイレ又は第三のトイレに変更し、その者の立ち入り又は利用を求めることができる。

 女性専用トイレの管理責任者は、生物学的男性のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づき性別の取扱いが「女性」に変更された者のうち、三で定められた場合に該当しない者が、男性専用トイレを利用することが心理的又はその他の事情により著しく困難であり、かつ、建物・区画又は施設内に共用トイレ又は第三のトイレが設けるのが困難であり、かつ、男性専用トイレの一部または全部を共用トイレ又は第三のトイレに変更することが困難である場合、女性専用トイレの一部を、女性専用トイレの他の部分と視認可能な形で区分し標識で明示した上で第三のトイレに変更し、その者の立ち入り又は利用を求めることができる。




(その他の女性専用施設又は区画への女性以外の立ち入り禁止)

第七条 第五条で定めた女性専用施設又は区画には、緊急事態の場合、又は清掃・点検・修理など管理上の必要性等の合理的な理由がある場合を除き、政令で定める年齢以上で生物学的女性以外の者は、原則として立ち入り又は利用することはできない。

 第五条で定めたその他の女性専用施設又は区画の管理責任者は、生物学的女性のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づいて性別の取扱いを「男性」に変更した者の立ち入り又は利用を禁じることができる。

三 第五条で定めたその他の女性専用施設又は区画の管理責任者は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づき性別の取扱いを「女性」に変更した者のうち、生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあり、かつ、その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えている者については、女性専用施設・区画等への立ち入り又は利用を許可することができる。

四 第五条で定めたその他の女性専用施設又は区画の管理責任者は、生物学的男性のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づき性別の取扱いを「女性」に変更した者のうち、上記三で定められた場合に該当しない者が、男性専用施設・区画等を利用することが心理的又はその他の事情により困難である場合、共用施設・区画等又は第三の施設・区画等を設けて、その者の立ち入り又は利用を求めることができる。

 第五条で定めたその他の女性専用施設又は区画の管理責任者は、生物学的男性のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づき性別の取扱いを「女性」に変更した者のうち、三で定められた場合に該当しない者が、男性専用施設・区画等を利用することが心理的又はその他の事情により困難であり、かつ、建物・区画又は施設内に共用施設・区画等又は第三の施設・区画等を設けるのが困難である場合、男性専用施設・区画等の一部又は全部を共用施設・区画等又は第三の施設・区画等に変更し、その者の立ち入り又は利用を求めることができる。




(罰則)

第八条 第六条の一及び三、及び第七条の一及び三で定められた場合を除き、生物学的男性が女性専用施設・区画等に立ち入り、又は退去の要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 第六条の二にもとづいて、施設管理者が、生物学的女性のうち性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の第三条に基づいて性別の取扱いを「男性」に変更した者の立ち入り又は利用を禁じている場合、その者が女性専用施設・区画等に立ち入り、又は退去の要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。




附 則

(施行期日)

一 この法律は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成十五年法律第百十一号)の改正法(令和*年法律第***号)の施行の日から施行する。

 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な措置は、政令で定める。

説明


総論

 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、特例法)における性別取扱いの変更要件が緩和されることによって、国民の間で、とりわけ生物学的にも社会的にも脆弱な立場にある女性の間で、不安が高まっている。そもそも、排せつや着替えや入浴など、通常社会生活において隠されている身体部分の一部ないし全部が露出する場所において、女性専用スペース(この法律では「女性専用施設・区画等」と表現)が保障されることは、根本的に女性の尊厳と生存権に関わる。そうした場所に男性がいること自体が、多くの女性の尊厳と人権を侵害しうる。

 また、性犯罪の99%が男性によってなされており、その被害者の9割以上は女性と女児であるという状況の中で、女性専用スペースは女性にとって唯一安心できる空間でもある。男性に付きまとわれた場合でも、女子トイレに入ることで難を逃れたという女性も少なくない。女性専用スペースなしには、女性と女児は安心して生活することはできない。それは女性たちの長年にわたる努力によって獲得された貴重な権利であって、簡単にないがしろにできるものではない。しかるに、これまで、女性専用スペースを明文で保障した全国的立法が存在せず、通知や管理規則等のレベルにとどまっていた。したがって、独自の全国的立法を通じてこの専用スペースを保障することは、喫緊の課題となっている。

 以下に述べる説明から明らかなように、この法律は、現行の特例法のもとでなされている女性専用スペースの事実上の運用状況、すなわち、生物学的女性から、現行特例法の三条に基づいて「男性」に戸籍変更した者を除外し、現行特例法の三条に基づいて「女性」に戸籍変更した者を加えた人々が、女性専用スペースを利用している状況を、管理者の裁量権の範囲を法律で定めることを通じて、維持するものである。いわゆるLGBT理解増進法の成立を受けて、2023年6月23日に、厚労省生活衛生課長名で出された通知は、公衆浴場の男女の区別を「身体的特徴」でもって行うよう助言しているが、これも基本的に現行特例法第三条の四号(以下、四号要件)と五号(以下、五号要件)の両方を満たした人、あるいは少なくとも五号要件を満たした人を念頭に置いているものと考えることができるので、この点からも既存の方針・政策との齟齬はないであろう。厚労省の通知ではあまりにも公的ルールとして弱いので、全国的立法という形で規制のルールを法的に明示化する必要がある。したがって、本法案は、現行特例法の手術要件(四号要件と五号要件)がたとえ撤廃されても、それに自動的に連動して女性専用スペースの運用基準が変更されることのないよう、現行特例法の基準での女性専用スペースの利用条件を維持するものである。

 なお、この法律案で「女性専用スペース」と表現していないのは、日本の法律ではできるだけ外来語を避けるという慣習にもとづいている。ただし「トイレ」という表記に関しては、十分に日本語として定着しているので、「トイレ」という表記を使用する。



第一条について

 この法律の目的を定めている条項であり、法律の趣旨を明確にしている。この条項の中には、「性犯罪」云々の文章は入っていないが、それは法律の文言として曖昧で不適切であるというだけでなく、そもそも、性犯罪の恐れだけが女性専用スペースを作る理由ではないからである。したがって、法の目的を性犯罪の防止であると狭く解釈させるような記述は避けた。そうすることで、女性を自認するものが女性専用スペースにおいて暴行や盗撮などの何らかの性犯罪を犯さないかぎり、利用可能であるという理屈が成立する余地を排除した。



第二条について

 この法律で使用される文言の定義を定めた条項である。ここではあえて「女性」そのものを定義していない。男女の区別は基本的に生物学的なものであり、そのことはあえて法律で書くまでもなく当然のことであって、性同一性障害特例法もそのことに基づいて、法律における性別の取扱いに関して特例を設けているにすぎない。そうした状況の下で、あえて「女性」を、生物学的女性以外の者を含んだうえで定義しなおすことは、「女性」という概念がそれ自体としては生物学的なものではないとする解釈が成り立ちかねない。そうした解釈の余地を残さぬよう、生物学的性別とは別の法的定義をあえて入れないことにした。

 「第三のトイレ」は、今日、「多機能トイレ」などの名称で設置されているトイレを念頭に置いており、基本的に個室型で、さまざまな事情(障害や高齢など)から通常の男女別トイレ又は共用トイレを使用できない人を対象にしたトイレのことである。



第三条について

 ここでは、男女別の施設・区画等の利用基準は、生物学的性別に基づくという原則が宣せられている。これを入れたのは、あくまでも、男女別スペースの利用基準は生物学的性別に基づいているという原則を維持・確認するためである。性自認を生物学的性別に優先させる政策が支配的になっている多くの国では、この原則が否定され、事実上、「男女」は性自認に基づくものとされているので、男女別の施設の運用基準もそれに準じるものとなってしまっている(イギリスとアメリカの一部の州では生物学的性別を重視する政策に立ち戻る歓迎すべき動きが出てきているが)。また、ここでは原則を維持・確認すると同時に、第六条と第七条に定められた例外を認めることで、純粋に生物学的区分での運用ではないという形にしている。原則と例外との関係を堅持しているわけである。



第四条について

 トイレに関して、女性専用スペースの設置を一般に義務づける条項である。トイレとそれ以外とを分けたのは、トイレは基本的にすべての事業所や公共空間において必要であるのに対し、浴場や更衣室・脱衣所は必ずしもそうではないこと、および、基本的に個室で利用がなされる女子トイレと、不特定多数が同時に利用し、かつ裸かそれに近い姿になる浴場や更衣室・脱衣所では、設置及び利用の諸条件が当然にも異なるからである。

 第一項では、政府、自治体、公益法人の、女性専用トイレの設置義務をうたい、第二項と第三項では一般事業所を対象にしている。第二項と第三項は事業所の規模で分けている。これに関しては、厚生労働省が2021年に「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」において、事務所則第17条第1項を改訂し、「同時に就業する労働者が常時十人以内である場合は、現行で求めている、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとする」としていることを踏まえて、十人を超える場合と十人以下の場合とに分けている。十人を超える場合は、女性専用のトイレ等を設置することを義務とし、十人以下の場合は努力義務としている。



第五条について

 トイレ以外の女性専用スペースの設置義務を定めている。第二項は、古くて小規模な旅館や民宿を想定して、「建物の大きさや構造、敷地面積の不足その他のやむをえない理由により女性専用の建物、区画又は施設を設けることができない場合」を想定して、例外を設けている。



第六条・第七条について

 ここでは、女性専用施設又は区域等については「原則として」、「生物学的女性以外の者は立ち入り又は利用することはできない」としている。しかし、これはあくまでも原則であり、第六条および第七条のそれぞれ第二項以下でいくつかの例外を設けている。ここで注意すべきは、この例外規定は、あくまでも施設管理者の裁量として是認していることである。つまり、実際に生物学的女性以外の者(その範囲はこの法律によって定められている)が立ち入り又は利用することができるかどうかの判断は管理者に委ねている。しかし、完全に管理者任せにするのではなく、管理者の判断とその裁量範囲に法的根拠を定めることで、管理者が不必要な訴訟リスクを負わないで済むようにした。こういう形にしたのは、あくまでも女性専用スペースを使う権利があるのは生物学的女性だけであるという原則を守るためであり、その上で、管理者の裁量の範囲でそれ以外の者も利用できるとし、その裁量の範囲を法律で定める形にしている。

 第六条の第二項及び第七条の第二項では、特例法を通じて性別の取扱いを「男性」に変えた者の女性専用スペースの立ち入り又は利用を禁じることができるとしている。純粋に生物学的女性だけでのスペース利用を法的ルールとすると、乳房もなくひげを生やした「トランス男性」が女性専用スペースを利用することになり、やはり女性に不安と混乱を与えかねないからである。

 第六条の第三項と第七条の第三項では、生物学的男性である「トランス女性」のどの範囲を例外として女性スペースの利用可能な対象に含めうるかという、最も慎重を期すべき問題を扱っている。まず、トイレに関しては、現行特例法の第三条第一項の五号要件(外観要件)をそのまま採用することで、例外の裁量範囲を定めている。これは管理者の裁量として、五号要件を満たした人の利用を許可できるという形態を取っているので、たとえ管理責任者側がそうした人の利用を許可しなくても違法ではない。すでに共用トイレや第三のトイレがある場合には、そういう人に対しても最初からそれらのトイレの利用を求めることは、法文上可能になっている。法の定義上、生物学的女性以外の者を法的「女性」に入れてしまった場合、このような柔軟な対処ができなくなってしまう。また、五号要件を満たしていない生物学的男性は、精巣もペニスも保持しているのだから、外性器の機能上、女子トイレを利用する特段の理由がないのであり、したがって、男性用のトイレを使うか、あるいは共用トイレないし第三のトイレを使うことが適切であろう。

 次に、トイレ以外の女性専用施設又は区画等に関しては、全裸になる、あるいはそれに近い状態になることが必要になるので、ここでの例外としての管理者の裁量範囲を、トイレの場合より狭くし、現行特例法の四号要件と五号要件の法文をそのまま再現し、両方を満たしている者に限定している。そうすることで、女性スペースに関しては、現行特例法のもとで運用されている状況と、事実上同じ状況が維持されることになるだろう。トイレ以外の女性スペース利用の例外規定の中に両要件を再現しておけば、たとえ、現行法第三条第一項の四号要件のみならず、五号要件も違憲にされたとしても、この両規定は、女性専用スペースに入れる生物学的女性以外の人々に対する制限要件として今後とも機能しうる。

 トイレの場合と同じく、ここでも管理者の裁量として、四号要件と五号要件を満たした人に対して女性専用スペースの利用を許可できるとしているのであって、たとえ許可しなくても違法にはならない。

 以上の規定に対しては、四号要件がすでに違憲判定され、五号要件についても、差し戻された広島高裁で違憲判定になる可能性があるから不適切であるとの異論が起こりうるだろう。しかし、特例法における「性別の取扱いの変更」といっても、それはあくまでも、「法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす」だけであって、無条件に他の性別に変わったものとみなすものではない。「法律に別段の定め」があるなら、特例法で「他の性別に変わったものとみなされ」ても、法律で定められた特定の場面においては、「他の性別に変わったものとみなす」必要はない。

 実際、10月25日の最高裁大法廷の決定が現行特例法の第三条第四号を違憲とみなしたのは、あくまでも特例法における性別取扱い変更の審判申し立ての要件としてであって、女性専用スペースを利用する要件に関してではない。実際、最高裁大法廷における反対意見においても、公衆浴場などにおいては、別異の取扱いをすること自体は否定されていないし、特例法の要件緩和を求めているすべての野党も、女性専用スペースにおいて別異の取扱いをすることは否定していないのだから、本法案の第六条と第七条で現行特例法第三条の第四号と第五号を援用することは否定されないはずである。また、当時、国会の全会一致で制定された現行特例法の規定を生かすことは、立法権の保護という観点からも正当であると言える。

 また、最高裁大法廷の10.25決定が指摘した、四号要件における身体への侵襲性はとりわけ生物学的女性の場合にとって深刻なのであり(子宮と卵巣の切除が必要)、男性の場合は睾丸という外性器の切除を意味するにすぎず、身体への侵襲性は弱い。逆に、睾丸を残せば、五号の外観要件にも反することになる。したがって、本法案の第七条第三項で、現行特例法の四号要件と五号要件の両方を満たすことを利用条件にしたことで、陰茎のある男性だけでなく、陰茎がなくても睾丸のある生物学的男性がトイレ以外の女性専用スペースに入ることは許されないという立場を示すことになる。

 これでも、性別とは生物学的性別のことであるという原則的立場(われわれもその立場だ)からすれば、原則からの重大な後退に見えるだろうが、現在の政治と司法の状況からするとやむをえないと思われる。実際、純粋に生物学的性別での利用ルールを法的に徹底した場合、次のような事態が考えられる。1、外見を著しく「男性」に近づけている「トランス男性」が女性専用スペースを利用することになり、やはり混乱を生む。2、現行の特例法に基づいて性別の取扱いを変更した者はこれまで女性専用スペースを事実上利用できていたが(少なくとも、それを違法とする別段の法律の定めがなかったが)、今後は無条件に使えないことになり、当然、これらの人々の一部は法の下の平等に反するとして同法の違憲性を裁判に訴えるだろう。その場合、司法が、生物学的女性の権利と法益を十全に守るという立場をとっているならば、この訴えは退けられるだろうが、10.25決定を全会一致で行なった現在の司法にそのようなことを期待することは、残念ながらできない。

 以上のように差を設けることは、国家賠償訴訟を回避する上でも有意義である。四号要件を満たさない者でも、あるいは五号要件さえ満たさない者であっても、家庭裁判所の審判で性別取扱いの変更ができ、かつ四号要件及び五号要件を満たした上で法的性別を変更した人とまったく同じ権利を持つことになれば、四号要件及び五号要件を満たすために生殖腺の切除を始めとする「性別適合手術」をした人は、不必要な手術を強いられたとして国家賠償訴訟を起こすかもしれない。それを避けるためにも、両者が享受できる権利に差を設ける必要がある。

 第六条の第四項と第五項及び第七条の第四項と第五項に関しては、現行特例法の四号要件と五号要件の両者を満たしていない者であって、かつ、男性専用施設を使用することが著しく困難な者に関する規定であり(「著しく困難」という強い表現に注意。個人の単に「いやだ」という忌避感情だけではこれは適用されない)、共用施設又は第三の施設を設けてそれを利用するよう求め、それらが設けられていないか設けるのが困難な場合には、男性専用施設又は区画等の一部ないし全部を共用施設ないし第三の施設として運用することを求めており、安易に女性専用施設の使用を認めないようにしている。

 第六条の第六項は、第七条にはない規定であって、トイレに限っては、共用トイレも第三のトイレも使用するのが困難な特定の人に限って、女性専用トイレの一部を第三のトイレにして、その利用を認めることができるとしている。第五項では、共用ないし第三のトイレに変更できるのは「男性専用トイレの一部または全部」だったが、この第六項ではそれと違って、共用ないし第三のトイレに変更できるのは、あくまでも「女性専用トイレの一部」に限定している。これは、できるだけ女性専用トイレそのものをなくさないためである。

 言うまでもなく、この第六項の規定は、経産省トイレ裁判における最高裁判決を踏まえたものである。それと同時に、それを最後の第六項に置くことで、物事のあるべき優先順位を定めるものとなっている。すなわち、あくまでも原則は生物学的性別に基づく利用であり、次に、現行特例法第三条第五号を満たした人に、管理者の裁量で女性専用トイレの利用を許可することができるとし、その次に、それ以外の「トランス女性」のうち、男性トイレの使用が心理的ないしその他の理由で著しく困難な人には、共用トイレまたは第三のトイレを利用するよう求め、さらにそれらの設置が困難な場合には、男性専用トイレの一部ないし全部を共用トイレないし第三のトイレを利用するよう求めている。そして、いちばん最後に、それも困難である場合には、その特定の人にかぎって、女性専用トイレの一部を、周りから区別し、視認できる標識を提示した上で第三のトイレにすることを認めるという順番になっている。五号要件を満たしていない人は、あくまでも女性専用トイレをそのまま利用することはできないのであり、それ以外のさまざまな可能性を追求した最後に、女性専用トイレの一部を第三のトイレとして用いることができるとしているのである。

 このように規定すれば、経産省トイレ裁判の最高裁判決には反するのではないかという異論が生じるだろう。しかし、経産省トイレ訴訟で抗告人が勝訴したのは、法律上の明確な規定が存在せず、最初から管理者の裁量に任されていたからである。最初から法律でルールを定めていれば、経産省トイレ訴訟において抗告人側が勝利することはなかったろう。それでも抗告人を勝たせるためには、この法律案の第六条の第六項そのものが憲法違反であると決定しなければならないが、女性専用トイレの一部を第三のトイレとして、その利用を求めることさえ憲法違反とするのは、はなはだ困難であろうし、このような細部の規定に対してさえ違憲判決を下すとなれば、立法権への深刻な侵害になるであろう。



第八条について

 これは罰則規定である。第六条および第七条で定められた例外に該当する者以外の生物学的男性が女性専用施設・区画等に侵入した場合の罰則であり、建造物侵入罪と同程度の罰則を定めている。建造物侵入罪と同じなら、特段、罰則を定めなくてもよいように思えるが、女性専用スペースに侵入するという犯罪が、単なる「建造物侵入罪」としてカウントされる事態を防ぐ意味もある。単なる「建造物侵入罪」ではなく、女性専用スペースへの侵入罪なのであり、したがって性犯罪の一種として考えることができる。

 第二項については、同じことを「トランス男性」に対しても定めている。

以上

https://no-self-id.com/2023/12/08/bill-for-women-only-spaces/
【当会独自案】女性スペースに関する法律案(23年12月3日付)2023年12月8日
日本の動き
女性スペース, 女性用トイレ, 法案