2023-07-11経産省トランスジェンダー女性(未手術の生物学的男性)トイレ訴訟最高裁判決文の射程 PDF魚拓




経産省生物学的男性トランスジェンダートイレ訴訟最高裁判決文の射程

本件の重要事項を箇条書きにします。既に管理権者たる経産省が、2階離れた女性トイレの利用を当該男性について認めていた
当該人物は生物学的男性で、性同一性障害の診断を受けてホルモン治療を受けてるが健康上の理由で未手術であり、よって戸籍上も男性
性自認が女性であり(トランス女性)外見は女性に見える者として扱われていた
当該男性が女性トイレを利用することについては説明会が開催されていた


1番について、当該男性(冒頭画像アカウントの運用者)は職場の女性トイレを自由に使用させることを含め、原則として女性職員と同等の処遇を行うこと等を内容とする行政措置の要求をしたのが今回の訴訟の請求内容の一つです。

つまり、既に施設の管理権者の側が、個別に相談した上で、当該身体男性の女子トイレの利用を認めたのであって、誰もかれもがいきなり女性用トイレを使ってよい、という話にはならない。

したがって、本判決は不特定多数の人々の使用が想定されている公共施設・民間施設の使用の在り方について触れるものではありません。これは今崎幸彦裁判官の補足意見の末尾(PDFの最下部)でも指摘されていました。
※追記:単なる「職場での利用の在り方」の事例でもありません。

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原告(上告人)男性が女子トイレを利用しなければならない理由はよくわからない

この訴訟全体の話でよくわからないのは、【原告(上告人)男性が女子トイレを利用しなければならない理由がよくわからないという点です。

なぜ、「男子トイレを利用することの説明会」ではなかったのでしょうか?

いずれにしても既に管理権者たる経産省が女子トイレの利用を認めてるので、訴訟の争点にはなり得ず、そこはスルーされたんでしょうが、もやっとするところではあります。

「自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益=重要な法的利益」なのか?

前項と関連して、地裁判決文や最高裁の補足意見では「自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益=個人がその真に自認する性別に即した社会生活を送ることができること、は重要な法的利益」という理解でした。

が、最高裁の判決文では、そのように表現することからは「逃げ」ています。

この点について何も書かれていませんでした。

原告男性が女子トイレを利用しなければならない理由についての検討が無かったのは、もしかしたらこういう背後の論理が働いてる可能性はありますが、補足意見は判決の本文そのものではないのでよくわかりません。

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身体的特徴に基づいた施設利用が求められていたのでは?という点

労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則ではトイレは男女別に分けろとしているところ、利用者について必ず身体的特徴で振り分けないと管理権者が違法になる、そのように義務付けている、という法的関係ではないのがどうやら前提のようです。
(便所)第十七条 事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。一 男性用と女性用に区別すること。
この点は公衆浴場や旅館における共同浴室・脱衣所における扱いとは若干異なるものと言えるかもしれません。



参考までに、SOGI理解増進法の施行後に出されて騒がれた通達を置いておきます。

ここでは、身体的特徴で振り分けることとされています。

公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて

公衆浴場における衛生等管理要領等について

まとめ:LGBT活動家も反対派も過度に一般化して勝手に騒ぐな本判決は不特定多数の人々の使用が想定されている公共施設・民間施設の使用の在り方には影響しない
事前に相談して周囲の人間も知っていたという個別事案に過ぎない
誰もかれもがいきなり女性用トイレを使ってよい、という話にはならない


LGBT活動家も反対派も、本件を過度に一般化して勝手に騒ぐことはやめるべきです。

https://www.jijitsu.net/entry/Transgender-keisansyou-toilet-saikousai
2023-07-11

経産省トランスジェンダー女性(未手術の生物学的男性)トイレ訴訟最高裁判決文の射程










薬生衛発0623第1号
令 和 5 年 6 月 2 3 日



都 道 府 県
各 保健所設置市 衛生主管部(局)長 殿
特 別 区




厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長
( 公 印 省 略 )




公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて



公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室については、「公衆浴場における衛生等管
理要領等について」(平成 12年12 月 15 日付け生衛発第 1811 号厚生省生活衛生
局長通知)の別添2「公衆浴場における衛生等管理要領」及び別添3「旅館業に
おける衛生等管理要領」において、「おおむね7歳以上の男女を混浴させないこ
と」などと定めています。
これらの要領でいう男女とは、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨か
ら、身体的な特徴をもって判断するものであり、浴場業及び旅館業の営業者は、
例えば、体は男性、心は女性の者が女湯に入らないようにする必要があるものと
考えていますので、都道府県、保健所設置市及び特別区におかれては、御了知の
上、貴管内の浴場業及び旅館業の営業者に対する周知や指導等について御配慮
をお願いいたします。
なお、本通知は、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 245 条の4第1項の
規定に基づく技術的助言である旨申し添えます。






2

(参考)

○公衆浴場法(昭和 23年法律第139号)
第三条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴
者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。

○「公衆浴場における衛生等管理要領」(平成 12年 12 月15 日生衛発第1811 号)(抜粋)
Ⅱ 施設設備
第1 一般公衆浴場
4 浴室
(1) 男女を区別し、その境界には隔壁を設け、相互に、かつ、屋外から見通し
のできない構造であること。
Ⅲ 衛生管理
第1 一般公衆浴場
9 入浴者に対する制限
(1) おおむね7歳以上の男女を混浴させないこと。


○旅館業法(昭和 23 年法律第 138号)
第四条 営業者は、旅館業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他
宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。
2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
3(略)

○「旅館業における衛生等管理要領」(平成 12 年 12 月 15 日生衛発第 1811 号)(抜粋)
Ⅱ 施設設備
第1 旅館・ホテル営業の施設設備の基準
12 浴室の構造設備は、次の(1)~(5)までの要件を満たすものであること。
(3) 共同浴室を設ける場合は、原則として男女別に分け、各1か所以上のもの
を有すること。
Ⅲ 施設についての換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措
置の基準
4 浴室は、次に掲げるところにより措置すること。
(16) 共同浴室にあっては、おおむね7歳以上の男女を混浴させないこと。






3

(参考)令和5年4月28 日 衆議院 内閣委員会 会議録(抜粋)

○國重委員
(略)公衆浴場、いわゆる銭湯や旅館等の宿泊施設の共同浴室について、現在それ
ぞれ衛生等管理要領が定められておりまして、その中で男女別の定めがされてい
ます。これらは風紀の観点から混浴禁止を定めていることから、男女の別は身体的
な特徴の性をもって判断することとされていると、事前に政府の方からも説明を
受けております。
そこで、念のため確認をさせていただきたいんですけれども、これらの共同浴場
における男女の判断基準はトランスジェンダーにも当てはまる、つまり、トランス
ジェンダーの場合も性自認ではなくて身体的特徴に基づいて判断することになる
と理解をしていますけれども、これで間違いないかどうか、答弁を求めます。

○佐々木政府参考人
お答えいたします。
公衆浴場や宿泊施設の共同浴場につきましては、厚生労働省が管理要領を定め
ております。具体的には、公衆浴場における衛生等管理要領や旅館業における衛生
等管理要領になります。この中で、おおむね七歳以上の男女を混浴させないことな
どと定めております。
この要領で言う男女は、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、トラン
スジェンダーの方も含め、身体的な特徴の性をもって判断するものであり、公衆浴
場等の営業者は、体は男性、心は女性の方が女湯に入らないようにする、こういう
必要があると考えております。
実際の適用につきましては、都道府県等が条例を定めております。この条例によ
って、基本的にこの要領と同じような形で男女の浴室を区別し、混浴を禁止してい
るものと承知しております。

○國重委員
トランスジェンダーの方であっても、心ではなくて身体的特徴で判断するとい
うようなことだったと思います。
では、共同浴場において、先ほど答弁いただいたとおり、風紀の観点から心の性
ではなくて身体的特徴をもって男女を区別する、このような現在行われている取
扱いというのは憲法十四条に照らしても差別に当たらないと、念のため確認しま
すが、差別に当たらないということで間違いないかどうか、答弁を求めます。

○伊佐副大臣
憲法十四条、いわゆる法の下の平等でありますが、この原則が規定されておりま
す。この趣旨としては、合理的な理由なしに区別をすることを禁止するという趣旨
でございます。
つまり、合理的と認められる範囲内の区別を否定するものではないというふう
に理解をしておりまして、先ほど委員御指摘の、公衆浴場における入浴者について
は男女を身体的な特徴の性をもって判断するというこの取扱いは、風紀の観点か
ら合理的な区別であるというふうに考えられております。憲法第十四条に照らし
ても差別に当たらないものというふうに考えております。

薬生衛発0623第1号 令 和 5 年 6 月 2 3 日 都 道 府 県 各 保健所設置市 衛生主管部(局)長 殿 特 別 区 厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長 ( 公 印 省 略 ) 公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて


公衆浴場における衛生等管理要領等について

平成 12 年 12 月 15 日 生衛発第 1,811 号
各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長宛
厚生省生活衛生局長通知
平成 15 年2月 14 日健発第 0214004 号 一部改正
平成 28 年3月 30 日生食発 0330 第5号 一部改正
平成 29 年 12 月 15 日生食発 1215 第2号 一部改正
平成 30 年1月 31 日生食発 0131 第2号 一部改正
令和元年9月 19 日生食発 0919 第8号 一部改正
令和2年 12 月 10 日生食発 1210 第1号 一部改正


別添 1 公衆浴場における水質基準等に関する指針


第1 この指針は、公衆浴場において使用する水につき、水質の基準及び水質
の検査方法を定めることを目的とする。
第2 この指針において使用する用語は、次の各号で定めるとおりとする。
1 「原湯」とは、浴槽の湯を再利用せずに浴槽に直接注入される温水をい
う。
2 「原水」とは、原湯の原料に用いる水及び浴槽の水の温度を調整する目
的で、浴槽の水を再利用せずに浴槽に直接注入される水をいう。
3 「上がり用湯」とは、洗い場及びシャワーに備え付けられた湯栓から供
給される温水をいう。
4 「上がり用水」とは、洗い場及びシャワーに備え付けられた水栓から供
給される水をいう。
5 「浴槽水」とは、浴槽内の湯水をいう。
第3 原湯、原水、上がり用湯及び上がり用水の水質基準及びその検査方法は、
次の各号に規定するとおりとする。
ただし、温泉水又は井戸水を使用するものであるため、この基準により難
く、かつ、衛生上危害を生じるおそれがないときは、1のアからエまでの基
準の一部又は全部を適用しないことができる。
1 水質基準
ア 色度は、5度以下であること。
イ 濁度は、2度以下であること。
ウ pH 値は、5.8 以上 8.6 以下であること。


2



エ 有機物(全有機炭素(TOC)の量)は3mg/L 以下、又は、過マンガン酸
カリウム消費量は 10mg/L 以下であること。
(注) 塩素化イソシアヌル酸又はその塩を用いて消毒している等の理由
により有機物(全有機炭素(TOC)の量)の測定結果を適用することが
不適切と考えられる場合は、過マンガン酸カリウム消費量の測定で、
10mg/L 以下であることとする。
オ 大腸菌は検出されないこと。
カ レジオネラ属菌は、検出されないこと(10cfu/100mL 未満)。
2 検査方法
ア 色度、濁度、pH 値、有機物(全有機炭素(TOC)の量)及び大腸菌の検
査方法は、それぞれ水質基準に関する省令(平成 15 年厚生労働省令第
101 号)で定める検査方法によること。また、過マンガン酸カリウム消
費量の検査方法は、同令による廃止前の水質基準に関する省令(平成4
年厚生省令第 69 号)で定める検査方法によること。
(注) 大腸菌の検査方法である特定酵素基質培地法は、海水を含む試料
では海洋細菌により偽陽性となることがあるため、海水を含む検体
で大腸菌陽性になった場合は、ダーラム管が入ったECブイヨン 10mL
に陽性検体 100µL を接種し、44.5℃で培養してガス産生を確認する。
ガス産生が認められた場合は特定酵素基質培地による検査結果を
採用する。ガス産生が認められない場合は特定酵素基質培地による
大腸菌陽性の結果は偽陽性と判定すること。
イ レジオネラ属菌の検査方法は、ろ過濃縮法又は冷却遠心濃縮法のいず
れかによること。また、その具体的手順は、「公衆浴場における浴槽水
等のレジオネラ属菌検査方法について」(令和元年9月 19 日薬生衛発
0919 第1号厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長通知)を参照する
こと。
ウ 1年に1回以上、水質検査を行い、その結果は検査の日から3年間保
管すること。
エ 検査の依頼に当たっては、精度管理を行っている検査機関に依頼する
ことが望ましい。
第4 浴槽水の水質基準及びその検査方法は次の各号に規定するとおりとす
る。
ただし、温泉水又は井戸水を使用するものであるため、この基準により
難く、かつ、衛生上危害を生じるおそれがないときは、1のア及びイの基
準のどちらか又は両方を適用しないことができる。
1 水質基準


3



ア 濁度は、5度以下であること。
イ 有機物(全有機炭素(TOC)の量)は8mg/L 以下、又は、過マンガン
酸カリウム消費量は 25mg/L 以下であること。
(注) 塩素化イソシアヌル酸又はその塩を用いて消毒している等の理由
により有機物(全有機炭素(TOC)の量)の測定結果を適用すること
が不適切と考えられる場合は、過マンガン酸カリウム消費量の測定
で、25mg/L 以下であることとする。
ウ 大腸菌群(グラム陰性の無芽胞性の桿菌であって、乳糖を分解して、
酸とガスを形成するすべての好気性又は通性嫌気性の菌をいう。)は、
1個/mL 以下であること。
エ レジオネラ属菌は、検出されないこと(10cfu/100mL 未満)。
2 検査方法
ア 濁度、有機物(全有機炭素(TOC)の量)、過マンガン酸カリウム消費
量及びレジオネラ属菌の検査方法については、第3の検査方法によるこ
と。
イ 大腸菌群の検査方法
下水の水質の検定方法等に関する省令(昭和 37 年厚生省令・建設省令第
1号)別表第1(第6条)の大腸菌群数の検定方法によること。なお、
試料は希釈せずに使用すること。
ウ ろ過器を使用していない浴槽水及び毎日完全に換水している浴槽水
は、1年に1回以上、連日使用している浴槽水は、1年に2回以上(た
だし、浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合には、1年に4回以上。)、
水質検査を行い、その結果は検査の日から3年間保管すること。
エ 検査の依頼に当たっては、精度管理を行っている検査機関に依頼する
ことが望ましい。


4



別添2 公衆浴場における衛生等管理要領


I 総則
第1 目的
この要領は、公衆浴場における施設、設備、水質の衛生的管理、従業者
の健康管理、その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置により公衆浴場に
おける衛生等の向上及び確保を図ることを目的とする。
第2 適用の範囲及び用語の定義
1 この要領は、公衆浴場及び浴場業を営む者について適用する。
2 この要領において用いる用語は、次のとおり定義する。
(1) 「一般公衆浴場」とは、温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させ
る公衆浴場であって、その利用の目的及び形態が地域住民の日常生活
において保健衛生上必要なものとして利用される入浴施設をいう。
(2) 「その他の公衆浴場」とは、一般公衆浴場以外の公衆浴場をいい、
以下に分類される。
1) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、保養又
は休養のための施設を有するもの
2) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、スポー
ツ施設に付帯するもの
3) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、工場、
事業場等が、その従業員の福利厚生のために設置するもの
4) 蒸気、熱気等を使用し、同時に多数人を入浴させることができるも

5) 蒸気、熱気等を使用し、個室を設けるもの
6) その他のもの
(3) 「原湯」とは、浴槽の湯を再利用せずに浴槽に直接注入される温水
をいう。
(4) 「原水」とは、原湯の原料に用いる水及び浴槽の水の温度を調整す
る目的で、浴槽の水を再利用せずに浴槽に直接注入される水をいう。
(5) 「上がり用湯」とは、洗い場及びシャワーに備え付けられた湯栓か
ら供給される温水をいう。
(6) 「上がり用水」とは、洗い場及びシャワーに備え付けられた水栓か
ら供給される水をいう。


5



(7) 「浴槽水」とは、浴槽内の湯水をいう。
(8) 「飲料水」とは、水道法(昭和 32 年法律第 177 号)第3条第9項
に規定する給水装置により供給される水(以下「水道水」という。)
その他飲用に適する水をいう。
(9) 「貯湯槽」とは、原湯等を貯留する槽(タンク)をいう。
(10) 「ろ過器」とは、浴槽水を再利用するため、浴槽水中の微細な粒
子や繊維等を除去する装置をいう。
(11) 「集毛器」とは、浴槽水を再利用するため、浴槽水に混入した毛
髪や比較的大きな異物を捕集する網状の装置をいう。
(12) 「調節箱」とは、洗い場の湯栓(カラン)やシャワーに送る湯の
温度を調節するための槽(タンク)をいう。
(13) 「循環配管」とは、湯水を浴槽とろ過器等との間で循環させるた
めの配管をいう。
(14) 「循環式浴槽」とは、温泉水や水道水の使用量を少なくする目的
で、浴槽の湯をろ過器等を通して循環させる構造の浴槽をいう。
第3 特に留意すべき事項
近年の入浴施設では、湯水の節約を行うため、ろ過器を中心とする設備、
湯水を再利用するための貯湯槽及びそれらの設備をつなぐ配管等により、
複雑な循環系を構成することが多くなっている。また、かけ流し式浴槽施
設においても、施設の大型化や多様化に伴い、温泉資源や湯量の確保を目
的とした貯湯槽が設置されていたり、複数の浴槽への配水のために配管が
複雑になっていたりしている。加えて、湯を豊富にみせるための演出や露
天風呂、気泡発生装置、ジェット噴射装置等微小な水粒を発生させる設備
(以下「気泡発生装置等」という。)や打たせ湯の設置など様々な工夫に
より、入浴者を楽しませる設備が付帯されるようになってきた。これまで
のレジオネラ症の発生事例を踏まえると、これらの設備は衛生管理を十分
行うことができるよう、構造設備上の措置が必要である。
浴槽水の微生物汚染は、入浴者の体表、土ぼこり等に存在する微生物が
持ち込まれることにより発生する。さらに、それらの微生物は、常に供給
される入浴者からの有機質により増殖し、ろ過器、浴槽や配管の内壁等に
生物膜を形成する。しかも、その生物膜により、外界からの不利な条件(塩
素剤等の殺菌剤)から保護されているため、浴槽水を消毒するだけではレ


6



ジオネラ属菌等の微生物汚染を除去できない。そのため、浴槽水の消毒の
みならず常にその支持体となっている生物膜の発生を防止し、生物膜の形
成を認めたならば直ちにそれを除去しなければならない。ろ過器に次いで、
配管は生物膜の形成場所となりやすいため、設計施工時に配管を最短にす
る、図面等により配管の状況を正確に把握し、既存の不要な配管を除去す
る等の対応が必要である。
気泡発生装置等を設置した浴槽や打たせ湯、シャワー等は、エアロゾル
を発生させ、レジオネラ属菌感染の原因ともなりやすい。連日使用してい
る浴槽水を気泡発生装置等を設置した浴槽で使用しない、打たせ湯等には
再利用された浴槽水を使用しない等、汚染された湯水によるレジオネラ属
菌の感染の機会を減らさなければならない。
新規営業開始時や休止後の再開時は、レジオネラ属菌が増殖している危
険性が高いので、十分に消毒した後に営業開始、再開するよう注意するこ
と。
II 施設設備
第1 一般公衆浴場
1 施設全般
(1) 施設の周囲は、清掃及び排水が容易にできる構造であること。
(2) ねずみ、衛生害虫等の侵入を防止するため、外部に開放する排水口、
窓等に金網を設ける等必要に応じて防除設備を設けること。
(3) 施設内の採光、照明及び換気が十分行うことができる構造設備であ
ること。
2 下足場
はきものを安全に保管することができる設備を入浴者数に応じて設け
ること。
3 脱衣室
(1) 男女を区別し、その境界には隔壁を設けて、相互に、かつ、屋外か
ら見通しのできない構造であること。
(2) 脱衣室の床面積(洗濯機、乾燥機、自動販売機等の面積を除く。)
は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次により算出される面積以上
であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×20/60×1.1 平方メートル×1.5


7



(注) 毎時最大浴場利用人員……おおむね、平均人員の2倍
20……着脱衣、休憩等に要する時間(分)
1.1 平方メートル……入浴者1人当たりの衣服の着脱等に要す
る面積
1.5……脱衣箱、通路、洗面化粧等に要する面積
(3) 床面は、耐水性の材料を用いること。
(4) 入浴者の衣類その他の携帯品を安全に保管できる設備を入浴者数
に応じて設けること。
なお、脱衣箱(かご)の数は、次により算出される数以上であるこ
とが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×50/60
(注) 50……浴場利用時間(分)
(5) 開放できる窓又は換気設備等を有すること。
(6) 洗面設備を設けること。
(7) 洗濯機、乾燥機、自動販売機等を設置する場合は、脱衣室の機能に
支障を来さない場所とすること。
(8) 洗濯機を設置する場合には、専用の排水口を設けること。
なお、ドライクリーニング用洗濯機を備えないこと。
また、乾燥機を設置する場合には、水蒸気、燃焼ガス等を屋外に排
出できる構造であること。
4 浴室
(1) 男女を区別し、その境界には隔壁を設け、相互に、かつ、屋外から
見通しのできない構造であること。
(2) 浴室の床面、周壁(床面から1m以上)及び浴槽は、耐水性の材料
を用いること。
(3) 浴室の床面は、流し湯が停滞しないよう適当な勾配(おおむね 100
分の 1.5 以上)を設け、かつ、隙間がなく、清掃が容易に行える構造
であること。
また、すべりにくい材質又は構造とすることが望ましいこと。
(4) 浴室の天井は、適当な勾配を設ける等して、水滴が落下しないよう
にすること。
また、浴室には、湯気抜き、換気扇等を設けること。


8



(5) 洗い場の面積は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次により算出
される面積以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×20/60×1.1 平方メートル×1.5
(注) 20……洗い場使用時間(分)
1.1 平方メートル……入浴者1人当たりの洗い場使用面積
1.5……通路等に要する面積の係数
(6) 洗い場には、入浴者数に応じた十分な数の給水(湯)栓、洗い桶及
び腰掛を備えること。
なお、給水(湯)栓は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次によ
り算出される数(組)以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×20/60
(注) 20……洗い場使用時間(分)
(7) 給水(湯)栓は他の組の中心点との距離がおおむね 70cm 以上であ
ること。
なお、90cm 程度の間隔が望ましいこと。
(8) 洗い場の排水溝は、危害を防止し、かつ、排水等に支障のない構造
であること。
(9) 浴槽内面積の合計は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次により
算出される面積以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×10/60×0.7 平方メートル×1.2
(注) 10……浴槽使用時間(分)
0.7 平方メートル……入浴者1人当たりの浴槽使用面積
1.2……浴槽内の踏段、注(湯水)口等に要する面積の係数
(10) 浴槽は、洗い水等の流入を防止するため上縁が洗い場の床面より
おおむね5cm 以上(15cm 以上が望ましいこと。)の適当な高さを有す
ること。
また、必要に応じて手すり及び内側に踏段を設ける等、高齢者、小
児等に配慮したものであることが望ましいこと。
(11) 浴槽は、熱湯及び熱交換器が入浴者に直接接触しない構造である
こと。
ただし、給湯栓等により熱湯を補給する構造のものにあっては、そ
の付近のよく見やすい場所に熱湯に注意すべき旨の表示をすること。


9



(12) ろ過器を設置する場合にあっては、以下の構造設備上の措置を講
じること。
1) ろ過器は、浴槽ごとに設置することが望ましく、1時間当たり浴槽
の容量以上のろ過能力を有し、かつ、逆洗浄等の適切な方法でろ過器
内のごみ、汚泥等を排出することができる構造であるとともに、ろ過
器に毛髪等が混入しないようろ過器の前に集毛器を設けること。
2) 浴槽における原水又は原湯の注入口は、循環配管に接続せず、浴槽
水面上部から浴槽に落とし込む構造とすること。
3) 循環してろ過された湯水は浴槽の底部に近い部分から補給される
構造とし、当該湯水の誤飲及びエアロゾルの発生を防止すること。
4) 浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤の注入又は投入口は、浴槽水がろ
過器内に入る直前に設置されていること。
(13) 打たせ湯及びシャワーは、循環している浴槽水を用いる構造でな
いこと。
(14) 気泡発生装置等を設置する場合には、連日使用している浴槽水を
用いる構造でないこと。また、点検、清掃及び排水が容易に行うこと
ができ、空気取入口から土ぼこりや浴槽水等が入らないような構造で
あること。
(15) 内湯と露天風呂の間は、配管等を通じて、露天風呂の湯が内湯に
混じることのない構造であること。
(16) オーバーフロー水及びオーバーフロー回収槽(以下「回収槽」と
いう。)内の水を浴用に供する構造になっていないこと。ただし、こ
れにより難い場合には、オーバーフロー還水管を直接循環配管に接続
せず、回収槽は、地下埋設を避け、内部の清掃が容易に行える位置又
は構造になっているとともに、レジオネラ属菌が繁殖しないように、
回収槽内の水が消毒できる設備が設けられていること。
(17) 浴槽には、入浴者が容易に見える位置に温度計を備えること。
(18) 水位計の設置は、配管内を洗浄・消毒できる構造、あるいは配管
等を要しないセンサー方式であること。
(19) 配管内の浴槽水が完全に排水できるような構造とすること。
(20) 使用済みのカミソリ等を廃棄するための容器を備えること。


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(21) シャワー設備を設ける場合は、適当な温度の湯を十分に供給でき、
湯の温度を調節できるものであること。
また、立位で使用するシャワー設備を設ける場合は、シャワー水が
浴槽及び入浴者にかからないよう、十分な距離を設け、又はカーテン
等を備えること。
(22) 調節箱を設置する場合は、清掃しやすい構造とし、レジオネラ属
菌が繁殖しないように、薬剤注入口を設けるなど塩素消毒等が行える
ようにすること。
5 飲料水供給設備
浴室、脱衣室の入浴者の利用しやすい場所に1か所以上の飲料水を供
給する設備を設けること。
6 給水、給湯設備
(1) 原水、原湯、上がり用水及び上がり用湯として使用する水の水質は、
本通知の別添1「公衆浴場における水質基準等に関する指針」(平成
12 年 12 月 15 日生衛発第 1,811 号厚生省生活衛生局長通知)に適合し
ていることを確認したものであること。
(2) 貯湯槽は、通常の使用状態において、湯の補給口、底部等に至るま
で 60℃以上に保ち、かつ、最大使用時においても 55℃以上に保つ能力
を有する加温装置を設置すること。それにより難い場合には、レジオ
ネラ属菌が繁殖しないように貯湯槽水の消毒設備が備えられているこ
と。貯湯槽は完全に排水できる構造とすること。
(3) 放熱管及び給配湯は、露出せず、直接身体に接触させない設備とす
ること。
7 便所
(1) 男女それぞれの脱衣室等入浴者が利用しやすい場所にそれぞれ便
所を設けること。
また、高齢者、小児等に配慮した便器を設けることが望ましいこと。
(2) 窓又は換気設備等を有すること。
(3) 流水式手洗い設備が備えられていること。
8 排水設備
(1) 浴場の汚水を屋外の下水溝、排水ます等に遅滞なく排水できる排水
溝等を設けること。


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(2) 排水溝、排水管及びこれに付属する排水ますは、コンクリート等の
不浸透性材料を用い、臭気の発散、汚水の漏出を防ぐために必要な設
備とすること。
(3) 排水溝及び排水ますは、衛生害虫等が発生せず、かつ、ねずみが侵
入しにくい構造であること。
9 休息室
必要に応じ、休息のための場所を設けること。
10 その他の入浴設備を設ける場合
(1) サウナ室又はサウナ設備(蒸気又は熱気のもの)を設ける場合
1) サウナ室は、男女を区別し、床面、内壁及び天井は、耐熱性の材料
を用いて築造すること。
2) サウナ室の床面は、排水が容易に行えるようおおむね 100 分の 1.5
以上の適当な勾配を付け、隙間がなく、清掃が容易に行える構造であ
ること。
また、室内には、掃除の際に使用される水が完全に屋外に排出でき
るよう排水口を設けること。
3) サウナ室又はサウナ設備の蒸気又は熱気の放出口、放熱パイプは、
直接入浴者の身体に接触しない構造であること。
また、入浴者が接触するおそれのあるところに金属部分がある場合
は、断熱材で覆う等の安全措置を講ずること。
4) サウナ室は、換気を適切に行うため、給気口は室内の最も低い床面
に近接する適当な位置に設け、排気口は天井に近接する適当な位置に
設けること。
5) サウナ室又はサウナ設備の適温を保つため、温度調節設備を備える
こと。
6) サウナ室又はサウナ設備には、サウナの利用基準温度を表示し、温
度計を適当な位置に設置し、必要に応じて湿度計を設置すること。
7) サウナ室の室内を容易に見通すことができる窓を適当な位置に設
けること。
また、入浴者の安全のため、室内には、非常用ブザー等を入浴者の
見やすい場所に設けること。
(2) 露天風呂を設ける場合


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1) 4浴室(1)、(2)及び(10)~(19)に準じた構造とすること。
2) 屋外に設けられる浴槽の浴槽内面積及び浴槽に付帯する通路等の
面積は、男女それぞれその入浴者数に応じ、十分な面積であること。
3) 屋外には洗い場を設けないこと。
4) 浴槽に付帯する通路等には脱衣室、浴室等の屋内の保温されている
部分から直接出入りできる構造であること。
(3) 電気浴器を設ける場合
電気浴器用電源装置は、電気用品安全法(昭和 36 年法律第 234
号)に基づき、製造・輸入されたものであること。
11 付帯施設
娯楽室、マッサージ室、アスレチック室等を設ける場合は、入浴施設
と明確に区分すること。
第2 その他の公衆浴場
その他の公衆浴場にあっては、前記第1を準用する。
なお、公衆浴場の利用目的、利用形態等により、これにより難い場合で
あって、公衆衛生上及び風紀上支障がないと認められるときは、一部適用
を除外することができるものとする。

公衆浴場における衛生等管理要領等について 平成 12 年 12 月 15 日 生衛発第 1,811 号 各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長宛 厚生省生活衛生局長通知 平成 15 年2月 14 日健発第 0214004 号 一部改正 平成 28 年3月 30 日生食発 0330 第5号 一部改正 平成 29 年 12 月 15 日生食発 1215 第2号 一部改正 平成 30 年1月 31 日生食発 0131 第2号 一部改正 令和元年9月 19 日生食発 0919 第8号 一部改正 令和2年 12 月 10 日生食発 1210 第1号 一部改正 別添 1 公衆浴場における水質基準等に関する指針