法廷録音制限裁判最高裁に特別抗告.原告側指摘制限裁判は判例違反の判例と原告側が憲法違反と指摘日本国憲法31条37条とは何か。

法廷録音制限裁判最高裁に特別抗告.原告側指摘制限裁判は判例違反の判例と原告側が憲法違反と指摘日本国憲法31条37条とは何か。
このnoteにおいて原告側とは日本国内における裁判の法廷内でICレコーダを使用し制限裁判を受け大阪高裁に抗告し棄却され最高裁に特別抗告した原告及び原告側弁護士さんを指します。
視覚障害者にとって音声・点字データ不可欠なのだよね、判決の判例音声データ&点字データ公開および容疑者被疑者とされる被告側及び犯罪被害者が閲覧・コピーする裁判所公開資料に音声版・点字版追加を裁判所さんにお願いしたいのと音声でやり取りするのに法廷でICレコーダ使用で双方の言った言わない防止しないと裁判は人の人生左右するので、正確性重視するうえで認めて頂きたいと個人的な意見を書いたうえでお話ししたい。


法廷で録音したために大阪地裁から制裁裁判で過料3万円の決定をされたことを不服として、中道一政弁護士が6月2日、大阪高裁に抗告申し立てをした。岩﨑邦生裁判官の対応は判例違反だなどと訴えている。 ●「制裁裁判」の適用は判例違反 中道氏は、ストーカー規制法違反の罪に問われた女性被告人の第2回公判で法廷録音を試みたところ、手錠で拘束された。不許可の理由を繰り返し問うたところ、岩﨑裁判官は「法廷の治安を乱した」として退廷を命じ、制裁裁判に付した。 女性の私選弁護人を受任し、4月の初公判時から法廷内での録音を許可するよう申請を出していた。録音は、取り調べ等の調書に疑問を持っている女性からの要望でもある。 録音は、刑事訴訟規則215条で裁判所の許可がないと「できない」とされており、岩﨑裁判官は、初公判時から録音を不許可とし、その理由について「必要性も相当性もない」と述べていた。 これに対し、中道氏は刑事訴訟規則47条2項「検察官、被告人又は弁護人は、裁判長の許可を受けて、前項の規定による処置(編注:速記・録音のこと)をとることができる」を引いて、原則禁止とは言えないとの立場だ。 抗告申立書では、不許可の理由について説明を求めた行為に「法廷等の秩序維持に関する法律」を適用することは判例に違反すると以下のように主張する。 最大判昭和33年10月15日(刑集第12巻14号3291頁)は「日本国憲法の理念とする民主主義は、恣意と暴力を排斥して社会における法の支配を確立することによって、はじめてその実現を期待することができる。」と言及している。 中道氏はこれを踏まえて、「法廷録音を許可しない理由の説明を求める行為は、その理由を聞いた訴訟当事者、傍聴人、さらにはこれを伝え聞いた一般市民らが、法廷録音の可否を論じる重要な前提を得るための行為であるから、法廷録音を許可しない理由の説明を求めることは、むしろ、法廷等の秩序維持に関する法律が目指している民主主義の実現に資する」などと訴えている。 ●不服申し立ては20年で18人 法曹時報によると、制裁裁判は2000~2021年は年1~8件。弁護人が対象になったのはゼロと極めて異例の事態といえる。 制裁は監置場に留置される「監置(20日以下)」と「過料(3万円以下)」がある。弁護士ドットコムニュース編集部が約40年分の統計を調べたところ、弁護人が制裁裁判を受けたのは1979年、1982年(過料)、1985年(監置)の3人だった。 2000~2021年に制裁裁判を受けた79人のうち、監置の15人、過料の3人が不服申し立てしている。件数は以下の表の通り。



弁護士ドットコムニュース編集部

法廷録音して過料3万円受けた弁護士 大阪高裁に抗告申し立て

2023/6/2(金) 17:29配信弁護士ドットコム


https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/418/050418_hanrei.pdf



弁護士会さん内の法廷録音訴訟に関するアンケート。


法廷録音をしようとした弁護人が手錠をかけられ退廷となり、「法廷等の秩序維持に関する法律」に基づいた「制裁裁判」で過料3万円を言い渡された。弁護人が制裁裁判にかけられるのは約40年ぶりで、弁護士業界で話題になっている。

弁護士ドットコムでは、制裁裁判を開いた大阪地裁(岩﨑邦生裁判長)の対応について、会員弁護士に緊急アンケートを実施(6月2~5日)。108人から回答が寄せられ、およそ4分の3が「不当」との見方を示した。

●昨年から録音許可を求めていた

制裁裁判にかけられたのは大阪弁護士会の中道一政弁護士。2022年11月から事前に録音の許可を求める上申書を出すなどして、裁判所に対して弁護人による録音を本格的に求めていた。

5月30日にあった今回の公判の傍聴人によると、録音機を机の上に出した中道弁護士と岩﨑裁判官との間で、「(録音を禁止する)根拠を教えてください」、「答えません」「退廷してください」という押し問答があったという。

●「公開の裁判でのやり取りを録音されてそんなに困るのか」

アンケートではまず、制裁裁判についてどう思うかを質問。「不当である」が67.6%、「やや不当である」が8.3%で、およそ4分の3が不当に寄った判断を示した。

自由回答で多かったのは、録音を禁止する合理的な理由がないのではないか、というもの。

「裁判所作成の調書は必ずしも信用性が高いとまでは言えないことがある。人間がやる以上、完璧はないのだから、弁護人による録音を認めて、後で検証可能にしても問題がないように思う。傍聴席等からの録音はまた別の扱いが必要だとは思うが」

「公開の裁判でのやり取りを録音されてそんなに困るのか。秩序が乱されるのか。疑問である。弁護人に手錠をかけて拘束するなど行き過ぎである」

「録音の必要性は十分理解できる。先鋭的には映るが、今回これだけ話題となったことから問題提起としての『役割』は十分であった。今後、時間はかかるかもしれないが、弁護士会など正式なルートを通じて制度化されてほしいと願う。その際には立法事実(法廷でのやり取りと調書に齟齬があること)の積み上げが必要だから、全国の弁護人の協力が必要となろう」

また、裁判所が録音禁止の理由を説明することなく、手錠をかけて退廷させたり、制裁裁判を開いたりしたことを強権的と批判する声も多かった。

「中道弁護士側には、録音を必要とする理由があるのであるから、録音を認めない理由があるのであれば、裁判所は具体的に説明すべきである」

「既存の制度の中での運用であり、裁判体としても安易に例外を許容できないことは分かるが、強権的に過ぎるとはいえる」

「録音機器を没収する(一時預かり)など弁護人を拘束するより、より制限的でない方法もあったのではないか。弁護人ないし弁護権に対する重大な侵害だと思う。あるいは退廷させるのみで、制裁裁判を開く必要性がどこにあったのか疑問だ」

「法廷等秩序維持法に基づく法廷警察権の発動と解されるが、警察権の行使には、当然比例原則が適用される。本件弁護人に対する身体の拘束は明らかに不適切であり、比例原則違反と思料する」

一方で、裁判所の対応を妥当とする弁護士からは「録音が必要な理由がわからない」、「問題提起するにしてもやり方が過激すぎる」といった批判的な意見もあった。

「公判の記録の仕方は法定されており、当事者が勝手に録音することを許すのは、混乱のもとであり、厳格に対応すべきである」

「退廷命令を受けた以上、従わざるを得ないと思う。弁護人としては、退廷命令を出すことが、訴訟指揮権の濫用だと思われるような状況を作るべきだった」

●裁判所の調書に対する不信感

弁護人や代理人限定で法廷録音を認めるべきかを尋ねたところ、「認めるべき」が62.0%、「やや認めるべき」が13.9%で、過半数の弁護士が録音の必要性を認めた。

背景には、裁判所が尋問などの内容をまとめた調書の正確性が必ずしも保たれていないという問題があるようだ。

「調書の記載が自身の認識と違っていたという経験は、弁護士なら誰でもあると思う」というコメントがある通り、調書に納得いかないケースが一定数あるのに、録音がなければ異議を申し立てるにしても根拠が薄くなってしまう。関連して以下のようなコメントもあった。

「裁判については録音どころか、ライブ配信している国もある。今回の問題を契機として『裁判の公開』に関する議論が進展することを期待する」

「裁判所が携帯電話のチェックをするわけでもなく、自由な傍聴を認めている、何なら傍聴人だって簡単に録音ができる時代。それなのに、弁護人が弁護活動のため録音することを認めないというのは、『どうして?』ということになると思う」

ただし、録音を認めればデータの漏洩などの恐れもある。「裁判公開の原則」だからといって、フリーにするのではなく、適切なルールづくりが必要との声もあった。

「刑事事件の記録のように、漏らしたら罰則の制裁を設けた上で当事者には録音を認めるべき。録音を禁止するのは密室裁判をしているのと同じである」

「原則公開である法廷での録音を完全に禁じる事は不当であるとは思うが、同時に完全に自由にするべきという意見にも賛同しかねる。

裁判所で扱う件は当事者にとってはかなりセンシティブな情報である。現代は録音データも容易にインターネット上にアップロードされやすく漏洩に気を付けないとならず、録音を求める側にも一層のコンプライアンスが求められることも確か。その点を考慮した制度を確立してほしいとは思う」

なお、自身が担当した事件で裁判所が録音を忘れたり、失敗したりしたことがあるかとの問いに対しては、約1割が「ある」と回答。刑事事件では「量刑に関係がなかったので流した」、民事事件では「双方代理人が提出した尋問メモに基づき尋問調書が作成された」といったコメントがついた。

弁護士ドットコムニュース編集部

法廷録音めぐり制裁裁判、弁護士たちの見解「強権的すぎる」「勝手な録音は混乱のもと」

2023/6/5(月) 13:39配信弁護士ドットコムニュース



法廷録音をめぐる制裁裁判で過料3万円の決定を受けたことを不服として、大阪弁護士会の中道一政弁護士が申し立てた抗告について、大阪高裁(齋藤正人裁判長)は6月9日、棄却する決定をした。中道弁護士は最高裁に特別抗告するという。 中道弁護士は5月30日にあった公判で、法廷内での録音をめぐり岩﨑邦生裁判官と押し問答になり、退廷命令を受けた。指示に従わず法廷に留まっていたところ、警備員から手錠をかけられて拘束室に連行され、その後、制裁裁判で過料3万円の決定を受けた。弁護人が制裁裁判にかけられるのは約40年ぶりだった。 決定書によると中道弁護士は、法廷に留まろうとしただけで警備員に対して激しく抵抗していないなどと主張。これに対して裁判所は、退廷命令の執行に抵抗したことには変わりがなく、裁判官や書記官が現認し、公判調書にも記載されているとして退けた(刑訴法52条)。 中道弁護士は、退廷命令を発したことや録音を認めない理由を述べなかったこと、退廷命令の執行を継続したことなどが憲法違反(31条、37条3項)に当たるとも主張したが、「制裁に至る経緯にすぎず、制裁自体が法令に違反することを基礎づけるものではない」として認められなかった。

弁護士ドットコムニュース編集部

法廷録音めぐる制裁裁判で過料3万円、中道弁護士の抗告棄却 大阪高裁

2023/6/9(金) 19:14配信弁護士ドットコム


第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION
昭和二十一年憲法

日本国憲法


http://www.%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95.biz/kenpou/kokumin/s_31.html



第31条法廷手続きの保障
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
【弁護士】 憲法31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」と定められています。
簡単に言うと、「法の適正な手続」(due process of law=デュー・プロセス・オブ・ロー)によって、人身の自由を保障することです。

【生徒】 法文では、手続が法律で定められていることを要求するにとどまっているように読めます。手続さえ法律で定めれば、国は国民の人身の自由を奪ってもいいのですか?

【弁護士】 「国民の人身の自由を奪っていいのですか?」と無邪気に尋ねられても困ります。
国が国民の人身の自由を奪うということは、強度な人権制約になります。動きたいときに動けない、働きたいときに働けない、家族と会いたいときに会えない…これらの悲しい状態はすべて身体が拘束されたことが原因です。このような状態を回避するために、31条が定められています。
31条は、手続を法律で定めることのみならず、一般的には、①手続が適正でなければならないこと、②実体もまた法律で定められなければならないこと(罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ))、③法律で定められた実体規定も適正でなければならないことを意味する、と言われています。

【生徒】 ①~③の中で一番重要なのはどれですか?

【弁護士】 ①の「手続が適正でなければならないこと」です。適正な手続には、「告知と聴聞」が必要です。つまり、国が国民に刑罰等を科す場合には、当事者にあらかじめその内容を知らせて(=告知)、当事者に弁解と防御の機会を与えなければならない(=聴聞)というものです。
例えば、刑事事件において、被告人に告知・聴聞の機会を与えなければならないことはもちろんのこと、被告人が所持していた物を没収する場合、没収した物の中に他人の物が入っていたならば、その他人に対しても告知・聴聞の機会を与えなければなりません。

【生徒】 そういえば、手続、手続と言っていますが、「法律の定める手続」や「法の適正な手続」でいうところの「手続」って、何の手続きですか?

【弁護士】 「手続」とは、31条の「その他の刑罰を科せられない」という言葉から、直接には刑事手続についての規定であるとされています。

【生徒】 先生が「直接には」ということは、別の読み方もできるということですか?

【弁護士】 そうです。
そもそも、(人権総論のところで学んだかも知れないけれど、)日本国憲法は、国と国民の間を規律する法であって、憲法は、国王が絶対的な権力を保持して国民を支配したという中世のような状況を避けるために、国から国民を守ります。
これを31条の関係でいうと、「国」とは、警察官・検察官といった捜査機関が主になります。もっとも、捜査機関だけではなく、行政の活動が積極的・活発的になっている現代社会では、行政機関も国民の権利を害する可能性が増えてきました。だから、31条との関係での「国」には、行政機関も含まれると解釈することもできます。

【生徒】 行政機関が、国民の権利を侵害するのですか?

【弁護士】 国民への権利侵害がありうるとされた例は、納税義務者に対して、収税担当の者が強制的に質問し、帳簿等の物件を検査する場合が挙げられます。

第31条法廷手続きの保障
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。日本国憲法を対話で学ぼう







https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/659/082659_hanrei.pdf





法の支配(ほうのしはい、英語: rule of law)は、専断的な国家権力の支配を排し、権力で拘束するという英米法系の基本的原理である。法治主義とは異なる概念である。

「法の支配」とは、統治される物だけでなく統治する側もまた、より高次の法によって拘束されなければならないという考え方である[1]大陸法的な法治主義とは異なり、法の支配では法律をもってしても犯しえない権利があり、これを自然法憲法などが規定していると考える[1]。法の支配における「法」[注釈 1] とは、全法秩序のうち、「根本法」と「基本法」のことを指す[2]
法の支配は、歴史的には、中世イギリスの「法の優位」の思想から生まれた英米法系の基本原理である[3]
法の支配は、専断的な国家権力の支配、すなわち人の支配を排し、全ての統治権力を法で拘束することによって、被治者の権利ないし自由を保障することを目的とする立憲主義に基づく原理であり、自由主義民主主義とも密接に結びついている[3]
法の支配は、極めて歴史的な概念で、時代や国、論者により異なる様相を呈する多義的な概念である点に留意が必要である[3]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E3%81%AE%E6%94%AF%E9%85%8D
法の支配
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

https://web.archive.org/web/20060304025730/http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/jinbun/htm/pdf/s14.pdf#page=75





ミランダ警告(ミランダけいこく、英語: Miranda Admonition または Miranda warning)とは、アメリカ合衆国において、アメリカ合衆国憲法修正第5条自己負罪拒否特権に基づいて米国連邦最高裁が確立した刑事司法手続の一つで、後述する各項目の告知が被疑者に対してされていない状態での供述(自白)は、公判で証拠として用いることができないとする原則である。日本語では、「権利の告知(権利告知)」、ミランダ・ルールミランダ準則ミランダ法則などと訳される。

内容[編集]

アメリカにおいては、身体の拘束下にある被疑者に尋問を行う際、一般的にミランダ警告として概ね次のような事項を告知しなければならない[1]。ミランダ警告がない状態でなされた被疑者の供述は、公判上の争点(case in chief)の立証に用いることができない。You have the right to remain silent.(あなたには黙秘権がある。)
Anything you say can and will be used against you in a court of law.(あなたの供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる場合がある。)
You have the right to have an attorney present during questioning.(あなたは弁護士の立会いを求める権利がある。)
If you cannot afford an attorney, one will be provided for you.(もし自分で弁護士に依頼する経済力がなければ、質問に先立って公選弁護人を付けてもらう権利がある。)


さらに、「あなたはいつでもこの権利を用いることができ、質問に答えず、また供述をしないことができる。(You can decide at any time to use these rights and not answer questions or make a statement.)」や「あなたはこの取調べをいつでも打ち切る権利がある(You have the right to terminate this interview at any time.)との警告が付け加えられることもある[1]

第1項(黙秘権)の告知は最も重要であり、常に最初になされる。

運用[編集]

詳細は「ミランダ対アリゾナ州事件」を参照

ミランダ警告の原則を確立したのは、ミランダ対アリゾナ州事件[注釈 1]アリゾナ州において発生した、メキシコ移民アーネスト・ミランダによるとされた誘拐・婦女暴行事件)である。同事件では州裁判所にて有罪判決が下ったが、1966年に上告審において連邦最高裁判所が示した判決(執筆者は時の最高裁長官アール・ウォーレン)では、黙秘権・弁護人選任権の告知なしでの自白を証拠とすることには問題があったとされ、原判決が破棄され裁判のやり直しが命じられた[注釈 2]

この判決が確定して以後、法執行官は、拘束下にある被疑者に対して取調べを行う際には、ミランダ警告の各項目を通告することが必要となった。なお、同判例によっては逮捕時に警告をすることは必要とされていない。

ミランダ警告に定まった様式はなく、各自治体警察警察官・法執行官によって読み上げられる内容はさまざまである。

アメリカの刑事司法実務ではこの警告が与えられたか否かが厳しくチェックされる[3]。もっとも、大半の事件においてはこれらの権利は被疑者によって放棄(英語: waiver)されることが通例となっており、ミランダ警告が形骸化しているとの指摘も多い[4]。また、ミランダ原則に例外を設ける判例も出されている(例えば、1984年に出された判決[5]では、公共の安全に関わる場合にはミランダ警告なしで得られた供述でも例外的に証拠として採用できると判断された[6]。)。

ミランダ警告を与えられた後に自己負罪拒否特権が放棄された場合は、厳密な手続を履践した後の自白であることを理由に、日本において必要とされるような補強証拠を必要とすることもなく、犯罪事実の認定に利用可能となる[3]

日本におけるミランダ警告[編集]

詳細は「黙秘権#日本」を参照

日本においては、日本国憲法第38条黙秘権を保障しているが、日本にはミランダ警告に相当する制度や判例は存在しない[7]

憲法第38条の規定を受け、刑事訴訟法第198条2項は取調べに際してあらかじめ黙秘権を告知することを定めているが、当該告知の義務が生じるのは検察官検察事務官司法警察職員が取調べを行う時とされており、法律上逮捕時に警告を与える義務を課す規定はない。

大衆文化における普及[編集]

アメリカの大衆文化[編集]

判決が確定した後、アメリカでは、一般大衆向けのテレビドラマ等においても逮捕前にミランダ警告を読み上げるシーンが盛り込まれるようになった。権利告知の場面だけでなく、警告後に黙秘権や弁護人選任権の行使があった場合には直ちに取調べが中止される場面も頻繁に描写されており、ミランダ警告はアメリカの大衆文化となっているとの指摘もある[8]。映画『ダーティハリー』(1971年)では、逮捕時にミランダ警告が無かったことが指摘され、結果として凶悪犯が放免された後に再犯を起こす。
映画『レッドブル』(1988年)では、ソ連人の捜査官が強引に取り調べを行おうとした際、同行していたアメリカ人の刑事が「この国にはミランダ警告というルールがあり、遵守しなければ犯罪者に手を触れることもできない」と諭したところ、「非効率なルールだ」と反論されるシーンがある。
特捜刑事マイアミ・ヴァイス』のサウンド・トラック4曲目「VICE」に、スクリプトとして取り入れられている。
CSI:科学捜査班』、『LAW & ORDER』シリーズでは、逮捕前に必ずミランダ警告が行われている(時間の関係で第1項の黙秘権の告知以外は省略されることもある)[8]


日本の大衆文化[編集]

日本においては、黙秘権や弁護人選任権の議論は学界の中にとどまっており、一般大衆向けの娯楽作品ではあまり見られない。この点においてアメリカとの差は大きい。その背景には、日本の最高裁判例は違法収集証拠排除法則について消極的であるなど、アメリカの最高裁に比して法の支配について不徹底であることがあると指摘される[9]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]^ アメリカにおいては、当事者主義的訴訟構造のもと、刑事事件も原告・被告の対立として表現される。
^ なお、やり直し裁判においては自白以外の証拠だけでも犯罪事実の立証は十分とされ、結局ミランダの有罪判決は確定している。日本では「ミランダは無罪になった」との見方も一部にあるが、誤りである[2]


出典[編集]^ a b 梅山香代子 2002, pp. 132–133.
^ 小早川義則 2013, pp. 80–81.
^ a b 梅山香代子 2002, p. 133.
^ 岩崎和成 (pdf). 取調べの録音・録画は弁護人立会いに優るか (Report) 2023年3月16日閲覧。.
^NEW YORK v. QUARLES(1984)”. findlaw. 2021年8月17日閲覧。
^ 小早川義則 2013, pp. 81–82.
^ 梅山香代子 2002, p. 133.
^ a b 小早川義則 2013, pp. 66–67.
^ 小早川義則 2013, pp. 76–77.


参考文献[編集]梅山香代子「刑事訴訟手続きにおける人権保障の日米比較」『東洋学園大学紀要』第10巻、東洋学園大学、2002年3月、125-136頁、doi:10.24547/00000380ISSN 0919-6110
小早川義則「アメリカ法研究の意義と課題─刑事手続法を中心に─(法学部開設10周年記念号)」『桃山法学』20・21、桃山学院大学、2013年3月、59-92頁、ISSN 1348-1312NAID 110009900640


関連文献[編集]渡辺修『被疑者取調べの法的規制』三省堂、1992年6月。ISBN 4-385-31330-X
小早川義則『ミランダと被疑者取調べ』成文堂、1995年1月。ISBN 4-7923-1351-1
ミランダの会 著、ミランダの会 編『ミランダの会と弁護活動 - 被疑者の権利をどう守るのか?』現代人文社、1997年7月。ISBN 4-906531-29-6


関連項目[編集]ミランダ対アリゾナ州事件
権利章典 (アメリカ)#修正第5条
自己負罪拒否特権
黙秘権


外部リンク[編集]FindLaw for Legal Professionals: MIRANDA v. ARIZONA, 384 U.S. 436 (1966)(英語)(全文)
Miranda's Miranda v. Arizona, Ernesto Miranda, Miranda Rights and Related Cases(英語)
ミランダの会(2001年4月28日のアーカイブ) - 日本でミランダルールの確立と実現を目指す弁護士と研究者の任意団体。ページの上部にある内部リンク「ミランダの会とは」に米国の刑事が携帯するミランダカード (Miranda Warning Card - Miranda Admonition) 実物写真を掲示している
日米の刑事事件取り扱いの相違 松山大学法学部教授(当時)田村譲(archive.org) - 「ほどほどに疑う」米国と「疑わしきは罰する」日本の根本的な相違を指摘する。日米間では特に起訴前の被疑者の権利が大きく異なるとする。
日本弁護士連合会「人権擁護大会宣言」: 被疑者の弁護活動強化のための宣言(1991年11月15日)


典拠管理: 国立図書館

ドイツ




この項目は、分野に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めていますP:法学/PJ:法学)。

カテゴリ:アメリカ合衆国の刑事証拠法
未決拘禁
捜査
エポニム
アール・ウォーレン

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E8%AD%A6%E5%91%8A
ミランダ警告出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


https://caselaw.findlaw.com/court/us-supreme-court/384/436.html











被疑者の弁護活動強化のための宣言

本文

われわれは、1989年の人権擁護大会で、憂慮すべき状況にある刑事手続を抜本的に改革するために全力をあげて取り組むとの「刑事訴訟法40周年宣言」を採択し、今日、この課題を司法改革運動の重要な一環として位置づけている。




 われわれは、この宣言をうけて、刑事弁護センターの設置、当番弁護士制度の導入など、少年事件を含む刑事手続の改革・改善をめざしてきたが、この活動をさらに充実・発展させ、2000年までに刑事手続を抜本的に改革することを目標として設定し、その実現のために全力を尽くす。




 そのために、刑事手続全体のあり方を左右する被疑者段階の弁護活動を徹底的に充実・強化することが刑事手続全体の改革・改善を促進する鍵であると位置づけ、まず当面、以下の被疑者段階の弁護活動上の課題に国民の理解と支持を得ながら重点的に取り組む。


被疑者が早期にかつ容易に弁護士に相談・依頼ができるように、被疑者の弁護人依頼権の周知徹底と被疑者「国・公」選弁護人制度の実現をめざす。
被疑者に自白を強要する代用監獄の廃止をめざすとともに、その間においても勾留場所に関する準抗告などを活用して、その事実上の機能停止をめざす。
拘束されている被疑者が弁護人と速やかに、必要・十分な相談ができる接見交通権の確立をめざす。
黙秘権、取調拒否権等を徹底的に活用して、弁護人の取調立会権を確立し、自白獲得目的の取調の禁止をめざす。
逮捕・勾留・保釈の裁判の形骸化を是正し、不当な身柄拘束を廃絶することをめざす。





以上のとおり宣言する。




1991年(平成3年)11月15日
日本弁護士連合会




理由

1. われわれは、1989年、松江市で行われた第32回人権擁護大会において、憂慮すべき状況にある刑事手続(少年事件を含む)を抜本的に見直し、あるべき刑事手続の実現に向けて全力をあげて取り組むとの「刑事訴訟法40周年宣言」を採択した。その後、当連合会は1990年及びその翌年の各定期総会において、司法改革に関する宣言を行い、今日、刑事手続の改革を司法改革運動の重要な一環として位置づけている。




2. 前記松江宣言をうけて、当連合会は、1990年4月1日、刑事弁護センターを設置し、各単位会でも、刑事弁護センターないし刑事弁護委員会を設置し、7月1日現在その数は24会に及び、14会が準備中である。




また、昨年9月には大分県弁護士会で弁護人推薦制(PANEL制)の当番弁護士制度、同年12月には福岡県弁護士会で当番制(ROTA制)の当番弁護士制度が発足したが、その後各地の単位会でも同種の制度が発足し、本年6月末現在、実施中が22会、準備中が9会、(但し、1会は両者いずれかを準備中のため重複している)である。さらに、本年7月13日に行われた国選弁護シンポジウムでは、当番弁護士制度の発展を基本に据えた被疑者「国・公」選弁護人制度の具体案の検討がなされるに至った。




3. 第32回人権擁護大会の第1分科会基調報告書は、「直ちに刑事手続の改善に取り組み、制度的な問題については、今後10年以内に改革を実現する気迫で取り組もうではないか。」(204頁)と運用の改善及び制度の改革を今世紀に実現するよう強調している。改革の適切なプログラムを提示し、われわれが国民とともに必ず実現するという熱意を持って行動すればこの課題を実現することは不可能ではない。




4. わが国の刑事手続の現状の特徴的問題点は捜査段階における勾留を利用した自白の獲得、そして公判段階における自白の偏重にある。勾留が自白獲得目的のために利用できなくなれば、必然的に、自白調書偏重の公判手続は変更せざるを得なくなる。従って、被疑者の身柄拘束とこれを利用した取調の改善と改革は、必然的に刑事手続全体の改善と改革に迫っていくことになる。




刑事手続の抜本的改革を進めるために、まず当面、以下の被疑者段階の弁護活動上の課題に重点的に取り組むことにする。




(1) 被疑者が早期にかつ容易に弁護士に相談・依頼ができるように、被疑者の弁護人依頼権の周知徹底と被疑者「国・公」選弁護人制度の実現をめざす。




われわれは今後とも当番弁護士制度の充実・発展を期して努力していくものであるが、これが効率的に機能するためには、何よりも被疑者に弁護人選任権が告知される際、弁護人選任の意義、方法及び当番弁護士制度の存在とその内容を被疑者に分かりやすく説明されることが必要である。




われわれは日弁連はじめ各地の弁護士会において、広く一般に弁護人選任権が周知徹底されるように広報、宣伝活動を行うと共に、併せて、警察署、検察庁、裁判所等において、被疑者の目につきやすい場所に当番弁護士制度など弁護人選任権に関する弁護士会作成のポスターの掲示、パンフレットの備置、及び、これらの当局においても弁護人選任権の告知を分かりやすく十分理解できる内容で行うように、要請する。




被疑者段階において、国費又は公費で弁護人を付ける被疑者「国・公」選弁護人制度を実現することは、憲法第34条、14条、37条3項に、そしてまた、国際人権法すなわち、「国際人権規約B規約」、「国連被拘禁者人権原則17」、「弁護士の役割に関する基本原則」、「少年司法運営に関する国連最低基準規則」等の要請に応える途でもある。




なお、本宣言において被疑者「国・公」選弁護人制度とし、被疑者国選弁護人制度としなかったのは、現行の国選弁護人制度における選任権者、費用の負担者、運営の中心などの問題点を考慮し、より豊かな構想を実現するため、あえて現行の国選弁護人制度と区別するためにこのような呼称を採用した。




(2) 被疑者に自白を強要する代用監獄の廃止をめざすとともに、その間においても勾留場所に関する準抗告などを活用して、その事実上の機能停止をめざす。




 いわゆる拘禁二法案は、この「代用監獄」の「代用制」を取り払い、警察監獄に格上げするものであり、当連合会は、その成立の阻止を求めて運動してきたが、さらに一歩進めて、本年4月、代用監獄廃止要綱を策定し、公表した。




 この要綱は、2000年までに、代用監獄を廃止し、その間の暫定措置として、死刑・無期など重罪事件、否認、黙秘又は争っている事件、女子及び少年などについては代用監獄収容を禁止し、被勾留者に新たに移監請求権を付与し、さらに、取調と身柄管理の分離・監督の実をはかる諸規定を用意している。




 われわれは、拘禁二法案の廃案、代用監獄の廃止をめざすとともに、代用監獄の廃止に至るまでは、代用監獄への勾留の排除を求めて、勾留場所に関する準抗告の申立、裁判官あるいは検察官に対する移監申立等、さらに、前記代用監獄廃止要綱の提起する諸方策などにつき、憲法、国際人権法等の諸規定を活用して弁護活動を行い、代用監獄の事実上の機能停止をめざす。




(3) 拘束されている被疑者が弁護人と速やかに、必要かつ十分な相談ができる接見交通権の確立をめざす。




当連合会の接見問題に対するこれまでの取り組みにより、接見指定に関して、不十分ながらも一定の前進をみた。しかし、捜査の都合、特に被疑者の取調を理由として接見の時期、時間等の制限は解消していないし、施設の管理運営、主として、執務時間外を理由としての接見の制約も解消していない。弁護人が接見に来ると捜査を中止して接見を優先させる、あるいは夜間でも接見できるという欧米の接見制度と比較するとわが国は極めて不十分、不完全である。




しかも、政府は拘禁二法案において拘置所、警察留置場ともに接見を制限する規定を導入して、権力的に問題を解決しようとしている。




われわれは、あくまでもこのような制限を撤廃させ、自由な接見交通権を確立しなければならない。




そこで、個々の接見の妨害に対しては、接見指定・接見禁止に対する準抗告、接見制限に対する国家賠償等を活用するとともに、拘禁二法案の成立を阻止し、国際水準に合致した監獄法を制定するなど、接見の障害排除のために徹底的に闘う。




(4) 黙秘権、取調拒否権を徹底的に活用して、弁護人の取調立会権を確立し、自白獲得目的の取調の禁止をめざす。




わが国の刑事手続の特徴的な問題点は前述のように勾留を利用して自白獲得の目的で捜査が行われていることである。これは「抑留、拘禁されている状況を捜査に不当に利用してはならない。」(国連被拘禁者人権原則21)に明らかに反する。




弁護人が取調に立会うことは、自白獲得目的のための取調を排除するには極めて有効である。憲法第37条3項は、「被告人の弁護人依頼権」を保障しているが、この英文の草案は、被疑者をも含む広い意味に用いられていたこと、また、弁護人に依頼する権利は、弁護人から援助を受ける内容を含むものであることなどから、弁護人の取調立会権を憲法上の権利として根拠づけることができる。アメリカではミランダ法則により身柄拘束中の被疑者に対する尋問には弁護人の立会権を保障し、立会権を侵害した自白は証拠から排除されることが確立している。しかし、わが国でこれを認めさせることは容易ではない。




だが、被告人には黙秘権がある。そして有力な多数の学説が主張するように、被疑者には取調を受忍する義務もない。そこで、弁護人等の支援の下に、弁護人の立会を認めるまでは、取調を拒否する、あるいは、黙秘権を行使するということを被疑者に実践させることにより、弁護人の取調立会権をかちとることが可能になる。少年事件で警察の取調に弁護人の立会を認めさせた例や、公安労働事件で、出頭拒否や、黙秘権を徹底的に行使することによって、弁護人の立会が認められた例もある。われわれはこれらの先例を教訓として、国民の理解と支持の下に実践する中で取調立会権を確立することをめざす




(5) 逮捕・勾留・保釈の裁判の形骸化を是正し、不当な身柄拘束を廃絶することをめざす。




わが国においては、A. 勾留決定における司法的抑制が形骸化している、B. 勾留理由開示制度が機能せず、C. 起訴前保釈制度がない等により、恣意的なまたは不当な逮捕・勾留が継続されていると指摘されている(第31回日弁連人権擁護大会第1分科会基調報告書35頁)。




このような現状を打破するには、第1に、逮捕・勾留・保釈の各段階で弁護人があらゆる法的手段を駆使して不当な身柄拘束を防止するために闘うことが必要である。第2に、勾留裁判において被疑者・弁護人が関与できるように制度を改革することが必要である。第3に、勾留・保釈却下を濫用させないためには、勾留要件を再検討し、例えば、証拠隠滅は勾留事件から削除すること等の改革が必要である。第4に、起訴前保釈制度を導入し、勾留機関の短期化をめざすことも必要である。われわれは以上の諸方策を実行して、不当な身柄拘束を廃絶することをめざす。




5. われわれは、これらの要請に反して採取された証拠については、公判段階において違法証拠としてその排除に務め、「調書裁判」といわれる実態を打破するなど、現状の改善・改革のために刑事手続全体において努力するものであることはいうまでもない。




また、外国人、少年、障害者などが被疑者・被告人となっている事件においては、その刑事手続上のハンディキャップに心して、弁護活動をなし、かつ改善・改革に取り組む。 われわれは、弁護活動において、世界人権宣言、国際人権規約、その他人権関係条約・国連決議などの国際人権法を活用し、国際学会決議あるいは英米各国の刑事手続の実情等を引用、紹介することにより、わが国の刑事手続を国際水準まで引き上げる努力をする。




6. 以上のとおり、われわれは2000年までにわが国の刑事手続の抜本的改革を実現するために全力を挙げることを確認し、そのために、当面、被疑者段階の弁護活動上の重点的な課題を設定し、日弁連は国民の理解と支持を得ながら全力を挙げてその改善と改革に取り組むとともに、同時に、弁護人は担当している個々の事件においてあらゆる法的手続等を駆使して、あるべき刑事手続の実現に向けて努力する。




よって、本宣言を提案する。

https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/1991/1991_4.html
HOME>公表資料>人権擁護大会宣言・決議集>year>1991年>被疑者の弁護活動強化のための宣言


https://human.hirosaki-u.ac.jp/faculty/wp-content/uploads/site/research23/soc1.pdf









違法収集証拠排除法則(いほうしゅうしゅうしょうこはいじょほうそく)とは、証拠の収集手続が違法であったとき、公判手続上の事実認定においてその証拠能力を否定する刑事訴訟上の法理である。略して排除法則とも呼ばれる。

概説[編集]

供述証拠の場合、収集過程に違法性があれば、虚偽の供述が疑われるなど、証明力に影響を及ぼすことがある[1]

一方、非供述証拠の場合には押収手続に違法性があっても、その押収物の証明力自体に影響を及ぼすとは考えにくい[1]。このような非供述証拠の証拠能力を否定することは、実体的真実主義に反するとも考えられ、コモン・ローなどでは、その証拠能力は否定されなかった[1]。しかし、19世紀後半にアメリカ合衆国で違法な押収物の排除法則が確立された[2]

排除法則の根拠としては、これまで主として規範説・司法の廉潔性説・抑止効説の3つの仮説が唱えられてきた。

規範説違法収集証拠の利用は、法の適正手続に反する。司法の廉潔性説違法収集証拠の裁判手続での利用は、司法に対する国民の信頼を裏切るものである。抑止効説将来の違法捜査の抑止のためには、違法収集証拠を排除することが、最善の方法であるとするものである。

今日では、抑止効説を主流としながら、これら3つの説が総合的に排除法則の根拠をなしていると考えられている。

米国における排除法則[編集]

アメリカ合衆国では、もともとコモン・ローのもと収集手段に違法性の瑕疵があっても、原則として事件に関連性の認められる証拠であれば、採用を許容する証拠法則がとられていた[2]

しかし、1886年のボイド対合衆国事件(en: Boyd v. United States)で、アメリカ合衆国憲法修正第4条(不合理な捜索、逮捕、押収の禁止)に違反して、不法に押収された証拠を採用することは、アメリカ合衆国憲法に違反すると判断された(合衆国最高裁判所判決では、修正第4条と不可分の関係で修正第5条も引用された)[3]

また、1914年のウィークス対合衆国事件(en: Weeks v. United States)では、不当に押収された物を証拠として採用することを認めれば、憲法修正第4条が無意味になるとして、証拠から排除した[3]。これらの判例は、連邦刑事規則第41条において明文で規定されることとなった[3]

日本における排除法則[編集]

供述証拠に関しては強制等による自白の証拠能力を否定する規定(日本国憲法第38条2項 、刑事訴訟法319条1項)がある。これに対して違法に収集された非供述証拠の証拠能力に関する明文規定はなく、排除法則は判例によって採用されたものである。なお、上記の憲法38条2項及び刑事訴訟法319条1項を排除法則の特別規定とする見解も主張されている。

根拠規定[編集]

非供述証拠の排除法則は、前述したように明文規定はないものの、憲法31条・35条や刑事訴訟法218条1項 の趣旨に由来するものであるといえる。憲法31条は適正手続の保障を定めている。これは同時に、人身の自由についての基本原則とされ、公権力を手続的に拘束し、人権を手続的に保障することを目的とした条文であるとされている。
憲法35条は令状主義をその趣旨とし、裁判官による令状がなければ、住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることはない旨を保障している。


すなわち、言い換えるならば、排除法則は日本国憲法の定める適正手続と令状主義の要請といえる。

このうち、憲法31条を根拠とするのが田宮説、33条・35条を根拠とするのが渥美説である。

適用基準[編集]

違法収集証拠の排除の基準には絶対的排除説と相対的排除説の二つの考えがある。

絶対的排除説絶対的排除説は、証拠収集手続の違法の有無を証拠能力否定の基準とするものである。この説は、排除法則の根拠に関する規範説に親しむ基準といえる。これに対しては、些細な違法があったにすぎない場合にも一律に証拠能力を否定することは、真実発見を困難にし、現実的でないとする批判や、裁判所が証拠収集の違法認定に対して慎重になりやすくなるとの批判などがある。相対的排除説相対的排除説は、証拠収集手続に憲法違反があった場合は絶対的に証拠を排除するが、それ以外の場合には司法の廉潔性や将来の違法捜査の抑止の観点から、諸般の事情を利益衡量して排除を決定すべき、とする。すなわち、手続違反の程度・捜査官の有意性・証拠の重要性・手続違反と証拠の因果関係・事件の重大性などを総合的に考慮した上で、証拠能力を判断すべきであるとしている。これに対しては、事件の重大性や証拠の重大性を考慮すれば、処罰の必要を重視することになり、証拠が排除されないことになるとの批判や、柔軟な排除基準を採ることは、かえって司法に対する国民の信頼を損なうとする批判などがある。しかし、排除法則の根拠も総合的に考慮すべきであるから、その基準も利益衡量とならざるをえない点、および裁判所による捜査手続の違法認定は、仮に証拠の排除がなされなかったとしても、判例による捜査法の形成という一定の効果をもたらしうるので、違法宣言の出しやすい基準が望ましい点などから相対的排除基準がより妥当と考えられる。

最高裁判例が示した基準は「令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定される」というものであり、相対排除説の立場をとっているといえる。

判例[編集]

排除法則が日本の最高裁判例で採用されたのは、昭和53年(1978年)9月7日のことである。それまでの判例は、押収物は押収手続が違法であったとしても物自体の性質、形状に変異を来すはずがないから、その形状等に関する証拠たる価値に変わりはないというものであった[4]

しかし、学説上は、アメリカ法の影響を受け、少なくとも収集手続に重大な違法がある証拠の証拠能力は否定すべきとする見解が有力になっていた。また最高裁昭和36年6月7日大法廷判決[5]では、15人中6名の裁判官が反対意見として、理論的に違法収集証拠排除法則を認めた。下級審においても、違法収集証拠排除法則を肯定する裁判例が増えてきていた。

最高裁判所判例事件名覚せい剤取締法違反、有印公文書偽造、同行使、道路交通法違反事件番号昭和51(あ)865昭和53年9月7日判例集刑集第32巻6号1672頁裁判要旨

一 (略)
二 (略)
三 証拠物の押収等の手続に憲法三五条及びこれを受けた刑訴法二一八条一項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるべきである。


四 職務質問の要件が存在し、かつ、所持品検査の必要性と緊急性が認められる状況のもとで、必ずしも諾否の態度が明白ではなかつた者に対し、令状主義に関する諸規定を潜脱する意図なく、また、他に強制等を加えることなく行われた本件所持品検査(判文参照)において、警察官が所持品検査として許容される限度をわずかに超え、その者の承諾なくその上衣左側内ポケツトに手を差し入れて取り出し押収した点に違法があるに過ぎない本件証拠物の証拠能力は、これを肯定すべきである。最高裁判所第一小法廷裁判長岸上康夫陪席裁判官団藤重光 藤崎萬里 本山亨 岸盛一意見参照法条 憲法31条,憲法35条,警察官職務執行法2条1項,刑訴法1条,刑訴法218条1項テンプレートを表示

このような状況の下、最高裁は昭和53年9月7日第一小法廷判決において、初めて排除法則を理論的に認めた。同事案においては具体的な事情に照らし証拠排除までは認められなかったが、最高裁平成15年2月14日第二小法廷判決[6]においては、排除法則を適用した初めての証拠排除が行われた。

議論[編集]

排除法則は強制処分の事後審査において重要な機能を果たしていると評される。しかしながら、現実には前掲昭和53年最判の理論に従えば、その機能を果たすことは難しいとされる。すなわち、同最判が定立した基準に照らせば、排除法則が機能するのは違法な手続が捜査官によって繰り返されるという異常な事態に限定されてしまい、通常の場面では排除法則は機能しないことになるのである[7]

脚注[編集]

[脚注の使い方]^ a b c 熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系I証明』1970年、p.193
^ a b 熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系I証明』1970年、p.194
^ a b c 熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系I証明』1970年、p.195
^  最高裁判所第三小法廷判決 昭和24年12月13日 集刑第15号349頁、昭和24(れ)2366、『強盗未遂、銃砲等所持禁止令』「違法な押收手續により押收された物件の證據能力」、“たとえ押收手續に所論の様な違法があつたとしても押收物件につき公判迄において適法の證據調が爲されてある以上(此のことは記録によつて明である)これによつて事實の認定をした原審の措置を違法とすることは出來ない、押收物は押收手續が違法であつても物其自体の性質、形状に變異を來す筈がないから其形状等に關する證據たる價値に變りはない、其故裁判所の自由心證によつて、これを罪證に供すると否とは其專權に屬する。”。
^ 最高裁判所大法廷判決 昭和36年6月7日 刑集第15巻6号915頁、昭和31(あ)2863、『麻薬取締法違反』「 一 被疑者の緊急逮捕に着手する以前その不在中になされた捜索差押は適法か
二 右捜索差押調書および捜索差押にかかる麻薬に対する鑑定書の証拠能力」、“一 司法警察官の職務を行う麻薬取締官が麻薬不法譲渡罪の被疑者を緊急逮捕すべくその自宅に赴いたところ、被疑者が他出中であつたが、帰宅次第逮捕する態勢をもつて同人宅の捜索を開始し、麻薬を押収し、捜索の殆んどを終る頃帰宅した同人を適法に緊急逮捕した本件の場合の如く、(判文参照)、捜索差押が緊急逮捕に先行したとはいえ、時間的にはこれに接着し、場所的にも逮捕の現場でなされたものであるときは、その捜索差押を違憲違法とすべき理由はない。
二 右麻薬取締官作成の右捜索差押調書および捜索差押にかかる右麻薬に対する鑑定書につき、被告人および弁護人が第一審公判廷において、これを証拠とすることに同意し、意義なく適法な証拠調を経たときは、右各書面は、捜索差押手続の違法であつたかどうかにかかわらず証拠能力を有する。”。
^ 最高裁判所第二小法廷判決 平成15年2月14日 刑集第57巻2号121頁、平成13(あ)1678、『 覚せい剤取締法違反,窃盗被告事件』「1 逮捕当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力が逮捕手続に重大な違法があるとして否定された事例
2 捜索差押許可状の発付に当たり疎明資料とされた被疑者の尿に関する鑑定書が違法収集証拠として証拠能力を否定される場合において同許可状に基づく捜索により発見押収された覚せい剤等の証拠能力が肯定された事例」、“1 被疑者の逮捕手続には,逮捕状の呈示がなく,逮捕状の緊急執行もされていない違法があり,これを糊塗するため,警察官が逮捕状に虚偽事項を記入し,公判廷において事実と反する証言をするなどの経緯全体に表れた警察官の態度(判文参照)を総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を没却するような重大なものであり,本件逮捕の当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力は否定される。
2 捜索差押許可状の発付に当たり疎明資料とされた被疑者の尿に関する鑑定書が違法収集証拠として証拠能力を否定される場合であっても,同許可状に基づく捜索により発見され,差し押さえられた覚せい剤及びこれに関する鑑定書は,その覚せい剤が司法審査を経て発付された令状に基づいて押収されたものであり,同許可状の執行が別件の捜索差押許可状の執行と併せて行われたものであることなど判示の事情の下では,証拠能力を否定されない。”。
^ 内田博文 2016, p. 112.


参考文献[編集]田口守一 『刑事訴訟法[第四版補正版]』 弘文堂、2006年。
渥美東洋 『刑事訴訟法〔新版補訂〕』 有斐閣、2001年。
井上正仁編 『別冊ジュリスト刑事訴訟法判例百選[第八版]』 有斐閣、2005年。
内田博文 著、川崎英明・古賀康紀・小坂井久・田淵浩二・船木誠一郎 編『「強制処分」概念の再構成について(刑事弁護の原理と実践【美奈川成章先生・上田國廣先生古稀祝賀記念論文集】)』現代人文社、2016年、101-118頁。ISBN 9784877986599





関連項目[編集]ダーティハリー - 主人公ハリーが犯人から自白させたやり方が違法とされた理由。
職務質問
おとり捜査
泳がせ捜査
毒樹の果実
ミランダ警告

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%95%E6%B3%95%E5%8F%8E%E9%9B%86%E8%A8%BC%E6%8B%A0%E6%8E%92%E9%99%A4%E6%B3%95%E5%89%87
違法収集証拠排除法則出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』







第31条 「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」




 明治憲法下においては、官憲などによる人身の自由に対する侵害が存在しました。 そのような歴史を踏まえ、 一般的に人身の自由を保障する規定を置きました。 なお、法律で規定する刑罰は過度に重いものであってはならず、均衡のとれた相当性があるものでなければなりません。また、その内容が明確に定められていなければなならず、拡張解釈や類推解釈ができてしまうような抽象的な規定は許されません。




第32条 「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」




 国民の基本的人権が侵害された場合に、すべての国民が政治権力から独立した公平な司法機関に対して救済を求めることができ、 司法機関以外の機関から裁判されることがないことを定めています。旧軍法会議などの「特別裁判所」は原則として認められません。「 裁判を受ける権利 」 の裁判とは、行政、民事、刑事事件のすべての裁判をいいます。




※終審としてではなく、前審として行政機関が裁判を行うことは可能です。




※裁判官弾劾裁判所は「特別裁判所」です。




第33条 「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、 且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」




 本条は、逮捕につき、逮捕の必要性を事前に司法官憲に判断させ、 その判断に基づいて発せられる令状によらなければ逮捕されないという原則 ( 令状主義の原則 ) を定め、 逮捕の必要性が高く、逮捕権濫用の恐れの少ない 「 現行犯逮捕 」 を令状主義の例外として規定しています。 現行犯の場合は令状がなくても、一般人が犯人を逮捕することもできます。(刑事訴訟法第213条)




 なお、刑事訴訟法で認められている緊急逮捕について、判例は違憲ではないとして認めています。




 緊急逮捕とは、一定の重大な犯罪につき、犯行の疑いが十分にあり、急速を要し、逮捕状を求めることができない場合に、 逮捕後直ちに逮捕令状を求めることを条件に令状によらずに逮捕を行うこと。(刑事訴訟法第210条)




第34条 「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。 又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、 直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」




 本条は、逮捕した身柄を拘束し続けるにあたって、拘束される者に保障されるべき権利を定めています。
 「 抑留 」とは、比較的短期な一時的身体の拘束をいい、 「 拘禁 」 とは、比較的長期な継続的身体の拘束をいいます。長期にわたり、特に拘束の度合いの強い 「 拘禁 」については、要求があればその拘禁の理由を公開の法廷で示す必要があり、正当な理由がなければ直ちに釈放しなければなりません。




第35条 「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、 第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」




  2 「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。」




 本条は、私的生活の基盤である、「 住居 」等の不可侵を保障しています。捜索、押収は、 捜索する場所、押収する物が明示された各別の令状によらなければならず、令状は 「 正当な理由 」に 基づき 「 権限を有する官憲 」によって発せられなければならず、てきとうな推量による捜索は許されません。




 また、1項では、令状主義の例外として、 「 第33条の場合 」 を挙げています。 つまり、憲法第33条よって適法に逮捕される場合 ( 現行犯逮捕、緊急逮捕に限らず、令状逮捕の場合も含みます )には、令状によることを要しません。
 本条に絡み、警察官による所持品検査が許されるのかという問題がありますが、 判例は、 「 所持品検査は、職務質問の付随行為として、相当と認められる限度において許される 」 としています。




 最判昭53.6.20 松江相銀米子支店強奪事件




第36条 「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」




 憲法第36条は、拷問や残虐な刑罰を絶対的に禁じることを、て宣言しています。  判例は、 「 残虐な刑罰 」 とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を意味するとしています。 「 死刑 」 は残虐な刑罰に当たらないとしています。 判例によれば、 「 刑罰としての死刑そのものが、 一般的には直ちに36条にいういわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。 ただ、死刑といえども、 他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて、 人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、もちろんこれを残虐な刑罰といわねばならない。 」 としています。


 最判昭23.3.12 死刑制度合憲判決事件
 


※なお、刑の執行については監獄法に規定されています。



第37条 「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」




   2  「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、 公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。」




   3  「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。  被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」




 本条は、すべての刑事被告人に対して、公平で迅速な裁判所の公開裁判を受ける権利を保障しています。  憲法第32条においても裁判を受ける権利が保障されていますが、 公平、迅速、公開性の要求される刑事事件の裁判につき、特に明らかにしたものです。
 3項では、刑事被告人に弁護人依頼権を保障し、経済的な理由や、あまりにも非人道的な事件のために引き受け手がないなどの理由により、被告人自ら弁護人を依頼することができないときは、国選弁護人が付せられることを定めています。




第38条 「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」




    2 「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、 これを証拠とすることができない。」




    3 「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」




 本条は、自白偏重による人権無視を防止するために規定されています。  2項では、信憑性が疑わしい自白を一切証拠として用いないこととし、3項においては、 架空の自白によって罪を着せられることを防止し、捜査機関が自白の獲得に際して不当な圧迫を加えることを予防しています。
 具体的には刑事訴訟法で規定されており、同法319条1項では、 「 強制、拷問又は脅迫による自白、 不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。 」 と定められています。




第39条  「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。  又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」




 実行時の罰則より重い罰則を定め処罰すること、実行時に違法とされていたが罰則がなかった場合に、後に罰則を定めて処罰すること、なども禁止されます ( 遡及処罰の禁止 ) 。 「 重ねて刑事上の責任を問われない 」 とは、同じ行為について重ねて処罰されないことを意味します。 (一事不再理の原則)
 例えば、無罪の判決が最終的に確定した後に、新たに有罪を証明することができる証拠が見つかったとしても、 改めて裁判を行うことは許されません。
 




第40条 「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」




 本条は、刑事手続きに関する権利の保障によっても生じた、国民の不利益に対する補償を定めています。 官憲の違法行為や故意、過失に関わりなく、結果に対する補償を求めることができることが特徴です。例えば、身柄が拘束された後、嫌疑不十分で不起訴となった場合や、判決が確定し刑の執行が終わった後に、 再審によって一転無罪とされた場合などは、その違法な拘束などに対して刑事補償を求めることが可能です。
 本条の補償請求権を具体化するため、刑事補償法が制定されています

https://www.zennichi.net/b/fujimoto-takahashi/index.asp?id=142331&act_lst=detail&page=1
2018/12/25 19:08:38

憲 法 第3章 国民の権利及び義務(その4) 31条~40条

https://www.jica.go.jp/activities/issues/governance/portal/vietnam/ku57pq00002khnos-att/vnu_13.pdf



第13課 基本的人権その4-刑事被告人の権利 1 重要語句 a 適正手続の保障 人身の自由の保障の一環として、日本国憲法は、特に刑事被告 人の権利を詳細に定め、刑事被告人といえども、その人権が国家 によって不当に侵害されないようにしている。これは、人権、特 に人身の自由が、国家権力ともっとも鋭く対立する場面が刑事手 続での場であることに鑑み、かつ、歴史上行われてきた、国家権 力による恣意的な処罰や、刑事被告人に対する過酷な取り扱いな どの様々な不当な人権侵害に対する反省の上に立って、憲法が特 別な配慮をしたものといえる。憲法の規定としてこれほど詳細な 刑事被告人に対する権利保障を定めている例は少ないと言われ、 日本国憲法の特徴のひとつであると言っても過言ではない。 刑事手続に関して定めた基幹的な規定として最も重要なのは、 憲法第31条である。同条は、単純に読めば、刑罰を科すには、 必ず法律、すなわち国会の定めた狭義の法律によらなければなら ない(つまり、法律より下位の命令などで定めてはならない)、 ということだけを定めているものと読めなくもないが、現在では そのようには理解されておらず、およそ刑事実体法も含めて、刑 事手続に関する事項を定める法律自体が公平適正なものである ことも要求されていると理解するのが一般的である。この考え方 が、その源となった英米法の「法の適正手続(due process of law)」の保障の考えかたであり、憲法第31条は英米法の流れを 汲んで、このことを表わしていると考えられているのである。し たがって、憲法31条は、「法定手続の保障」と題するよりは、「適 正手続の保障」と言ったほうがよいとも考えられる。 憲法はさらに、手続面で、逮捕における令状主義(第33条)、 抑留・拘禁の際の告知・弁護人選任権・理由開示(第34条)、 住居等の不可侵・捜索の際の令状主義(第35条)、拷問の禁止 (第36条)、公平迅速な裁判を受ける権利(第37条)、自己負 罪拒否特権、自白法則(第38条)を定め、刑事実体法の面では、 残虐な刑罰の禁止(第36条)、遡及処罰・二重処罰の禁止(第 39条)などを定め、刑事被告人や受刑者を不当・不必要な人権 侵害から保護しているのである。 50 適正手続の保障は、手続が法律で定められなければならない ことのほか、①法律で定められた手続が適正であること。②適 用される実体法も法律で定められなければならないこと、③そ の実体法もまた適正でなければならないことという3つの要素 も含むものと解されている。 b 令状主義 人を逮捕したり、拘束したり、あるいはその身体や住居など を捜索したりするには「司法官憲」が発する令状(許可状また は命令状)がなければならないとするシステムのこと。ここで いう「司法官憲」が裁判官を指すことについては争いがない。 c 告知・弁護人選任権・理由開示 刑事手続に際しては、その対象となる者が、十分に防御の機 会が与えられるよう、何よりも、どのような処分がどのような 理由で自己に対してなされるのかを知らされること(告知)、専 門家である弁護人の援助が受けられること(弁護人選任権)が 重要であり、また、身柄を拘束する手続が密室で行われて、不 当な人権侵害が起きないように、その理由を公開する場をもう ける(理由開示)ことが重要と考えられており、憲法第34条 はそのことを規定している。 d 自己負罪拒否特権 「何人も、自分に対する不利益な証人となることを強制され ない」という近代刑事法の重要な原則を表わしたもの。具体的 には黙秘権、つまり、犯罪捜査機関や裁判所から求められても、 自分に不利になるようなことは言わなくてよい、特に、罪を認 めることを法律的にも、物理的にも強制されないという権利で ある。 e 自白法則 自白法則には2つの意味があり、ひとつは、①強制して得ら れた自白は裁判の証拠にできないということ、もうひとつは、 ②有罪を認定するための唯一の証拠が自白である場合、つまり、 証拠として自白しか存在せず、他の証拠が全く存在しない、と いう場合には、たとえ罪を認めていても処罰はされない、とい うことである。

https://www.jica.go.jp/activities/issues/governance/portal/vietnam/ku57pq00002khnos-att/vnu_13.pdf


https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/chosa/shukenshi054.pdf/$File/shukenshi054.pdf