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消防隊と音楽隊

サッカー界で「2対0」というスコアは最も恐れられているスコアだ。
そして、その”0”が我々を指しているとき、それは向かい風のような面をした追い風となる。

今夜、マドリーは戦況を探る間もなくヌニェスにビューティフルゴールを決められ、クルトワはカリウスばりの失態を犯した。これが最初の20分だ。

アンフィールドでのゲームはいつでも難しく、スタジアムに湧く熱気と勢いに、チャレンジャーはのぼせることが多い。まさに要塞だ。

赤い火の玉で燃え盛る要塞に、消火器を向けたのはヴィニシウスだった。
2点ビハインドの状況の中、リヴァプールがブロックを引いた状態で、彼には迷いがなかった。とりあえずシュートを放つしかないと割り切っていたのかもしれないが、ヴィニならもう一枚ドリブルで剥がしそうなところで、ファーポストを目がけた。これがマドリーの1本目の枠内シュートだった。ゴールネットが揺れた。

その15分後、また中心で踊っていたのはヴィニシウスだ。バックパスに対してアリソンまでプレスをかけたことで生まれた貪欲さで勝ったゴールだ。

そこからのマドリーは試合巧者そのもので、アンフィールドの鎮火作業は、消防隊隊長のヴィニシウスのもと、45分で終了した。

後半も、開始早々に、ミリトンがスペインから駆け付けた音楽隊の目の前で踊り散らかすと、そこからファイナルホイッスルまでファンファーレは鳴りやまなかった。

グループステージではゴールがなかったベンゼマもここに来てドブレーテ。
マドリーがマニータを達成した頃には、アンフィールドはコントラストの強い空間だった。

それにしても、今日はクルトワの日にならなくてよかったと心から言える。