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【Jude File】Episode2. 『べリンガム・システム効果』

弱冠19歳にしてマドリディスタとなったべリンガムの軌跡を定期的に振り返るためのコンテンツ ”Jude File” の第2編。

全編は下記のリンクから。



はじめに

べリンガムがまだドイツにいた頃、マドリーの9番はいた。しかし、いざスペインへ行くとロッカールームの9番は誰のものでもなかった。

べリンガムは、バジェホから5番を譲り受け、記者たちの前でジダンの名を出しながら理知的に振る舞った。

時が進み、新シーズンに向けたチームの始動日。
マドリーがSNSに投稿した写真が話題を呼んだ。

べリンガムとカルロのツーショットの背景だ。
ベンゼマの余韻に浸るのも束の間に、カメラマンは本来「彼」がいたはずの場所でカメラを構え、べリンガムでその文字の部分を隠した。

そして、もしもこの一枚が偶発的なものではなく、意図ある一枚であるとするならば、レアル・マドリー(フロレンティーノ)が描く、「彼」を含めたユートピアを暗示しているに違いない。

マドリーの現状整理

まずは、マドリーの現状を整理しよう。
(アメリカツアー終了後~ラリーガ第2節の期間)

アメリカツアーを経て、今季のマドリーの当面の戦い方が決まった。Episode1.でも述べたように、しばらくマドリーは、ダイヤモンド型の中盤4枚の前に2枚のCFを置く布陣を取るだろう。それは、渡米前と帰国後で何ら変わりはなく、べリンガムは10番にあたるポジションということもこの界隈では既に共有されていた。

攻撃力の鈍化やシステム上の欠陥などの不安要素をアメリカから持って帰ってきたマドリーだったが、開幕戦の2日前の練習中にクルトワが、そして開幕戦の試合中にミリトンが負傷した。両者とも復帰に8か月程度を要すると言われ、今季はシーズン終盤まで彼らなしで戦うことになった。フロレンティーノとカルロは、前者の中長期的な課題解決より、緊急性の高い人員の補強を優先した。

ここまで簡潔にまとめたが、クルトワ(防御)とベンゼマ(攻撃)の2つの大きな歯車によって生み出されていた動力が「遺産」となったことがマドリーの最大の痛手であり、シーズン開幕直前からそれなりの危機を迎えた。

10番べリンガム

チームの背景事情とは裏腹に、開幕2試合で5得点1失点とピッチで残された数字は決して悪くない。

一方で、現在のマドリースカッドで組む、4-4-2システムは陰と陽を併せ持つ。

最大の陽は、5得点のうち3得点がべリンガムによるものであることだ。
(陰は2CFの適正度だと私は考えている。)

べリンガムは、デビュー戦でもあった開幕節とそれに続く第2節アルメリア戦で連続ゴールを決めた。これは、2009年のクリスティアーノ以来のデータであり、ルーキーがチームをリードする姿をMARCAは称賛した。

過去2シーズンで原則10番を設けなかったカルロだったが、新たに10番べリンガムに自由と最低限の秩序を与えることで、得点力不足の懸念を跳ね返すことに現時点では成功している。

とは言っても、この新奇なべリンガム・システムは熟練度が必要である。

マドリーのボスとして残り1年のカルロはどうチームを組み立てなおすのだろうか。