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【Jude File】Episode7.『母国へ』

弱冠19歳にしてマドリディスタとなったべリンガムの軌跡を定期的に振り返るためのコンテンツ ”Jude File” の第7編。

全編は下記のリンクから。


サウジアラビアの地で順調に『はじめの一歩』を踏み入れたべリンガムは、36度目のラリーガ制覇メンバーになった。

Episode6.で取り上げた1月のスーペルコパ決勝以来、べリンガムの軌跡をざっと振り返ろう。

2023/1/22以降のべリンガムの活躍早見表

第21節アルメリア戦(1/22) 3-2(W)

186㎝のこの男が宙を舞った。6年前にユベントス・スタジアムで空中を支配した男が187㎝なので同じような迫力があった。シュート自体は惜しくも枠の右へ飛んだが、かつての5番も手のクルクルを準備していたかもしれないシュートだった。
2点ビハインドで迎えた後半13分、アルメリアDFのハンドで獲得したPKを中央にゴロで決めている。


第24節ジローナ戦(2/11) 4-0(W)

試合前、当時2位のジローナとは勝ち点差が2ポイントだった。べリンガムの2得点の活躍でチームはほろ酔い気分になっていたが、彼は57分で退いてしまった。足首の負傷で、3週間の中長期的な離脱となり、当時ミリトン、アラバ、クルトワを擁する私服軍団に仲間入りすることになった。


第27節バレンシア戦(3/3) 2-2(D)

怪我から復帰を果たしたべリンガムは、この試合でヒル・マンサーノの犠牲者となる。アディショナルタイム7分の中、99分で2-2で迎えたCKでヒル・マンサーノは不可解なタイミングでタイムアップの笛を吹いた。それは、ブラヒムがクロスをあげた瞬間のことで、ボールを追ってみるとべリンガムの逆転弾が決まる数秒前のことだった。ヒル・マンサーノは詰め寄ってきたべリンガムの発言を一発退場の対象と誤認識し、一度に二つの過ちを犯した。

『クソみたいなゴールだ』と言ったんだ。悪口を言ったわけではなく、ただイライラしていたんだ。決して侮辱的なことを言ったわけではない。


UCL R16 ライプツィヒ戦(3/7) 1-1(D)

この試合はチーム全体として苦しんだ。翼の生えたドイツ色の攻撃を無失点で耐え続けるルニンへの援護点は、クロース・べリンガム・ヴィニの三者で完結した。
クロースのパスカットから、べリンガムはボールを50mも運び、斜めにスピードアップしたヴィニに優しさのあるパスでチームの7番を持ち上げた。


第32節バルセロナ戦(4/22) 3-2(W)

2か月以上ゴールから遠ざかっていたべリンガムにやっと数字がついたのが、このクラシコだった。実に上で紹介したジローナ戦以降だ。しかもまた90分を越えてからだった。マドリディスタが2か月以上待った挙句、それがベルナベウでのクラシコという完成されたストーリーと、終了間際の見慣れた風景。そこは、クラシコ勝利という「事実上の優勝決定」と「べリンガムの復活」で二度おいしいディナー会場だった。

***

クラシコ以降、べリンガムは第34節カディス戦、第36節アラベス戦でそれぞれ1ゴールずつを決め、20ゴール到達まであと1ゴールという状況だ。

脅威的なぺースでゴールを量産していたあの時期が普通ではないにしろ、試合を重ねるにつれ、重そうに走るべリンガムを何度か見た。
それでも、べリンガムを土台にするチーム作りを昨年の夏から進めたカルロは、基本的に交代カードを切る時も彼のことは極限までピッチに残すことが多かった。

現代のフットボールでは「王様」というワードは死語になりつつある。いわゆる古典的な10番タイプで、10人の味方を好きにかつ効果的に操る役割を担っていた。
べリンガムはそんな典型的な王様プレイヤーではないが、人に道を譲ってもらえるキャラクターを放っている。それは風格からも、プレースタイルからもそう感じる。

時の人として一世を風靡した今季も残すところ2試合となった。

ウェンブリーで、ドルトムントを相手にあの名曲は歌われるのだろうか。