【Jude File】Episode6.『はじめの一歩』
弱冠19歳にしてマドリディスタとなったべリンガムの軌跡を定期的に振り返るためのコンテンツ ”Jude File” の第6編。
全編は下記のリンクから。
第11節クラシコ以降のべリンガム
久しぶりのJude Fileの更新となってしまった。
10月のクラシコの夜に勢いのまま書いた前作から約2ヶ月が経過した。
これは、そのクラシコ以降のべリンガムの活躍早見表である。
モンジュイックの地でべリンガムの右足から2ゴールが生まれてから、マドリーは15試合を戦い抜き、この期間の勝率は80%を超える。
そのうち、べリンガムは第13節バレンシア戦(肩の負傷)、コパ・デル・レイRoud32アランディーナ戦を除く12試合に先発出場。4ゴール4アシストを記録している。今回は、この中の数試合を振り返る。
2023/11/27 カディス戦
毎年何かと論争の題材を生みがちなバレンシアとのゲームで4点差をつけて気分爽快のマドリーは、試合後にカマヴィンガとヴィニシウスを失うことになった。当時の離脱者には彼らの他に、べリンガム、ギュレル、チュアメニ、セバージョス、ミリトン、ケパ、クルトワがいた。
ちょっとした違和感から選手生命を脅かす大怪我まで多様な離脱者が続出する中で、2か月に渡るスランプにハマっていたロドリゴがようやく感覚を取り戻したのがこのカディス戦だ。
ヴィニシウスがいない分、本来のスペースでボールを持つことができたロドリゴは、14分と64分にゴールを決め、さらには74分のべリンガムのゴールのアシストまでする大活躍だった。
脱臼した肩にサポーターを装着し、より一段厚みが増したべリンガムは、角度のないところから逆足でファーポストに当てるクリスティアーノのようなゴールをレデスマから奪い、試合を決定づけた。
2023/11/30 ナポリ戦
先に行われたアウェイのナポリ戦に続き、ホームでは彼の剣は時に鋭く、時に優しかった。
前半9分、マドリーはいきなり緩い失点を許すと、その1分後、ベルナベウは突如として沸いた。なんだか見覚えのあるシナリオだが、今回はベンゼマではなく三日前の夜(カディス戦)からアドレナリンが止まらないロドリゴによるものだった。
そして、この夜もロドリゴの次はべリンガムだった。
左後方のアラバからのボールだった。向かってくるボールと同じ方向に体を進めながら、タイミングを計って頭を振るという難しい動作を、べリンガムは完璧にやってのけた。
その後、同点にされるもニコ・パスがトップチーム初ゴールを決め、再び勝ち越す。そして、ちょっとしたドラマが起きた。
後半12分、先発出場のセバージョスと代わって投入されたホセルは、決して盤石な守備ではないナポリに対して何度も決定機を迎えた。そして、その度にゴールを逃し、ベルナベウの芝に感情をぶつけた。
そんな連続的な決定機逸脱から抜けだせないホセルのメンタルサポート役にべリンガムが就いた。
94分、苦しむホセルを間近で見ていたべリンガムは、窮屈な体勢になりながらも足の甲を使って対岸のホセルへボールを通し、ホセルを見事に救った。
ファンへ謝る33歳の背中を20歳の英国人が支え、あくまでもその助演の立場は崩さないべリンガムの姿勢に称賛の声が上がった。
2023/12/18 ビジャレアル戦
この試合を、あえてべリンガムを中心にせずに振り返る。
一心同体型の今季のマドリーを語る上では、彼の他にブラヒムやホセルも欠かせない存在だからである。
前半25分、べリンガムがいつも通りにゴールを決めると、そこからゲームは安泰なものになった。12分後にロドリゴが続き、後半にはヒシヒシと火をつけていたブラヒムにもゴールが生まれた。
フラン・ガルシアからの縦パスを反転しながら受けて前を向き、まずファーストディフェンダーを置き去りにした。細かなステップと稀有な両足使いでエリア内にて二人目を交わすと、ヨルゲンセン(GK)のリーチでは届かないゴールの隅へ冷静に流し込んだ。
ブラヒムは、ヴィニシウスがいない間に薄れていた自分の名を取り戻すことに徹し、べリンガムを中心に回っていたクラシックなマドリーに、スペイン色の歯車がもう一つ加わった。
2024/1/15 クラシコ
さて、ほどよく今のマドリーをまとめたところでべリンガムに焦点を戻す。
人生初のクラシコで1点ビハインドの状況から個人技で勝利をもたらしたべリンガムには、サウジアラビアでの「勝てば初のタイトル、負ければ単なる中距離移動」という隙のあるプレッシャーは通用するはずがなかった。
クリスティアーノの本拠地には、ベルナベウでのべリンガムがいて、その前には顔馴染みの2人が揃っていた。マドリードではすっかりアイドルとなったべリンガムは、サウジアラビアでも86分まで黄色い声を浴びた。
ハットトリックの序章となったヴィニの1点目のアシストは、時間と空間を掌握した結果である。その後もどことなくやりやすそうにクラシコを楽しむ姿があった。
クラブ史に残るプレイヤーになるためには、獲得したタイトル数が重要になる。べリンガムは順調に「はじめの一歩」を踏み入れた。