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コロナ規制を緩和した中国、消費回復の見込みは?

各地に広がった抗議活動に加え、経済の減速により、中国政府はようやく11月からコロナ規制を大幅に緩和した。これにより、中国経済活動の本格的な再開やリベンジ消費などに期待が寄せられた。

▲11月までの中国社会消費財小売総額推移 

過去数カ月の中国における社会消費財小売総額を見てみると、直近の11月まで前年比5.9%減少。

4月に実施された上海のロックダウンで前年比11.1%減少した後、ロックダウン解除によりやや回復傾向にあったが、9月から各地での感染拡大と規制措置を受け、再び下落に転じている状態だ。

個人消費の厳しい現状が一目瞭然である。

では、コロナ規制の大幅緩和によって中国の消費回復が見込めるのだろうか?

招商证券が発表したウィズコロナへ政策転換した国や地域の景気変化に関する調査を参考にしてみたい。

▲アメリカの消費者態度指数推移

アメリカは今年3月に国内のコロナ規制を緩和し、6月から入国時に義務づけていたコロナ検査の陰性証明を撤廃。これにより、小売業界が回復し、リベンジ消費が発生した。

さらに8月から新学期を迎えたことに加え、下半期にはメーカーが在庫処分のために行ったセールイベントが消費意欲を促進。耐久品と非耐久品の消費が急速に増加し、消費者態度指数も6月からV字回復するなど、消費回復を遂げた成功例となっている。

▲台湾の消費者態度指数推移

一方、台湾は今年4月から段階的にコロナ規制を緩和し、行動制限を撤廃したものの、アメリカとはまた異なる状況にある。

規制を緩和したことで飲食業界の売上は伸びてきたが、小売業界の状況が悪化。10月の消費者態度指数は61.22まで下落し、2009年2月以来最も低い数字となった。

台湾の株式市場の低迷や、インフレと金利の上昇が家庭の支出に影響したことで、市民の景気に対する考えは楽観的ではないようだ。

▲香港の小売販売額推移

また、香港では今年1~3月に感染拡大を受け規制を強化したが、4月から規制を緩和。消費喚起のため、政府が大量の消費クーポンを発行したことで2月・3月のマイナス成長から一転し、4月の小売販売額は前年比11.68%増加した。

しかし、5月から小売販売額の前年比伸び率は鈍化し、未だにコロナ前の水準に戻っていない。中国本土のコロナ規制が香港の観光消費に影響しており、完全な消費回復にはまだ時間が必要な状況だ。

上記3つの例から見ると、コロナ規制緩和をしたからといって、必ずしも景気が良くなるとは言えないだろう。アメリカのように消費が急速に回復するケースもあれば、短期間の消費回復が見られた後に伸び悩むケースもある。

実際に中国は現在、コロナ政策の急転換により感染者数が急増しており、来年第一四半期の生産活動や物流にも影響することが想像できる。また、行動規制が緩和されても、国民が感染を恐れて外出を控えている状況のため、北京では街頭の人が急減し、上海の地下鉄でも利用者数が減少。思惑通りに消費が回復するかは不透明である。

これに対し、中国政府は来年の経済政策について、消費の回復と国内需要拡大に重点を置く姿勢を示しており、江蘇や福建など各地方政府も大規模な消費クーポンを発行する計画を公開。

これらの政策がもたらす効果、そして中国の消費動向はどうなっていくのか。引き続き追って行きたい。

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