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2021年振り返り、ネット業界における独禁法違反92件

2020年末から2021年に渡るこの1年あまりに、中国のネット業界では、政府がかつてないほど強力な独占規制強化を実施し、市場の動揺を招いた。この期間中、規制当局の市場監督管理総局が発表した独禁法違反に関する処罰案件のうち、92件がネットプラットフォーム企業と関わるもので、罰金総額は217億元(約3,930億円)を超過。

独占罰金案

▲中国ネット企業が独禁法違反により課された罰金額(出典:南方都市報)

中国政府が2020年11月に発表したネット企業への市場独占規制のガイドライン草案では、ネット企業の独禁法違反行為に関する①独占協定②市場支配的地位の濫用③事業者集中(企業結合)④行政権力の濫用による競争の排除・制限の計4つが取り上げられた。

92件の処罰案件のうち、独禁法違反と認定された行為は主に市場支配的地位の濫用に当たる「二者択一(出店者の出店先を制限する)」と違法な企業結合の2つである。

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▲2020年12月14日~2021年12月14日の中国ネット企業独禁法違反案件
(チャイトピより作成)

1、二者択一
「二者択一」関連の処罰案件は3件。特にアリババとデリバリー大手の美団(meituan)が合計200億元(約3,600億円)を超える巨額の罰金を科され、世間を騒然とさせた。売上比率で見ると、アリババは2019年売上の4%、美団は2020年売上の3%に相当する額である。

もう1つのSherpa's(食派士)は、中英2ヶ国語でデリバリーサービスを提供するプラットフォームで、北京や上海などの大都市で英語を使用するユーザーをターゲットにサービスを展開している。同社も同じく出店者に「二者択一」を強要したとして、2018年の売上の3%に相当する116万元(約2,100万円)の罰金を課された。

2、 違法な企業結合
違法な企業結合を行ったとして独禁法違反の対象となった案件の罰金額はそれぞれ50万元(約900万円)。「二者択一」より罰金額は、はるかに小さいが、案件数は87件もある。

一定規模の基準を満たす企業結合を行う場合、事前に政府に申告しなければならないが、申告なしに行ったとして処罰の対象となったのは、テンセントやアリババ、百度、DiDi、バイトダンスなど、多くの著名IT企業である。

以下はそのうちの一部を列挙:

・アリババ:地図大手「高徳」を買収
・アリババ:デリバリー大手「eleme」を買収
・アリババ:スーパー大手「高鑫」の株式取得
・テンセント:ソーシャルEC「RED」に出資
・テンセント:検索エンジン「sougou」に出資
・テンセント:オンライン教育「猿補導」の株式取得
・百度が自動車メーカー「吉利」(Geely Auto)と合弁会社を設立
・京東(JD)が家電量販大手「五星電器」を買収
・滴滴(DiDi)とソフトバンクが合弁会社を設立
・滴滴とEVメーカー「北汽新能源汽車」が合弁会社を設立
・宅配ロッカー大手「豊巣」(Hive Box)がライバル社の中邮智递を買収

企業結合による処罰案で最も多くの罰金を科せられたのは、テンセントの24件で1,200万(約2億円)。次いで、アリババの22件で1,100万(約1億9800億円)となっている。滴滴は14件で700万元(約1億2600万円)であった。

上記の案件は全て過去に行われたものであるが、独禁法違反に当たるとして罰金を科された案件である。これ以外にも、ゲーム実況配信サイト「虎牙」と「闘魚」の合併案が政府により中止されたり、テンセントミュージックが音楽レーベルの独占権放棄を命じられたりと、政府の介入が顕著に現れた年だったと言えるだろう。


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