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中国「独身の日」における3つの変化

中国最大のECセールイベント「独身の日(ダブル11)」が約21日間の開催を終えた。アリババが2009年に始めたこのイベントは今年で13年目の開催を迎え、中国経済と消費のトレンドを示す重要なイベントとして年々注目を集めてきた。

しかし、今年はいくつか例年と異なる変化が起きている。

1、最終取引額の記録を塗り替えるも、熱狂なし

今年の独身の日は、EC各社によるリアルタイムの取引額速報は公開されず、最終取引額も以前より数時間遅れての公開となった。これは、中国政府が提唱する「共同富裕」や、ネット業界に対する規制強化などを意識した結果だと思われる。

中国ECシェアトップ2社の取引額は以下の通りである。
・アリババ     5,403億元(約9兆6,500億円)前年比8%+
・京東(JD)3,491億元(約6兆2,350億円)前年比29%+

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▲アリババ・Tmallの「独身の日」取引額推移
(2020からは実施期間が拡大)

これまでの独身の日セールは、11月1日スタートであったが、去年から10月末から予約販売を開始。そこから11月11日までの約21日間の開催となった。後の返品は加味されていないが、今年も無事に記録更新を果たした。

しかし、毎年売上の成長に追われるEC大手としては、取引額に対する世間の注目を逸したいようだ。アリババ・天猫の総裁である吹雪は、売上の数字より、出店者と消費者の体験や、社会貢献に注力したいと発言している。

2、中国EC市場の勢力変化

中国ECといえば、アリババを始めとする通販モールのイメージが強いが、近年ではdouyin(Tik Tokの中国版)やkuaishou(快手)といった動画アプリがライブコマースを展開し、EC大手から市場シェアを奪っている。

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▲中国EC市場シェアの変化(出典:海豚社)

2018年のEC市場では、アリババがシェアの66%を占めていたが、2020年ではこの割合が56%まで減少。昔からのライバルであった京東、その他douyinやkuaishou、REDなど新興ECに市場シェアを奪われている状態である。特に最近douyinの勢いは凄まじく、今後中国EC市場の勢力図を変えていく可能性がある。
このように、ダブル11は元々アリババだけのイベントであったが、今やライバル社が次々と参戦する激戦イベントとへと変貌を遂げた。


3、「二者択一」がなくなった
今回の独身の日は、アリババが出店者の出店先を制限する「二者択一」行為で政府による182億元(約3,250億円)の巨額罰金を科された後、初の独身の日となる。これにより、毎年恒例とも言えるブランドとプラットフォーム間での「二者択一」を巡る起訴や、ネットでの論争シーンが消失。
出店者が自由に出店プラットフォームを選べるようになり、プラットフォーム側も出店者を囲い込むため優遇政策を行うようになった。


「独身の日」の今後は?

13年続いてきた独身の日に疲れを訴える消費者が増えている。以前は0時スタートだったため、真夜中のイベントスタートにクレームを受けていた。そこで今回は、アリババら大手プラットフォームは予約販売スタート時間を前日の20時に前倒しに。EC各社も時代の変化に応じ、様々な調整を行うようになった。

また、例年とさほど大差ない13回目の独身の日を迎えたことに加え、近年はECセールイベントの増加により、年々消費者の買い物時期が分散している。これもあり、独身の日の影響力が13年前と比べ弱ってきているようだ。

各社マンネリ化した独身の日を来年はどう変化させるのか、引き続き着目していきたい。

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