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中国でキャンプが大ブーム そのわけとは?

日本で大型連休のゴールデンウィークがあったように、中国でもこの時期は労働節(5月1日)により4月30日からの5連休を迎えた。

そんな中で、キャンプが大きく脚光を浴びていた。

中国オンライン旅行大手の「トリップドットコム(Trip.com)」によると、労働節期間では同プラットフォーム上におけるキャンプの検索数が前の週に比べて90%も増加していた。

また、別の旅行会社「去哪儿旅行(Qunar.com)」によると、キャンプ関連の宿泊・旅行の予約件数は前年の3倍に膨れ上がっていた。

中国では今、キャンプ市場に追い風が吹いている。

燃え盛る中国のキャンプ熱

中国の市場調査会社「艾媒諮詢(iiMedia Research)」のデータによると、2020年の時点で中国のキャンプ場市場規模は168億元(約3,200億円)に達しており、2023年には417億元(約8,000億円)と2倍以上に増加する見込みである。


▲ 艾媒諮詢のデータをもとにチャイトピ!より作成

中国ではキャンプはマイナーな部類に属されるが、消費者はバラエティ番組や家族、友人、SNSプラットフォームなどから関連情報を知り得ていた。

キャンプがブームとなった根本的な理由としては中国人の消費力が向上したことにある。

また、都市部で働き住むサラリーマンなどが都会の喧騒から離れて、大自然の中でリラックスしながら家族や友人と時間を共にし、心を養いたいという希望もブームの一因となっている。

キャンプを楽しむにはテントのほかにも寝袋や日差し・雨対策のタープ、ランプ、折りたたみイス・テーブル、収納ボックス、ゴミ袋など様々なものを用意する必要がある。

キャンプブームの到来によって、関連製品を買い求める消費者の需要も高まっている。

アリババ傘下のEC(電子商取引)大手・「T-mall(天猫)」によると、4月20日~5月4日におけるタープの売り上げは前年比2100%と爆発的な増加を見せていた。

また、キャンプ用品のブランドでは中国ブランドの「牧高笛(MobiGarden)」が人気を得ている。同社が今年3月に発表した2021年度の通期決算によると、売上高は9.23億元(約180億円)と前年比43.6%増加し、純利益では7,809万元(約1.5億円)と前年比69.9%増加していた。

さらに、日本の「スノーピーク(Snow Peak)」などの海外ブランドも現地で支持されている。

スノーピークは2020年7月に北京で期間限定のポップアップストアを開き、その後も販売拠点を増やしていくなど中国本土での事業拡大を試みている。EC分野でもすでにT-mall上にネットショップがあり、中国版ツイッターのweiboなどSNSを通して商品の宣伝を行なっている。

▲ スノーピークのT-mallネットショップ(チャイトピ!より撮影)

初心者向けに手ぶらキャンプも

前述のようにキャンプを始めるには様々な物を用意する必要があり、結構お金がかかるアクティビティである。

T-mall直近1週間の関連製品の売れ行きランキングを見ると、一番売れているテントの値段が289元、タープが238元、折りたたみイスが78元となっている。一人ひとりのニーズによってかかる費用は変動するが、これだけですでに600元(約1万2,000円)近くに達する勢いである。

さらにクオリティが高く、充実したキャンプ体験を実現するためにはより品質の高い用品を揃えなければならず、必然的に費用もかさむ。

また、テントの設置などに関しても事前に勉強し、練習する必要がある。キャンプ初心者や手間をかけたくない者にとってはハードルが高い。

そうした消費者を狙ってキャンプ場と道具一式を用意し、ほぼ手ぶらで豪華なキャンプ体験ができるサービスを提供するブランドらが現れた。

2020年末に設立されたブランド「大熱荒野」はキャンプ初心者をターゲットに、アフターヌーンティーやテントの設営体験・ディナー・キャンプイベント・朝食を含めた1日体験プランを提供している。値段は1人当たり799元(約1万6,000円)となる。 

▲ 大熱荒野の予約画面(チャイトピ!より撮影)

同ブランドが用意するキャンプ場ではトイレ・シャワー室も完備されており、消費者は個人用品を持参するだけで手軽にキャンプ体験を楽しむことができる。

キャンプブームの波に乗ろうと市場に参入する者が増えているが、そこには二つの問題があった。

キャンプ場運営のコストは決して低くない。一つのキャンプ場にかける年間コストが100万元(約2,000万円)に上る可能性もある。

また、参入者の増加により市場競争の激化は免れず、その中でいかに競合との差別化を図ることができるのかが課題となる。

火がついた中国のキャンプブームが今後どのように発展していくのか、引き続き注目していきたい。

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