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「ステラのまほう」総感想(※ネタバレなし)

はじめに


まんがタイムきららMAXで連載していたステラのまほうという漫画がある。

PrimeVideoアニメ無料の一話をレンタルしてみてもらえれば何となく分かるのだが、お絵かき好きの女子高生が高校生活を後悔したくないからという動機で、同人ゲーム開発に挑んでいく漫画だ。

で、当時ゲーム専門学校に入りなおしてブラブラしてた僕は、同じゲーム開発というジャンルに惹かれてこの作品を読み始めた。

以下、僕が読んでいた、あるいは僕が友達に勧めた8巻~10巻の総感想を纏めさせていただきたいと思う。(それ以前の巻も持ってはいるが、今回はあえて「百武照編」とでもいうべき総3巻の内容を解説できればいいと思ってる)

物語の転換期となる「百武照編」について


「ステラのまほう」の物語が終盤に差し掛かってきた頃、物語は強制的にSNS部(ゲーム制作部)創始者であり浪人生の百武照(ひゃくたけてる)という人物にクローズアップされる。(まるでゲームのスキップ不可強制イベントシーンみたいに)

そして、物語の観点は「救ってほしくないと思ってる、自殺願望を持つ隣人をどうしたら救えるか?」というテーマが追加され始める。
言ってしまえば、ここら辺で物語や読者層は「ふるい」にかけられると言ってもいい。

肝心の珠輝(主人公)達が作っているゲーム制作は中身や全容はコマ等の切れ端からしか分からずに、ただリアリティのある、少し歪んでいるかもしれない人間関係模様を見せつけられる。

物語の完結が近づくにつれ、作品の感想などを見ていると、大抵のTLでは「百武照に救いはないけど死んでいたらまずいよな」ぐらいの感想が多かったように思える。(※個人の感想です。)

で、何故救いがないかというと

百武が「生きていたくない」と思える理由に、自分が「生まれてきたから精神疾患を持つ母親に迷惑を掛けた」という経験があるせいで、「自分は欠陥を持っている人間で、どうせ他人に迷惑を掛けるならその人たちにエゴを振りまいてから楽しく死にたい」というこりゃどうしようもねぇな….. と書いてて思わなくもない自殺願望を物語の「ふるい」に落とされた読者は見せつけられる。

ここまで落とされた読者は「死んでたら御法度かな?」ぐらいの感想を持ってる人も多かったように思える。(※個人の感想です)

百武をどうにかならないかと奔走した人の話

ここまでが感想だが、この作品は双方向という形で物語に関わる手段もあるにはある。

作者であるくろば・U先生が、時折原稿中の様子をyoutubeで配信していたからだ。
その配信中に、先生にキャラクターの事、今日のご飯のこと、ストーリーの事…..色々聞くことが出来る。

当時鬱に苦しまされてた僕は、結構百武の事を聞いた気がする。
当時、神聖かまってちゃんをよく聞いていた僕は、そのバンドの歌詞になぞらえて
「自分は照さんは別に救われなくてもいいかなって思ったことは」
「あの人は諦めてると生きやすくなると思ったけど、違ったかな….」と書いた事がある。
先生は「👍」、「人間関係で救われることがあることなんて少ないじゃないですか(←コメント残ってなかったのでうろ覚え)」
「まあでも、残りの話数である程度の区切りをつける予定ではあります、つくかどうかはしらないが…..」
「すべてはシナリオ・Uの気まぐれとダイスロールの結果じゃ」

と書かれて配信は終わった。

さらにその前には、珠輝の夢を聞いたこともある。
作者曰く「おじさまになること」らしかったが、その後デス・ストランディングというゲームの話になって製作者の小島秀夫(かっこいいおじさま)の元で働くことだった….?と冗談っぽくなってその話は終わった。
(詳細は控えるがあの顛末を見ると、割かし冗談でもなかったような気がする)
この話を聞いた意図があって、「珠輝の将来」を僕は確認したかった。
「私の生きてる理由は死ぬためなんだ」と照に聞かされた珠輝が、ちゃんと自分の将来を持ててるのか気になったからだ。

先生の答えは満足いくものだったし、リアルタイムで且つ双方向でファンとやり取りできる機会がなければ、生み出されなかった物語の展開もなかったこともないのでは、と思ってる。


暗い時代のヒーロー

物語のラインについての話に戻すと、「同人ゲーム制作」というジャンルに絞りつつも、その裏ではありふれた精神疾患、鬱、希死念慮、承認欲求など現代の「暗い時代」に相応しい内容が多かった気がする。
物語の中で登場人物たちは悩み、どうしたら苦しみに寄り添えるか、ゲームという目下の課題を完成させることで何か変えられるものがあるのかを考えていっていた。
この作品は、中身の部分である「どこか淀んだ空気」を楽しむものであると僕は感じていて、完結までの期間は、いい意味で作品に振り回された、(百武照の生死含む)作品に付き合わされた時間だと感じるようになった。


振り返って、の感想

ステラのまほうという作品自体、「同人」を取り扱った作品である。
だからなのか、多分この作品に携わる人、この作品のファン双方は同人というジャンルをとても大切にしている人たちだと感じたのがこの作品を追ってきての感想だった。
ステまを題材にしたファンアート、ノベルゲー、同人誌、小説、ADVゲーは割と早い段階でくろば・U先生が見つけてくれてリツイートされる。
なので、思うにあの結末、あの作品自体が代表はくろば先生でも、物語の内外問わず、あの作品は「同人」という群の環、ソーシャル内での人の繋がりで構成された作品だった、と言えるのかもしれない。


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