オリンピックやってるってよ

東京オリンピックが始まった。

私は大阪に住んでいるので、ついこの間までコロナの第四波の高い波に心底怯えていたため、『オリンピックは中止中止!』派だったのだが、ぬるっと開会式の日がやって来てしまった。「ついに」とか「待ちに待った」ではなく、「やって来てしまった…」という地獄の門が開いてしまったような恐怖に慄く感じでその日を迎えた。

根っからの運動音痴に加え、スポーツ音痴なのでオリンピックを熱心に見守る方では無いのだが、開会式直前までオリンピックや開会式に関する悪い報道ばっかり耳にしていたので、一体どんなことになっているのだろうか?と子供を心配する田舎の母親の心境で開会式を見守っていた。全世界に日本がズッコケるところを見せてしまうその瞬間を見ることになるのだろうか…と考えたり、この「意地」でやり切ろうとするところや、引き下がれなくなって突き進んでいく感じは太平洋戦争開戦のあたりの盲目的な感じにすごく似ている気がする…と暗い気持ちになったりもした。本当にこれで良かったのか…本当にやるのか…?誰のため?何のため?世界中の人が待ち望んでいるのか?日本の独りよがりじゃないのか?と、本当にどうしようもない考えばかりが頭の中で渦巻いていたのだけれど、選手たちが入場してきた時、みんな嬉しそうに笑顔をはじけさせているのを見ていると、やっぱり開催してよかったんだよと思い直している私がいた。医療従事者の方とか、このコロナ禍で大変な思いをしている人がいるのは分かっているのだが、ニンゲンが単純なもので、目の前に嬉しそうに笑っている人がいると、(あぁ、喜んでる人が一人でもいるならやって良かったじゃない)と思ってしまう。誰の何のためって、この選手達の努力と才能のためじゃない!とまで思い、歓迎していた。

開会式は、やたら男女平等やジェンダーフリーやSDGsや…そういう「新しい美しいっぽいもの」と、古き良き江戸とか歌舞伎とか、海外の人が好きそうな「古くからある伝統の技」みたいなものが詰め込まれていた。いやまぁニュースタンダードをアピールするのは勿論悪くないことなんだけど、実際の日本は旧態依然というか、ニュースタンダードからは程遠いということを知っているから、キラキラすればするほど、溌溂とした笑顔のパフォーマンスを見れば見るほど、なんだかうすら寒く感じてしまった。勿論パフォーマーの人がどうこうじゃない。そうではなくて、もっと大元の、「コレ見せたら感じ良くない!?」という浅はかなあざとさみたいなものがどこからともなく臭ってくる感じがするのだ。「思いっきり楽しませてやろうぜ!」というほど振り切れているわけでもなく、「こんなご時世なので粛々と進めましょう」という自制心が見えるわけでもない。あぁ、中途半端だったのか。

そういえば、入場行進時の日本の女子選手が着用していたキュロットが、日本の中途半端を如実に表していた。

パンツでもなくスカートでもない、長くもなく短くもない。女子選手にスカートを穿かせると「女という性を押し付けている」と言われるのが怖い。でもパンツしか用意しなければ今度は「女という性を無視している」と言われそう。そういう考えがグルグルした結果キュロットになったのではないか。(と私が勝手に思っている。)

スカートでもパンツでも選べれば良かったのにね。好きな方を選べるというのが自由なんじゃないの?と思ったり。あぁでももう昨今は「コレが自由っしょ!」と提案することがもう「押し付けんじゃねーよ」みたいに言われたりもするしね…。デコボコしているところを平らにしようとすればするほどしわが寄るというか。まるでワイシャツのアイロンがけだねこりゃ。シンプルなのに難しい。

こんな拙い文章なのに、ここまで書くのに4日経ってしまった。勿論オリンピックもどんどん競技が行われて、金メダルも沢山取れている模様。日本の獲得メダル数も順調に増えているが、コロナの感染者数も皆が思った通り着々と増えている。で、また宣言されるらしい。あーまたかー。また宣うのかー。と、こうなってくると、(ほら言わんこっちゃない!オリンピックなんかやるから!)という気持ちになる。開会式を見て「やって良かった」なんて思ったのも忘れて恨み節が出てきてしまう。やり場のないイライラや気持ちの落ち込みを抱えて、酷暑の下じっとうずくまるしかないのか…。

今から日本はコロナでエライことになっていくんだろうけど、もう止まらないし止められそうにもない。行くとこまで行って焼け野原状態になるのかもしれない。あーその情景もまた戦時中と一緒なのか。今まで戦争の話を聞くたびに、なんでそんなに一丸となって突き進んだのかね?そんなに止められないものかね?なんて思っていたけど、こういうことだったのかと身をもって平和学習させられてる気がする。あーあ気が重くなるぜ。

それでもどうか日本にやって来た海外の選手達が楽しくオリンピックを過ごして元気に自分の国へ帰っていってくれればいいなと思う。こんな状況でも平和の祭典をして、世界中が敵じゃないということだけは救いなのかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?