見出し画像

イギリスの刑事司法制度(石田先生のお話から)

先日、明治大学の石田倫識先生にイギリスの刑事司法についてのお話をうかがいました。

刑事司法手続は国毎に大きく違いますが、日本の制度と比較して、イギリスの制度は特に大きく違っていると感じました。

日本では、起訴前に最大23日間の勾留がされ、ほぼ有罪に間違いないだろうと思われる事件だけが起訴され、ひとたび裁判になると高い有罪率(99%以上)になります。

一方、イギリスでは、警察段階での留置は24時間に制限され、有罪判決の現実的見込みがある事件について起訴され(あっさり起訴・51%ルール)、ひとたび裁判になっても、否認事件で50%程度が、全事件を通じてでも20%程度の無罪判決があります。

イギリスでは、無罪になっても、日本のように刑事補償はありません。高い無罪率から、仕方のないことでしょう。

また、イギリスには有罪答弁の制度があります。最初の段階で有罪を認めると、刑期の3分の1が自動的にディスカウントされます。有罪答弁は、その後の段階でもできますが、後になるほどディスカウントの幅が4分の1,5分の1とさがっていき、陪審裁判になってからの有罪答弁では10分の1にまでなってしまいます。

最初は否認していて後で有罪答弁に切り替える被疑者も多いようで、裁判官は、有罪答弁について丁寧に説明し、被疑者に注意を促すこともしているようです。

イギリスでは警察による事前の証拠開示が広く認められ、弁護人との秘密接見が保障され、取調べへの弁護人の立会も認められています。

日本でも秘密接見の保障はありますが、捜査段階での証拠開示は限定されており、立会いについては、多くの場合拒否されます。

イギリスでの取調べへの弁護人立会の主な目的は、取調べを監視することよりも、むしろ弁護人と相談の上で決めた防御の方針に基づき、被疑者が取調べの中で防御権を十分に行使できるよう手助けする点にあるようです。

黙秘権の行使は、かなり高い割合で行われているようです。正確な統計はありませんが、半数以上の事件で黙秘されているようです。

黙秘権の行使については、日本と異なり、不利益推認が認められています。取調べの際に黙秘していたことを、あとの供述の信用性を低める事情として考慮することができるのです。その前提として、取調官は、被疑者取調べのときに、関連する事項を広範に質問しておくことをします。

イギリスにおける取調べ受任義務は、黙秘権の放棄を迫る説得の機会を与えるためではなく、適切な推認のために一通りの質問をする機会を取調官に与えるためにあります。

被疑者は、逮捕されているか否かにかかわらず、取調べの前に、弁護士から無料で独立した法的助言を受けることができるとされ、1984年には20%程度だった弁護人請求率が現在では50%程度の被疑者が請求しています。

これらの弁護人の多くは、リーガルエイドにより対応されており、一定の要件を満たす弁護人が赴く体制が取られています。被疑者は、特定の弁護人までは指名できませんが、特定の事務所の弁護人を希望することができます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?