池井戸潤「株価暴落」読了
池井戸潤さんの「株価暴落」を読了。この作品は銀行の話に加えて、犯罪ミステリー要素のある刑事ものの側面もある。私は作者と同じ時期に都銀で仕事をしていた経験があり、弁護士となってからは刑事系の仕事もそこそこしているので、いずれもなじみのある世界観で面白く読めた。
銀行には様々な個人情報が集まっている。顧客情報データベース(CIF)に集約されていて、他店からも参照できるほか、取引店では口座の動きも確認できる。この作品も、CIFの登録を確認し、取引店の預金の動きから生活状況を推測するくだりがあった。
バブル前後、個人情報保護がいい加減だった時代なので、著名人の名前を業務と関係なく検索してみたり、営業目的で口座情報を参照することが当たり前に行われていたけれど、コンプライアンス的には問題が多いように思う。口座に多額の入金があったときに銀行から定期にしませんかとか勧誘があるのがよい例だ。
融資などを担当する与信・審査系の担当者と営業担当者のせめぎあいもよくあったし、与信判断にさまざまな力が加わることもあった。融資稟議を否決したら店に国会議員の秘書がきて支店長と話し込んだ後、稟議の書き直しを指示されたこともあった。
今の銀行業務は当時とはだいぶ変わっていると思うけれど、当時の仕事はいいことも悪いことも含めて、よい経験になっている。