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「世界は想いでできている」設定について

「世界は想いでできている」という脚本を書いた。1月の25日~29日が本番の舞台だ。残念ながら、体調不良者が出たために途中で上演中止となってしまったが、ありがたいことに、とても評判のよい作品となった。この舞台については、書きたいことは山ほどあるのだが、長くなりすぎるので別の機会にしたいと思う。
 
通常、脚本を書くために、ノート一冊分を消費する。たくさんの設定を書いて、それを使って一番面白くなりそうな物語を何度も書き直す。いくつもの設定や、セリフや、人物が生まれては消えていった。そして上演時間が2時間を超えると、お客さんのお尻がしんどくなるので、たいていの脚本は、もとの話からかなり削ることになる。
その中でも、長さを無視していいなら入れたいと思っていた設定があるので、書いておきたい。最終稿の前段階の脚本では、少し残っていた設定でもある。
 

メディウスは「称号」


実は「メディウス」というのは、里で一番の魔法使いに与えられる称号であり、現・メディウスの本名は「リアム」という名前だ。ちなみに劇中で呼ばれることがないため省略しているが、里長の名前は「エレミヤ」である。

ウルの父親の名前は「ライアン」で、リアムの一代前の「メディウス」だった。数年前、グラム(帝国と共和国が奪い合っている地域)にアラン(当時6歳)が住んでいた頃、共和国側が仕掛けた戦争で、ライアンは戦争を止めようとして死んだ。その時にライアンは、共和国軍に一方的に蹂躙される帝国の市民を助けてまわった。そのうちの一人がアランであった。

ちなみにその戦争で共和国を指揮したのが、「マードック」。マードックはエマとミゲルの叔父で、グラムを奪還した功績により、「共和国の英雄」と呼ばれるようになる。そして後に、優秀なミゲルが英雄の称号を受け継いだ。

禁じられた魔法を使ったライアン

ウルの父、ライアンは、グラムでの共和国による一方的な殺戮を止めるために、最低限だが魔法を使った(精霊は魔法で生物を殺傷することを嫌うため、攻撃には使用できない。そのような制限もあり、優秀な魔法使いであったライアンもついに命を落とすことになった)。人前で魔法を使うのは、魔法使いの里の掟で禁じられており、そのため里からは除名処分となり、同時に「メディウス」の称号を剥奪された。そしてライアンの次に優秀だったリアムが、メディウスを継ぐことになった。
ライアンは、精霊の怒りや悲しみについて、人間の傲慢が原因であることにいち早く気付いており、環境の保全や戦争を止めることを目的に行動していた。やむを得ない経緯から、ライアンと魔法学校の同級生だった里長エレミヤとリアムは、口にこそ出さないが、ライアンに対しては同情的である。

ライアンは戦争を止めに行く前、里を去る時に、幼いウルを、エレミヤに託した。ただ、エレミヤはその後、里から除名されたライアンの子供であり、言葉を話せず、魔法も使えないウルについて、どのように扱うべきか、非常に悩んでいたという。

なぜ魔法使いがいるという噂が流れているのか

グラムで起こった戦争で、ライアンの魔法を目撃した帝国と共和国の人々の間では「魔法使いは存在する」という噂が立った。それで、精霊の反乱で人間界が大変な騒ぎになった時に、魔法使いならどうにかできるのでは、という話がそこかしこで上がる。それで、魔法使いの里を目指すエマと、アランに魔法使いを探すよう命令するバートンは、存在を信じていたのである。
 
 


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