教育委員会への請願をもっと出しやすくしたい!

 PEACHでは、部活動に関する3件の請願を全国各地の都道府県教育委員会に提出する運動を進めています(内容は別記事参照)。この運動を進めるにあたり、一般の人が請願を出すにはいろいろとハードルがあることが分かってきました。

 請願とはそもそもどんなものか確認した上で、どうすれば請願が出しやすくなるか、私たちなりの提案をしたいと思います。

(1)請願とは

 請願権は受益権(国務請求権)の一つであり、憲法で保障された人権です。また、参政権的な役割※も果たしています。

※条文に「何人も」とあることから、参政権を持たない外国人や未成年者にも請願権は保障されています。

「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」(憲法第16条)

 これを受けて、請願法では次のように定められています。

「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。」(第5条)

 請願を受けた機関は、請願を受理し、誠実に処理する義務を負います。ただし、調査や審判、処理報告などの法的義務を課すものではないと解されています。

<参考>「請願は、これを受理した官公署に対し特別の法律上の拘束を課するものではない。」(東京地判昭32.1.31)

(2)請願についての説明(ウェブサイト上)

 私たちはこのたび、部活動に関する3件の請願を全国各地の都道府県教育委員会に提出する運動を進めています。都道府県議会宛ての請願については、どの都道府県でもウェブサイト上で詳しく説明されていますが、教育委員会宛てのものについて説明されていることは稀です。

 例外的に、最も詳しく説明されているのは愛知県です。愛知県教育委員会のウェブサイトには次のように書かれています。

「県の教育行政に対して、御意見や御希望があるときは、請願や陳情を県教育委員会に提出することができます。特に重要な請願については、教育委員会会議において審査を行います。その他の請願については、教育委員会事務局において審査を行い、その結果を教育委員会会議で報告します。」

 また、鳥取県や東京都も、請願の取り扱いについて規則等で明確に定めています。

「請願書が提出されたときは、委員会はその採択の可否を決め、審査の結果を教育長を経て請願者に通知するものとする。」(鳥取県教育委員会請願規則第3条)

 「請願 ◯◯県教育委員会」で検索してヒットする範囲では、他に、滋賀県・石川県・神奈川県で若干の規定が確認できますが、注意して探さないと発見できないレベルです。

 つまり、愛知県・鳥取県・東京都を除き、教育委員会への請願についてウェブサイト上で分かりやすく説明されている例が見つからないのが現状です。(2022年1月現在PEACH調べ)

(3)請願を出しやすくするために

 憲法に定められた請願権を一般の人でも行使しやすくするためには、愛知県のように、分かりやすい説明をウェブサイト上に掲載することが大切です。

 そして教育委員会事務局の意識改革も必要です。私たちが長野県教育委員会に請願書の提出を申し出たところ、教育委員会ではなく議会に提出するように言われました。たしかに議会でも請願を受け付けてくれますが、紹介議員が必要になるなど、教育委員会への請願とは異なるものです。議会ではなく教育委員会に提出したいと伝えたところ、「要望として受け取ります」「書式は自由です」など、憲法で保障された請願権や、請願法で定められた事項について理解しているのか疑わしいような答えが返ってきました。

 長野県教委にはすでに3度電話していますが、それでも、請願が教育委員会定例会の議題に上げてもらえるか不確かな状況です。請願書を郵送するだけで確実に受け付けてもらえる愛知とは雲泥の差です。しかし、これも地方自治の一端と受け止めて、丁寧に説明していきたいと思います。

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