顧問拒否の是非に対するPEACHの見解

2022.4.18
PEACH代表者会議

 今年3月末で公立中学校長を退職した八重樫通氏@Edger_ty3517の次のツイートが波紋を呼んでいる。

「私は顧問拒否運動にはあまり賛成できない。むしろ改革を遅らせてしまうのではないかと危惧している。できれば管理職と先生方は協働して改革推進体制を整えた方が物事は進むと思う。もっとも行政任せで静観するだけの管理職には良い刺激かもしれないが。」(午後9:53 · 2022年4月15日)

 八重樫氏は現役校長時代から部活動改革に積極的に取り組んできただけに、部活動問題に取り組む教員の間では失望の声が広がっている。

 顧問拒否について、PEACHでは、部活動問題を解決する有力な手段の一つと位置づけている。氏の言う「顧問拒否運動にはあまり賛成できない」との見解には同意できない。

 改革が進まないのは、議論の主導権を教員以外の者が握っているからである。文科省、教育委員会、管理職、地域や保護者、学者、マスコミなど、部活動によって直接苦しむわけではない人々が議論しているため、教員の負担を多少軽減するくらいの方法しか検討されない。

 そこで教員が取りうる対抗手段として何があるかといえば、顧問拒否である。いくら部活動に教育的意義があるとか、なくしてはならないなどと言ってみたところで、現実に顧問を担う人がいなければ部活動は成立しないのだから、顧問拒否が現実味を帯びれば議論の主導権は教員に移ることになる。学校教育にとって不可欠と信じられている部活動は、実はかくも脆弱な基盤のもとに成り立っているのである。

 だからこそ、部活動を維持したい人々は、さまざまな方法で顧問拒否を妨げようとする。部活動を教員の仕事だと思い込ませたり、同調圧力によって顧問を断れないようにしたり、実際に顧問拒否をしようとする人には「しわ寄せ論」を持ち出したりして、あの手この手で教員を部活に縛り付けようとする。八重樫氏が積極的に部活動を維持しようとしているわけではないのだろうが、「改革にマイナスだから」という論理も、結果的にはこうした流れの中にあると言える。

 繰り返すが、改革が進まない原因は、教員が議論の主導権を握れていないことにある。しかし教員こそ、部活動の存続を最も左右する存在なのである。顧問拒否の可能性を示唆することによって初めて、教員は議論の主役たりうる。顧問を最初から引き受けてしまうと、教員は自分たちの労働条件を改善してもらう客体にしかなりえないが、顧問拒否を主張した途端、相手に条件を突きつけて交渉を有利に進める主体になりうるのである。氏が言う管理職との協働を模索するにしても、何の交渉材料もなく話し合うのでは労働者側に不利である。顧問拒否という選択肢を排除しない姿勢を示すことで、ようやく労使の力関係を是正することができる。

 誤解のないよう付け加えておくと、PEACHとしては、部活動問題を解決するための手段としてだけ顧問拒否をとらえているのではない。顧問を強制できる法的根拠は存在しないのだから、顧問をするもしないも教員の自由であり、部活動問題に取り組まない教員であっても躊躇なく顧問拒否をすればよい。ここで論じたのは、部活動問題を解決する手段として見た場合の顧問拒否の有効性である。

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