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第12回:Metaverse Japan & CGLL 対談 大きなテクノロジーチェンジが起きる中でのコンソーシアムの価値とは? 

コモングラウンド・リビングラボ(以下、CGLL)のメンバー活動や取り組みを紹介するインタビュー。第12回目は一般社団法人Metaverse Japan (以下、MVJ)から3名のメンバーをお迎えし、CGLLのメンバー4名と、CGLLのエヴァンジェリストでMVJの理事を務める豊田啓介氏をファシリテーターに迎え、それぞれの活動や今後の展開などについて、いろいろ意見を交わしました。



#日本最大規模のメタバース団体であるMVJ


日本最大規模のメタバース団体であるMVJ
 
豊田:最初にMVJについて代表理事の馬淵さんに紹介していただけますか。
 
馬淵:MVJは日本とメタバースの未来に向けて活動する団体として2022年3月14日に設立され、先日3期目を迎えました。おそらく日本で最も規模が大きく、大企業、ベンチャー、自治体など230以上の団体が参加し、イベントや勉強会、メタバースライフ、Web3メタバース、実空間メタバースという3つのワーキンググループがあり、会員同士のコミュニケーションや学びの場を提供しています。
 
2023年2月に世界で初めてとなるメタバースのシンクタンクである「Metaverse Japan Lab(以下MVJラボ)」を立ち上げ、MVJにおける各種活動や国内外の産官学組織と連携した社会実装や研究活動、知の結集を通じた発信やシンクタンク業務、ルール形成・国際標準策定などを行っており、論文発表のようなアカデミックな活動もしています。
 
豊田:CGLLについて私から説明すると、フィジカル空間とサイバー空間をシームレスにつなぐ実証ラボを持つ企業コンソーシアムとして2019年から準備委員会を立ち上げ、2021年7月から本格的な活動を始めました。現在は、個別に分業しながらコモングラウンドという技術プラットフォームを開発する組織へと、特徴を持った組織に変化をしました。
 
馬淵:MJVではメタバースを広く捉えており、生成AIやロボティクスとの融合やB2Bまで取り扱っていますし、教育や医療でメタバースを社会実装するワーキンググループも立ち上げようとしています。大きなカンファレンスなども開催しますし、実現性が高いところに資金を集めて産業実装をより加速していこうとしています。MVJラボを通じて、企業や大学との研究案件を受けることも考えており、取り組みとしてはCGLLに近い部分もあるのかなと感じています。
 
豊田:続いてMVJの小宮さんと湯浅さんに、自己紹介とあわせてCGLLについて今の時点での印象など聞かせていただけますか。
 
小宮:私はMVJラボのメンバーとして、産業におけるメタバースとデジタルツインの融合や、生成AIとメタバース活用によって変化するロボットのあり方等について研究しています。本業は東京国際大のデータサイエンス領域の特任准教授をしているのと、d-strategy,incというDXのコンサル会社を経営しており、産業メタバースのユースケースを「メタ産業革命」という著書にまとめています。CGLLについては、コモングラウンドを実装する研究や、人とロボットが同じ環境認識の中で共創する空間の実証などの活動をされていると認識しています。
 
湯淺:小宮さんと同じくMVJラボに参加し、本業は大林組で3Dやデジタルツインを業界活用する開発リーダーを担当しております。またその際に必要な技術をスタートアップとコラボレーションするオープンイノベーションの枠組みなども企画しています。CGLLについては物理的なファシリティがある特徴を有し、各企業が物理空間に対して実証実験できる貴重な場と思っています。また通常個社間ではやりづらい連携を下支えするプラットフォーム的な役割もあり、協業等を通じた価値共有や、そのための土台を社会に提案するための集まりではないかというイメージもあります。

#年間約20件の実験が行われるCGLL

豊田:CGLLのみなさんからも意見を聞かせていただけますか。
 
坂東:私は日立製作所の研究所であるデザインセンタに所属し、CGLLには立ち上げ準備を始めた2019年ぐらいから関わっています。MVJに対しては、より自由なデジタルの世界を前提にしていて、形状の正しさとか以外に楽しさであるとか、エンターテインメント領域寄りの企業がたくさん集まっているというイメージを持っています。
 
政井:坂東さんと同時期からCGLLに関わっており、本業は竹中工務店で情報エンジニアリング本部と夢洲開発本部の2つに所属しながら、高機能なアップデートができるスマートビルを世の中に出そうとしています。MVJの印象は坂東さんと似ていて、いろんな業種の方がたくさん入ることでダイナミックなビジネスを起こそうとしている団体ではないかと勝手に想像しています。
 
濱中:当社はデジタルとフィジカルを繋ぐ空間レイヤープラットフォーム「STYLY(スタイリー)」を提供する会社で、今年1月に社名もPsychic VR LabからSTYLYに変更したところです。役員がCGLLのメンバーで、私自身はエンジニアとして2年前ぐらいに教育改革をテーマにしたアプリケーションを作る内閣府のプロジェクトに参加したことがあります。MVJについてはあまり実態を把握しておらず、メタバースという新しい業態に向けて新しいハードウェアや知見を共有し、法整備を進めるといった活動をされているのかなという印象です。
 
林:MVJにもラボがあるということで補足させていただくと、CGLLは私が所属する中西金属工業の敷地内に、約240平米の実験場があり、年間で約20件の実験が行われています。さらにこのプラットフォームをどう使えばいいかについて、みなさんと手探り中という感じです。
 
政井:CGLLにはLiDARや人の位置や人数などがわかる360度カメラがあり、当然ネットワークにもつながっています。デジタルツインアプリと言われるようなものを早く開発できる環境があり、さらに施設外の空間も使わせてもらうこともあり、先日は国土交通省で提供されているデータとCGLLのデータをシームレスにつないで、センサーを持たない電動車椅子を屋内外で動かすといった実験(note 第9回参照<https://note.com/cgll_osaka/n/nee9c43f2b352>)を行いました。

#コンソーシアムに参加する価値と意義

豊田:みなさんそれぞれご自身の仕事とは別に、コンソーシアムに参加する価値はどこにあると思われますか。
 
小宮:メタバースやデジタルツインなど新しく登場する技術やコンセプトで共創する中で、お互いイメージしている言葉が合わなかったり、期待値にギャップがあったりしますが、コンソーシアムの場合は直接的な利害関係なしに近い立場で議論ができますし、業界を超えた連携や、大企業とスタートアップの連携という点でも非常に重要だと思います。
 
坂東:私自身はコンソーシアムに参加したことはありますが、運営に携わるのは初めての体験ですし、世の中にまだないものを認知を高め、今まで気づいていなかった需要を少しずつ作っていくという取り組みであるというのを理解できたのはすごく大事なことだなと思いました。
 
馬淵:今後大きなテクノロジーチェンジが起きる時に、その中に生まれてくるチャンスをコンソーシアムでいち早く捉え、議論しながら自分たちのビジネスチャンスにつなげ、動き方を考えることは大事だと考えています。政府の動きもだんだん早くなっていますので、いい意味でのレギュレーションを作って動かせるのかは大きなコンセプトの一つであり、どんどん推進していこうとしています。あとはアカデミックと産業のブリッジをしていくスピード感であったり、深さを出していくというところで、海外でもどんどん新しいものが生まれてくる中でどうするかというようなことも考えていきたいですね。
 
湯淺:いろいろお聞きしていると、どういう技術や開発が必要か、バックキャスト的に見出す、テストフィールドにもなっているかなと感じました。私の本業でも現場施設や建設現場でユースケースを探ることを日々実施しておりますが、いざ建設現場や完成物であるビルなどの単体の領域を少し超えて、街区や広場のような中間的な場所でユースケースを探ることを想像すると、適切なテスト空間がないことを改めて認識しました。CGLLはそういったテストフィールドでもある点で個人としても企業としても興味を持ちました。
 
濱中:今後デジタルツインの出口として、XR技術がユーザーインターフェースとして使われることがどんどん広がると考えています。弊社で手がけているARプロモーションや、都市のビルなどにバーチャルコンテンツを配信する都市XRのユースケースをいち早く知るという点で、さまざまな実産業領域の方たちと連携するコンソーシアムという立ち位置での参加は、いいことだと思っています。
 

#社会の変革には組織を超えた連携が必要

豊田:それぞれの立ち位置の違いはあるけれども、業態や領域、規模が違う人たちが混ざる価値というのがだいたい見えてきた気がします。最後に今後の活動について意見を聞かせてください。
 
林:私自身は事務局の立場で参加していますが、せっかく敷地内に実験場があり、分野が全然違ういろんな会社さんが入ってこられて、何かができるいい機会をもらっていると思っていますので、そこが伝わるよう見える成果を出し、社内に展開して事業に活かしていけるよう取り組んでいきたいと考えています。
 
政井:コモングラウンドに関しては、実際にラボを作って実験しながら少しずつボトムアップして、一般の人にも分かりやすい形を追求しつつ、こういう世界観で人の暮らしがどう変わり、良くなるかをわかりやすいユースケースで示すのがすごく大事だと思っています。小宮さんのメタ産業革命を拝読していて、すでにたくさんの企業がいろんな取り組みをしていることに驚いていますし、この先、産業革命としてどのようになっていくのだろうと考えていますし、意見を聞かせていただきたいと思っています。
 
小宮:メタバースに関してはツールや技術の開発は進んでいますが、あくまでそれは手段であり、それをどのように活用して産業・社会や経営・オペレーションに変化を起こしていくのかといった目的軸の「ユースケース」の議論が重要です。先端的な企業では技術はあくまで「手段」として、それをどう使いこなして経営を変えていくかに主眼を置いて試行錯誤されており、これからは企業・業界を超えた横の連携も非常に重要です。起こる変化の解像度・イメージをなるべく具体的にして、関係者の間でビジョンを共通させて一気に加速していくことが非常に重要です。MVJラボにおいてもこうした点を心がけながら様々な企業や組織との連携を行っていきたいです。
 
湯淺:ソリューションとしてのデジタルツインや個別テクノロジーよりも、それを理解させ、実行する体制づくりやオペレーションにどう組み込むか、今までなかった業務フローをどう定着させていくかの方が何倍も大変ですし重要です。変化の中では一度生産性や便利さがマイナスになる事実を理解し、そこ乗り切らなくてはいけない葛藤もありビジネス判断も必要で経営層などの理解も必要です。MVJは、私にとっては会社内での動きとは別に、外にある組織の中での活動です。将来的に、利用すべきという危機感が社外・社会的に醸成され、結果的に自社のデジタルツインの取り組みの後押しになればと思います。
 
濱中:弊社はもともと空間を身にまとうという、空間にバーチャルなものを融合させていく世界が実現されるよといったことを言っている会社なんですけれども、まだ具体的な形が見えてない中で豊田さんが提唱されるコモングラウンドは一つの形であり、実際に産業として携わっている方々との連携から他の形も見えてくるものもあり、もっと連携してお互いにメリットや強みを生かせる体制が作れればいいと考えています。
 
坂東:湯浅さんがおっしゃるように、メタバースが加速する中で実際の業務にどう落とすのかがすごく大変で、今の自分たちの当たり前を次の世界のやり方にどう変えていくかというのは、会社を超えて議論すべき対象なのかもしれませんし、今後もみなさんと一緒にやれるといいのではないのかなと考えています。
 
豊田:MVJはより広いコンソーシアム型で情報の流動性を高めてシェアをし、さらに外の政府や海外も視野に入れた活動をかなり戦略的にされていますが、それに対しCGLLは実際の場所を持っているのが強みで、そこで知やノウハウの共有が起こる設置型になっている。今までにない領域を成長させるには、その両方面から協力して素早くピンポイントでノウハウを作って実装をすることが大事だと思うので、これを機会に両者でいろいろ連携ができればとあらためて感じました。
 

インタビュー参加者のプロフィール:
 
●ファシリテーター
CGLLエヴァンジェリスト、建築家、東京大学生産技術研究所 特任教授 豊田 氏
 
●一般社団法人Metaverse Japan <https://metaverse-japan.org/>
共同代表理事  馬渕 氏
・MVJ Lab研究員 
東京国際大学 特任准教授 / 株式会社d-strategy,inc 小宮 氏、
大林組 湯淺 氏
 
●コモングラウンド メンバー
日立製作所 坂東 氏
竹中工務店 政井  氏
STYLY 浜中 氏
中西金属工業 林 氏