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この1ヶ月、本当に奇妙な日々だった

倉田さんが モニカ 倉田 ましろ コスプレ衣装一歩距離を詰める。あたしも一歩距離を取る。そして、倉田さんがまた一歩詰め寄る。あたしはもう下がれない。倉田さんとドアに挟まれる形になった。「私を抱いてください……。」潤んだ目で、あたしの目を見つめてくる。こうなると、女は面倒くさい生き物に一変する。困ったものだ。あたしは倉田さんに何も与えたつもりは無かったのに、いつの間にこうなったのか。とりあえず、穏便に済むように返事をする。「あたしは倉田さんのこと大切に思ってる。けど、大切な後輩だからこそ、そんなことしたくない。大切だから、傷つけたくない。ごめんね。」「……好きなの。美咲さんのことが。美咲さんの彼女になれるなら何だってする……!」「ありがとう。でも、ごめん。」倉田さんの目から涙が流れる。もう、この家には居れないだろう。「じゃあ、なんで、あんなに優しくしたの……!そんなの、ずるいよ……!」心から叫ばれている気がした。訴えるような声だった。「倉田さんにはもっと素敵な人がいるよ。あたしじゃ役不足だから。」「役不足でも、美咲さんが良いの!」何故、人間に対して、ここまでの熱量を持てるのだろうか。しかも、あたしに。全てに諦めているような、怠惰の極みのような人間にもかかわらず、倉田さんはあたしに価値を見出した。けど、その価値は勝手に見出されただけだ。本当のあたしは別のところに存在している。やはり、最後まで倉田ましろは理解し難かった。あたしはポケットから財布を取り出す。「ごめん。これじゃ足りないかもしれないけど、お世話になったから、受け取って。」倉田さんは、あたしの手を勢いよく叩く。札が舞い落ちていく。「私が欲しいのは、こんなのじゃない……!」目を尖らせ、声は低く、ほぼいつも下がっていた倉田さんの眉毛は上がっていた。あたしはそのまま玄関を出た。夜行性ハイズ 花園 たえ コスプレ衣装夜風はもはや寒かった。倉田さんと過ごした1ヶ月で随分と季節は変わった。この1ヶ月、最初にゲロを吐かれ、最後に睨まれ、本当に奇妙な日々だった。

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