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芽吹きの喜び。海を渡って生きるチカラ

花泥棒は罪にならない。

これは本当だろうか?


秘かな楽しみとして、落ちている種を拾うという趣味を持っている。もちろん公共の場から拾う。野山であるとか公園だとか海岸とか。

そういう場所で種を拾って持ち帰り、そして自宅で育てる。

もともとは夫がそのようなことをしていた。そこらじゅうで西洋たんぽぽが見られるようになり、在来種であるたんぽぽを保護したいという思いから「たんぽぽ」コレクションを始めたのだとか。

それに対して、私は、ただの種泥棒である。


以前、ハマユウの種を「購入して」植えてみたのだが、ほとんどが発芽しなかった。新鮮ではなかっただけかもしれないのだが、私は非常に落胆し、「ハマユウの種を育てるのは難しいのだな」と思った。

今年の2月の終わり静岡方面へと旅行した。海岸沿いの広場で、たまたまハマユウの種を発見。近くに小さなハマユウの株があったので、そのハマユウが残した種なのだろう。

一番先に手に取った種は、既に芽ばえが始まっていた。そして、「この種はいける」という直感を得た。生命力を感じて、小さいけれども確かな歓喜がフツフツと湧いてくる。周りに落ちていた種とあわせて3つの種を持ち帰った。

芽吹いた種と一緒に周りから拾ってきた2つの種は玄関にポンと置いていただけだったが、芽吹いてきている。

なんと生命力の強い種か。


ハマユウの種は水に浮くつくりとなっている。海を渡ってたどり着いた先で芽吹いて、根を下ろすのだという。

ふるさとを離れ、海流に乗って大海原を渡り、たどり着いた場所で根を下ろす生き方。そんなハマユウに自分を重ね、いつかは育ててみたいと思ってきたのだ。

だから私は、3つ拾った種が3つとも芽吹いたことに喜びを隠せなかった。

ご縁のあったハマユウの種を育ててみよう。

芽吹いた種に「生きる喜び」を重ねつつ。