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草むらの蝶々たち

何をしているのか?蝶々(ちょうちょ)が草の上を歩いていた。

蝶といえば空を飛ぶ生き物だと思っている。だから草の上を歩くという仕草が特別なことに思えたのだ。

生き物の行動は不可思議なことが多い。その不思議さに興味を惹かれるから、観察をするのかもしれない。

私はしばらく草むらの蝶々を観察していた。

細い葉の上を歩いていく。まるで平均台の上を渡るような姿だ。

先頭を歩く蝶に引き続いて歩く蝶。まるで列をなすアリのように蝶たちは歩いている。

最初に見たときは、珍しいと感じて感動した。

だが、その様子を観察しているうち、徐々に、悶々としはじめたのだ。

そして、悶々とした感覚は、しばらく心の中に残っていた。

考えてもわからない。

「言葉が通じないから仕方ないな……。」

と、自分に言い聞かせようとして、ハッとなった。

そうだ。そうなのだ!

言葉が通じるときには必ず意思の疎通ができるとは限らない。言葉が通じるなら意思疎通ができるということ自体が、ただの思い込みかもしれないなと。

実際、生き物というのは不可思議な存在。

人間も生き物である。周りから見ていて理解ができないような行動をする人もいるのだ。

草むらの蝶々のように、行動の理由がわからないことも多々ある。

わからないことはワカラナイままでいい。

無理やり理由を探したり、原因を求めたりするからややこしくなる。

わからないことを「理由は不明」として記憶の隅に追いやってしまおう。だが、「理由は不明」と呼ぶのは味気ない。

理由がわからない生き物の行動のことを「草むらの蝶々」とでも呼ぶことにするとしよう。