言葉使いのローカル・ルール
内輪だけで通じる言葉使いというものがある。
小さなグループだとか、親しい間柄だとか、そういう内輪だけでの独特の言葉使いとでもいうのか。
それは、どういういきさつで生まれたのかは不明。だからかもしれないが、初めて見聞きするときには、なんとも拍子抜けしてしまうのだ。
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夫の実家には、そういう内輪だけ通じる言葉使いローカル・ルールがある。
「もう年だからなぁ......。」と言葉を発するようなタイミングでは、「お年頃(としごろ)だから。」と表現する決まりなのだ。
それも、ちょっと照れたそぶりでいう流れ。
歯槽膿漏の治療に歯医者通いをするとか、五十肩で整形外科に通っているとか、そういときに、
「お年頃だから。」
というのだ。
そんな言葉の使い方をしたことがなかったため、最初に見聞きしたときには、どうリアクションしてよいのが困惑してしまった。
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しかし、今では、自分のほうから積極的に使うことが増えた。
まさに、「お年頃」になったからだろう。
最近、抜け毛が酷くなった。
家の中を掃除していると、ウンザリするほど抜け毛だらけだ。
ルンバのためにまず抜け毛を拾ってから起動する配慮をするほど、髪の毛はたっぷりと抜ける。
抜け毛外来を受診してみようかなとぼんやり思っていたとき、誰に話すわけでもないのに、心の中でつぶやいた「お年頃だからなぁ。」と。
夫の実家で使われていたローカル・ルールであったが、今、自分の中にしっかりと刻まれていることに気づいてハッとなった。
それだけの時間を夫と一緒に過ごしたからだろうか。
「お年頃」になった自分をじわじわと感じつつ。