マガジンのカバー画像

父と私とジャイアンツ

26
2019年6月に他界した実父との回顧録です。
運営しているクリエイター

#父と私とジャイアンツ

父と私と「4万円」

飛行機に乗るというタイミングになると父のことを思い出す。 それは、私が身なりにほとんど構わなかった頃。 いや、今もそれほど構うわけではないのだが、今よりももっと身なりに構わなかった時期がある。 当時は、十分にお金がないということもあり、身なりに構うコト自体に抵抗があった。着ているものが清潔でさえあればよいという考えだったので、どこへいくのも同じ服装。飛行機に乗るときも、近所に買い物へいくときも、同じ服装だった。 あるとき、実家に帰ったときのこと。 いつもは、羽田へと

春の記憶。理想の最期について

ここ数日、自分の中に「日常」が戻ってきたような気がする。 春の記憶が戻ってきているからだ。 引越しした直後、仕事と確定申告でテンパっていた2月下旬。父が緊急入院した知らせを聞き、寝ずに仕上げた申告書を提出して、実家に向かったあたりから、私の生活に「日常」はなくなっていた。 表向きには「平静を装った」ことも災いしている。「自分の病気のことは誰にもいうな」という父の願いを聞き入れたためだ。 なぜ、父は病気のことを明かしたくなかったのか? それは、自分が自分らしく死ぬため