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父と私とジャイアンツ

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2019年6月に他界した実父との回顧録です。
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2020年4月の記事一覧

「父に託された宿題を解く」という生き方

父が他界して10ヶ月が過ぎた。 経験したことがある人なら「10ヶ月」という数字にピンと来ると思う。10ヶ月後の命日は相続税申告期限だ。 この10ヶ月の間、いろいろな「初めてのこと」が起きた。大変という言葉以外に説明する言葉が浮かばないほど、大変だった。 父と娘という関係の割には親しいほうだったと思う。だが、今まで以上に、父のことを知る機会があった。 想像していた以上に、父は繊細な思考回路を持ち、細やかな配慮を尽くす人だったことを知った。そういう父の一面を知ることになっ

托鉢の僧侶に施しを

先日、都心へと出かけていたときのこと。 日本橋の下で托鉢する僧侶がいた。 僧侶のほうをチラッと見ながらも、私は急ぎ足で通り過ぎた。時間に追われながら所用を済ませる必要があったからだ。 そして私は目的地へと向かう間、父との記憶を手繰り寄せていた。 初めて「路上で托鉢をしていた僧侶に施しをした」と父に伝えたとき、諭された言葉を思い出したのだ。 父の考えによると、托鉢をしている僧侶の中には乞食のような考えの者もいるのだという。僧侶の恰好をしてタダでお金をもらおうとするとい