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#ソシャゲの話をしよう。「なぜコンテンツは高難易度化するのか」

#ソシャゲの話をしよう
どうも、死に急ぐ生命の果実です。

みなさん、ソシャゲ遊んでますか?
イベントのたびにインフレ的に上がる難易度に必死でついていってますか?
今回は「なぜコンテンツは高難易度化するのか」というお話。
言い換えれば、「運営はなぜコンテンツを高難易度化・複雑化させたがるのか」。
もしよかったらお付き合いください。

ざっくり以下のような構成でお話をできればと考えております。


運営のスタンス

突然ですが。
運営は大きく2種類に分けられます。

  • 数値からユーザーの動向を拾うか

  • ユーザーの声から動向を拾うか

これらのふたつを両立させている運営ももちろんいますが、。それぞれ具体的に解説していきます。

数値からユーザーの動向を拾う運営

多くの場合、ユーザーの動向を観測するときは、数値を見る場合が多いです。いわゆるKPI計測というものですね。
これにより、客観的で定量的なユーザー動向が把握ができます。
今コンテンツを遊んでいるユーザーはn人いて、アクティブがそのうちどれだけで、売上はどれくらいが見込める……という具合ですね。

観測が定量的であれば、運営目標や指標も同じく定量的に設定することができます。
「今のアクティブユーザーがn人だから、新規ユーザーをn人獲得します」だとか、「アクティブユーザーがn人で、それぞれにn円課金してもらえればこの額の売り上げが達成できます」みたいなイメージですね。

定量的な目標が決まれば、あとはそれを実現させるために粛々とコマを進めるだけ。
ここでは最善を尽くせばよいので、あえてギャンブルに手を出す必要はありません。
この手の運営は、実直であり、現実的です。
予定にない変なパフォーマンスをする必要はありません。
(その代わり、無駄な情報が出てこないため、ユーザーが不安になるくらい静かだったりしますが)

ユーザーの声から動向を拾う運営

一方で、「ユーザーの声を拾う運営」はどうでしょうか。
基本的に彼らは「ユーザーの反応」を基準として動きます。
まあ、運営とは別でアナリティクス専門のチームがあり、そちらで定量的なデータを共有する場合もあったりしますが、それはそれとしてユーザーの声に対して敏感に反応する運営は、います

彼らは定量的なデータというものを見ないか、あるいは見ても理解していない、信用していない。信じられるのはユーザーの生の声だけです。
掲示板やSNS、あるいはアンケートなどで集まった反応を元に、今後の運営方法を決めたりします。
もちろん、これが悪いという話ではない。……が。だが。

彼らにとって、一番恐ろしいことは売り上げが下がることではない。
「ユーザーの声が聞こえなくなること」が一番恐ろしいのだ。

そりゃあそうだろう。
旅に地図は必要だし、航海に灯台は必要なのだ。
それらがないことを想像していただければ、運営の感じる不安な気持ちはイメージしやすいでしょう。

その性質に起因する問題

しかし。
前提として、何万人もユーザーを抱えるソシャゲで、ユーザーの声というのは、そもそもの絶対数が少ないし、過度なバイアスが掛かっている。
例えば、始めたてで特に思い入れのないゲームに、真っ当な指標となる意見を言うユーザーはいるでしょうか。

まぁ、いないですよね。

で、コンテンツの黎明期や衰退期でアクティブユーザーが減ってくると、運営の不安は加速します。
なぜなら、前述した通りユーザーの声が聞こえないから。
なので、なんとしてもユーザーの反応を得ようとして、コンテンツの調整は変な方向にブレ始めます。

具体的な例が、過度な高難易度化や複雑化です。
(ここでタイトルの話題に繋がるわけですね)

この手の運営は、ユーザーが黙々とプレイするよりも、文句や不満を言ってくる方が『安心する』のです。
不思議なことだと思う方もいらっしゃると思いますが、まぁそうなのです。
無視されるよりも、かまってもらえる方が安心する心理に近いのかもしれない。

過度に高難易度なクエストを作って「クリアできない」「しんどい」「クソゲー」「引退します」という声を聞く方が安心するのです。
また、『ここまではユーザーは遊んでくれた』というある意味の事実もあるので、この方針は加速していきます。
今よりも難しく、より高難易度となっても、一定のユーザーはついてくるはず。と。

いわゆる「生存者バイアス」というものに近い状況ですね。
観測できる情報を、自分たちの都合のいいように解釈し、聞こえない声はそもそも『ないもの』として扱い、判断する。

当然、運営は暴走します。

大事なのは心折れてやめた人の声なのですが、それは運営には届かない。
当然です。誰も口に出さないから。死人に口なし。

生存者バイアスの例。詳しくは「生存者バイアス」「戦闘機」とかで検索してください。

施策にしてもそう。
複雑な達成条件や報酬設計のイベント施策をリリースしても、「ユーザーは喜んでいるようです!」の言葉しか選択して拾わない。
または、その声を聞きたいがために、あえて複雑で達成条件の厳しいものをリリースしたがる。

こと、ゲームにおいては「開発者の難易度に対するバランス感覚」はブレやすい。
また、新規ユーザーの定着のための低難易度の追加はやりたがりません。
なぜなら低難易度は、ゲームの攻略に慣れた開発者自身が「おもしろくない」と感じる体験になりがちだからです。
昔の難易度の高いクソゲーは、だいたいそういう経緯で生まれます。

一応注釈を入れておくと、決して高難易度自体が悪いわけではありません。

問題はその実装目的です。

「ユーザーが高難易度を求めてるので!」と運営は説明するでしょう。

で、そう言っているのは誰でしょうか?
全体の何割がそう言っているのでしょう?
それについてこられないユーザーはどうするのでしょうか?
新規ユーザーの定着を考えていますか?

言いたいことはいろいろあります。

「ユーザーの反応がないのが不安だから、反応を得るために高難易度を実装しました」。
あるいは「反応を得るために、課金石やチケットを配りまくりました」。
「特定のユーザーから反応を得られるように、実装キャラをチョイスしました」。
「15時や18時に変なプッシュ通知入れました」。

あるある。

こうして書いてみると、後者の運営は自己満足に陥りやすい傾向があるように思えます。
自己満足の結果、多くの離脱ユーザーを生み、ひいてはコンテンツを傾かせてしまう場合すらある。

ソシャゲの他の娯楽は大量にある時代。
ただでさえ厳しいコンテンツはすぐに切られてしまうというのに、これが意識の外にある運営は、いる。

まとめ

話をまとめましょう。

そもそも、計画的で計算された高難易度の追加や複雑化であれば、よい。
ただ、そうでない場合は運営の暴走であることはままある。
そして、原因は数値を見ないこと・計画性がないことに起因する。
で、これらの調整は経験のあるスタッフがそれなりの地位にいないと難しい。

一旦暴走したコンテンツは、インフレの圧力に流されるため、方向転換されて正常化することはまず難しい。
それほど、運営の姿勢・計画性は大切なのです。
で、その感覚やスキルは失敗して痛い目に合わないと大抵身につかない。

人員を使い捨てている場合ではない。社内教育をしてください。

つらつらといいたいことを脈絡なく書いてしまいましたが、本日僕から言いたいことは以上です。本年もよろしくお願いいたします。

余談。
そもそも「運営は自社コンテンツを遊んでない」という事例もあるはある。それはまた別の根深い問題なので、そのうち書くかもしれないし書かないかもしれない。

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