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セテラ作品の思い出⑭ 映画の原点がここに!ルネ・クレールについて

私は1997年から2003年ごろまでの間、パリに年の半分くらい住んでいたことがあります。その頃に、シネマテークにさんざん通い、フランスのクラシック映画をかなりたくさん見ました。無声映画時代のものからトーキーに入ってすぐの頃の映画、そして1940~50年代の黄金のフランス映画時代のものまで、映画発明者のリュミエール兄弟の国フランスの映画に対する文化度の高さはやはり世界一だと思っています。シネマテークではいつも魅力的なプログラムが組まれていました。私が日本映画の傑作、溝口、小津、成瀬、黒澤などの映画をたくさん見たのもパリのシネマテークで特集上映をしていたからです。その頃に一番気に入ったのが、ルネ・クレールでした。

(2019年、パリ・シネマテークで開催されたルネ・クレール・特集上映の予告。これだけで監督の偉大さがひしひしと伝わってきます)

今回はセテラ見放題パックにルネ・クレール作品が4作品ありますので、それらをご紹介しますね。元々ジェラール・フィリップが好きで古いフランス映画を見るようになったのですが、ルネ・クレール監督のものが3作品あり、特に『夜ごとの美女』はチャーミングで面白くてジェラールのコメディセンスが最高に楽しめて大好きな映画です。そして偶然ですが昨日ご紹介したソクーロフ監督の傑作『ファウスト』の原作、ゲーテの〈ファウスト〉の物語をクレールは1949年にジェラール主演で『悪魔の美しさ』という作品に仕上げているのです。2作品を見比べたら同じファウスト伝説とは思えないほど、びっくりします!ジェラールは、この映画の中で伝説の美しい立ち姿を残しました。

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(『悪魔の美しさ』を象徴する立ち姿の美しいジェラール)

ジェラールの主演の映画はやはり彼のスター性が前面に出て当然なのですが、ルネ・クレールの純粋な素晴らしさを伝えるには戦前の1930年代初めに作られた『巴里祭』を見てもらうのが一番だと思います。ルネ・クレール入門編で、つまりこの1930年代に、すでに映画に必要なことをすべて発明してしまっていたことがわかります。ルネ・クレールこそ映画の原点、映画の神様だと思っています。今回の見放題パックに入っているのがこの『巴里祭』なのですが、更に1930年代のクレールの傑作『自由を我らに』『ル・ミリオン』が来年また4Kで甦ります。そしてクレールの円熟期1957年の最高傑作が『リラの門』です。パリの下町の人情もので,そのユーモアとストーリーテリングの妙はこれこそクレールの真骨頂と言えます。『巴里祭』と『リラの門』をリバイバルした昨年のルネ・クレール映画祭は、東京の恵比寿ガーデンシネマ他全国のミニシアターで上映していただけて、往年のファンと若い映画ファンがたくさん来てくださいました。 

ルネクレール2本

この見放題パックを見る人は映画ファンだと思いますが、ルネ・クレールを知らない方は、是非一度見てみてください。知らないまま映画ファンを続けておられたら、ちょっと残念な気がします。人生の潤いと輝きをルネ・クレールの映画の中に見つけられるからです。デプレシャン監督がいつも言っている”映画の中に人生がある”と言うのは、こういうことなのかな、と思います。

最後に、もしもルネ・クレールのファンになってもっと知りたくなったら、ルネ・クレールの素晴らしい評伝【ルネ・クレールの謎】があります。2000年にこの本を日本でも紹介したいと思い、ワイズ出版で出していただきました。今でも入手はできるようですので、ご興味のある方はぜひ。かなり読みごたえありです。

山中陽子

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🇫🇷ルネ・クレールの大傑作4本『夜ごとの美女』『悪魔の美しさ』『巴里祭』『リラの門』をはじめ15本のセテラ作品がアップリンク・クラウド、セテラ見放題パックより視聴可能です👀至高のヨーロッパ作品をご堪能ください🎞🖥📱



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