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世界的に低下するニュースへの信頼度・関心、ところが日本では・・・

あなたはメディアの情報をどこまで信頼していますか?

以下のリンク先にある『デジタル・ニュース・レポート』は、2022年1―2月にかけ、日本を含む6大陸・46カ国の約9万3,000人(日本は2,015人)にオンライン上でアンケートを実施した、その調査報告書です。
ちなみに、初回の調査は2012年に公表され、これが11回目になります。

◆世界では信頼度が低下しているのに・・・

結論としてはまず、約半数の21カ国でニュースに対する信頼度が低下しています。
ただ、注目すべきなのは、日本を含む7カ国でニュースへの信頼度が増加しているというという事実です。(日本は前年比2%増の44%)

さらに興味深いのが、「朝一番」でニュースに接する媒体に関する質問に対する回答で、世界的にはスマートフォンが優勢で、ノルウェー(43%)、スペイン(39%)、フィンランド(36%)、イギリス(35%)などで他の媒体を大きく上回っているのですが、日本においてはテレビ(45%)が単独で著しく高く、スマホ(24%)、印刷媒体(8%)、ラジオ(3%)という割合になっています。
これは「朝はテレビ」という生活習慣が、日本の家庭に根付いているということだと考えられます。

ところが、最新の『報道の自由度ランキング』では、日本は前年よりも順位を落としているのです。

◆報道の自由度は低下している

『報道の自由度ランキング』とは毎年「国境なき記者団(Reporters Without Borders・以下RSF)」によって調査・発表される報道の自由に関する国際ランキングです。

ちなみに、2022年の報道の自由度ランキングにおいて、日本は71位、100を最高レベルとするグローバルスコアは64.37で、前年の67位より4位もランクダウンしていて、先進国ではG7国家の中で最下位という結果になりました。

それが原因なのか、世界と日本で情報格差が生まれている事が多々あります。
その例(主に昨年)をいくつか紹介します。

◆いつの間にか安保“条約”を結んでいた日豪

昨年10月22日に日豪両首脳が、安全保障協力に関する共同宣言に署名したという報道がありました。
しかしながら、日本と海外とで報じられた内容に違いがありました。

例えば日テレNEWSですと、

「日豪首脳「安保共同宣言」に署名 増大するリスクに対応」
岸田首相が訪問先のオーストラリアでアルバニージー首相と会談し、安全保障に関する新たな共同宣言をとりまとめました。
会談で両首脳はウクライナや北朝鮮問題の他、中国が海洋進出を進める東シナ海や南シナ海情勢などについて意見を交わしました。
両首脳は、増大するリスクに対応するため両国のパートナーシップを進化させるとして、安全保障に関する新たな共同宣言に署名しました。
岸田首相「新たな宣言は、この確固たる基盤に立ち、安全保障、防衛協力の今後10年の方向性を示す羅針盤となるものです」
新たな宣言では、「緊急事態に関して相互に協議し対応措置を検討する」とした他、「自衛隊とオーストラリア軍の協力強化」、さらに「サイバーや宇宙分野での協力」なども明記されました。
岸田首相は「両国の戦略的パートナーシップは新たな次元に入った」と意義を強調しました。
また、日本にとってオーストラリアがLNG(=液化天然ガス)や石炭などの最大の供給国であることを踏まえ、会談では、資源エネルギーの安定供給に向け協力を進めていくことでも一致しました。

ところが、同じ内容が香港のサウスチャイナモーニングポストによると以下のような記事になります。抜粋します。

日本とオーストラリア、中国の軍事的台頭に対抗するため画期的な安全保障条約に調印
オーストラリアと日本は中国の軍事的台頭に対抗することを目的とした安全保障条約に調印した。
これにより日豪両国の軍隊がオーストラリア北部で共同訓練を行うことが可能になった。
専門家は、この協定は日本が米国主導のファイブアイズ情報共有同盟に参加するための新たな一歩であると見ている。
日本大学情報史の専門家である小谷賢氏は、「日本が米国以外の外国とシギント情報を共有できるようになったのは画期的な出来事だ」と語る。
これはクアッド(豪州、インド、日本、米国)の枠組みを強化し、日本がファイブアイズに加盟するための第一歩となる」とも述べている。

まず気になるのは、記事の見出しが、日本のメディアでは「宣言」となっているのに対し、海外のメディアでは「条約」となっている事。
「宣言」と「条約」では意味が全く違います。
簡単に言えば「条約」は正式な文書で約束すること、「宣言」は公に意思表明するだけです。

また、この条約調印が、ファイブアイズに日本が加盟する布石となるのではないか、という部分が日本では報道されていません。

ファイブアイズとは米英などアングロサクソン系の英語圏5カ国による機密情報共有の枠組みです。
米英が立ち上げカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わりました。「エシュロン」と呼ぶ通信傍受網で電話やメールなどの情報を収集しています。
参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同で活用します。長らく公式に存在を認めていませんでしたが2010年の関連文書の公開で活動が明らかになりました。
また、シギント(SIGINT、英語:signals intelligence)とは、通信、電磁波、信号等の、主として傍受を利用した諜報・諜報活動のことです。

◆インドへの防衛装備輸出を始めた日本

さらに、海外の報道を見ると、日本国内でワイドショー的に些末な報道がされている中で、「日本はこういった方向に向かっているのか」と驚く情報を発見することがあります。

これも、香港のサウスチャイナモーニングポスト紙の記事を抜粋したものですが、

日本、ステルスアンテナをインドに輸出へ
日本は、ステルスアンテナをインドに輸出することを計画していると政府筋が10月15日に発表した。
輸出する予定の「ユニコーン」は、角型の構造物に多数のアンテナを収納したシステムである。2022年に就役する海上自衛隊の新型護衛艦に搭載される。
ユニコーンシステムは、アンテナを1つの構造物で覆うことで、敵の電波の反射を抑えることができる。日本とインドは、9月に東京で行われた外務・防衛閣僚会議「2プラス2」の際に、ユニコーンシステムの移転について協力することで合意した。
これは2015年に締結された防衛装備品・技術に関する日印協定に基づく最初の輸出となる。
この輸出は、インドがロシアへの軍備依存を減らすことを奨励し、中国の軍事的台頭を踏まえて日本とインドの防衛関係を強化することが目的であるという。
日本とインドは、オーストラリアと米国を含む4つの安全保障枠組みである「クワッド」の一員であり、インド太平洋地域における中国の主張の高まりは、両国の問題の1つとなっている。
日本は国内の防衛産業を支えるため、防衛装備品や技術の輸出を増やしたいと考えているが、戦争を放棄した憲法があるため、厳しい条件を設定している。
例えば、防衛装備品の移転に関する包括的な3原則では、攻撃ではなく監視や掃海などの目的で使用されるべきであるとされている。
今回の協定は、故安倍晋三元首相が率いる政府が2014年に、長年にわたる武器禁輸措置を初めて大幅に見直し、防衛装備品や技術の移転に関する規則を緩和したことに伴うものだ。
インド以外では、日本はアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、オーストラリア、フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムの11カ国と同様の防衛装備移転協定を締結している。
今年末に予定されている日本の長期安全保障・外交政策ガイドラインである国家安全保障戦略の改定を前に、与党の自民党は、より多くの装備を輸出できるように規制を緩和することを提案している。

かつて、日本には「武器輸出三原則」がありました。しかし2014年4月1日にそれに代わって「防衛装備移転三原則」が閣議決定されました。

武器輸出三原則は、基本的に武器の輸出や国際共同開発をほぼ認めない内容でした。それに対して、防衛装備移転三原則は、武器の輸出入を基本的に認めて、その上で禁止する場合の内容を規定する内容となっているそうです。

今回のレーダーは基本的に監視に使われる防衛装備なので、原則的に全く問題ないのでしょう。

ただ、こういった武器・防衛装備の輸出が国内でさしたる議論もなく事もなく進んでいるという事には違和感を覚えます。

◆今日もまた“誰も知らない”

少し前は、統一教会と政治家の深い関わりについて、現在は連続強盗事件の首謀者の件で大騒ぎし、個別の政治家の醜聞を取り上げるマスコミ。
もちろんそれも大事でないとは言いませんが、こういった国の方向性に関する情報を海外のメディアから教えられるというのもおかしな話です。

そして国会では、本日8日、衆議院予算委員会で岸田総理大臣も出席して集中審議が行われますが、議論の目玉として野党側が、荒井前総理大臣秘書官の更迭を受けて、多様性に対する政権の姿勢を追及する方針で、その他予算に関するまともな議論は行われないまま、予算案自体はあっさり通ってしまう可能性が高いです。

国会でまともに議論せず、メディアもそれを追求せず、
誰も知らないまま、世の中は大きく動いていく。

それでも、日本人はメディアを信頼し、朝は必ずテレビをつけるのです。


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