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地上から屋上へ、建物の中から外へ、古(いにしえ)の建物とアートを楽しむ
「CET23/OPEN START」 鑑賞ガイド【清洲橋通り南コース】
取材・文・撮影:佐藤久美
20年前に開催された「Central East Tokyo/セントラルイースト・トーキョー(通称CET/セット)」は、アート・デザイン・建築と様々なアーティストが横山町・馬喰町・東日本橋の問屋街の空きビルで展示をした伝説のムーブメントです。2010年の「CET/10 OPEN END」を最後にいったん活動を終了しましたが、「CET23(セット・ニーサン)」はOPEN STARTをテーマに再起動しました。
それぞれが伝統的建造物である展示会場は近接しており、一日で歩いて見て回ることができます。会場を巡り、アーティストによる場と人との関係を変化させる想像=創造を呼び込む仕掛けをお楽しみください。
清洲橋北側コースはこちらから ↓
清洲橋通り南側からスタートするコースは、地下鉄馬喰横山駅A2あるいはA1出口からが便利です。6 大原第五ビルでは3つの展示を鑑賞できます。
6 大原第五ビル
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meat meet more meat|野老朝雄、小林泰聡(平日11:00-21:00/日祝11:00-18:00)
・1F
THE BURGER SHOP馬喰町では、東京2020オリンピック・パラリンピックの紋様のエンブレムをデザインした野老(ところ)朝雄と、CET06からCET08まで飲食店舗を展示会場として野老に提供した小林泰聡が、CET23のコラボレーション企画として「魯肉(るーろー)バーガー」を生み出しました。台湾帰りの野老がアイデアを提供した「魯肉(るーろー)バーガー」は新作グラフィック「肉」のパッケージに包まれ、2,000円(ポテト付き)で購入すると「MEAT MEET MORE MEET」Tシャツが500円割引で購入できます。
最新作「Tokolo Distance font2023」はコロナでキープ・ディスタンス(距離を取れ)と言われた体験から、遠くから見ると文字がわかるグラフィックをデザインしているとのこと。1Fや地下のカフェには「Tokolo Distance font2023」をはじめとした、新作グラフィックや過去のスタディワークが壁に貼られ、来るたび増えていく予定です。
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百年の窓|沈み|Shizumi(11:00-18:00)
・2F(階段室)
大原第五ビルの正面階段をあがった2階に、美しいドレスをまとったトルソーが見えます。扉の中のパイプスペースとしてコンパクトに塞がれた空間に、分厚い型版ガラスの小窓があります。かつては外を眺めるための窓が、100年間の増築の間に塞がれた空間に残り、時間の堆積とそこに滲む人のぬくもりにアーティストは惹かれました。ドレスの肩やスカートに見られるドレープのグレーと、小窓のある塞がれた空間のコンクリートと素材は全く違うものの調和し、まるで最初からそこにあったような空間になっています。
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be in between|四方謙一(11:00-18:00)
・4F-RF
2階から屋上をめざして階段を上っていくと、床・壁・手すりに作品がいくつも現れます。昼間に訪れると、作品が窓の光を反射したり、時には窓からの光を切ったり、影が壁に映ったり、作品が存在することで階段の見え方がかわってきます。階段に立体作品が介入することで、階段の上下階や各戸を接続する役割以上の状況に変化していきます。
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7 birthビル
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Seam with us|金井聡一郎(9:00-21:00)
・RF
作品にたどり着くまでの体験も作品の一部なのかもしれません。birthビルに入って右奥に進み、茶色いエレベーターで4階まで上がります。4階で左に曲がって階段を5階に向かって上るとドアが2つあります。右のグレーのドアは鍵がかかっているかもしれませんが、鍵を開けて外にでます。ピンク色の外階段を上がったところにキャプションが見えるので、ようやくここが展示会場だとわかります。21:00まで開場しているので、暗くなってからの鑑賞はまた昼とは違う風景かもしれません。
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8 日本橋横山町スクエア
夢夢神社|津村耕佑(10:00-18:00)
日本橋横山町の再開発工事で現れた大きなビルの1階に、関西の有名スーパー「フレスコ日本橋横山町店」がある日本橋横山町スクエア。その一角にファッションデザイナー津村耕佑の作品、夢夢神社はあります。屋根の上頭部は、宝珠に替わって「夢夢」という装飾をお見逃しなく。CET23開幕初日の「夢の儀」では、夢祈願、巫女による御神酒、水引進呈が行われ、CET会場を巡りました。
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12 鞍掛橋交差点
一度清洲橋通りまで戻ってから、馬喰町交差点まで出てから左に曲がり、江戸通りを鞍掛橋交差点まで進むと両脇に花壇が見えます。
鞍掛橋(くらかけばし)の花畑|池田晶紀
写真家 池田晶紀の作品は、「写真スポット」。花が植えられたきれいな花壇は、成り立ちを知ると驚きます。10年ほど前、ビルが立ち並ぶこの地に「植物がないのはさみしいから」と80代のおじいさんが何度も区の職員のところへ交渉に行き、公共の土地ながら自分で手入れをする花畑を実現させました。住民の想いが、公共の土地利用の公認につながったことが凄いことと池田は言います。ぜひ、ここで思い出に写真を撮ってみてください。
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9 男子寮
dormbeat|宇治野宗輝 (13:00-15:00 16:00-18:00)
日東タオルの男子寮だった建物は、床を抜き、梁に光があてられ、一階の車の左・お風呂場が入口の展示会場に生まれ変わりました。これまでのやり方を見直さなければならない時が来ている、家電製品を大量生産し大量消費していく従来のやり方を今後どう変えていくか答えをださなくてはならない。そう問題意識をもっていた宇治野は、以前からの展示で馴染みのある問屋街も、物を生みだし通り過ぎる場所であり、やり方を見直す時期が来ていると重なりました。「21世紀の文化を考える」をテーマに、もともと男子寮にあった構造や素材にモーターと音響を組み合わせたサイトスペシフィックなパフォーマンスは、必見です。
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10 泰岳ビル 102
Silent City|委細昌嗣、渦波大祐 (11:00-18:00 10.21/10.28 -20:00, 11.3 -17:00 /11.4 -15:00)
建築家 渦波大祐による街の映像は、他の無人映像、例えば人がいない早朝に撮られた映像と決定的な違いがあります。それは、車が全く走っていないこと。高速道路にも車は走っておらず、コロナ禍で都市機能が止まった光景に、作曲家 委細昌嗣による音楽が合わせられた作品は、CGで作られたとのでは思うくらい現実離れしています。渦波は、2000年代のCETや青山地区の東京デザイナーズブロックに大きな影響を受け、その後の芸術祭参加のきっかけになりました。
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11 中川堂 外壁
測量標|小川敦生
・向かって左側1F外壁
ビルの外壁にハンドフリーで描かれたすべて1本の線のドローイング。閉じている紋様であり、それが何かは観覧者が汲み取ってくれればよいと小川敦生はいいます。蓄光マーカーで描かれた線は、昼間が一番光をためて光るので、自分の体でドローイングの周りに影を作ってみてください。夜は会場にあるUVライトをあててみると、また違った線が浮かびあがります。
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11 中川堂から2ブロック北に進むと、1 エトワール海渡 リビング館で、コンパクトなエリアに会場が集まっています。
北コース11、南コース9の併せて20の展示会場の見どころをご紹介しました。10名を超えるアーティストが2001年から2010年までのいづれかのCETに参画し、CET23に戻ってきました。
2003年に突如として発生したCETは2010年に幕を下ろし、そしてまた突然2023年に東京ビエンナーレ参加企画としてCET23が出現しました。
当初から事務局として参加するシミズヨシユキは「20年の時間を経て街の中に変わるもの、変わらないものを目にしてきました。CETは必ずしもイベントとしての継続を目的にしていませんが、今回様々なカタチで人々の繋がりを生み出し、街の持つポテンシャルを再認識しています。」と話す。
かつて築80年だった建物も今では築100年です。2023年に新たなスタートを切ったCET23をお楽しみください。
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