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13年の時を経て、CET23で馬喰町から 再びアートを巡る

「CET23/OPEN START」 鑑賞ガイド【清洲橋通り北コース】

取材・文・撮影:佐藤久美

 20年前に起動した「Central East Tokyo/セントラルイースト・トーキョー(通称CET/セット)」は、アート・デザイン・建築と様々なアーティストが横山町・馬喰町・東日本橋の問屋街の空きビルで展示をした伝説のムーブメントです。2010年の「CET/10 OPEN END」を最後にいったん活動を終了しましたが、「CET23(セット・ニーサン)」はOPEN STARTをテーマに13年の時を経て再起動しました。
それぞれが伝統的建造物である展示会場は近接しており、一日で歩いて見て回ることができます。会場を巡り、アーティストによる場と人との関係を変化させる想像=創造を呼び込む仕掛けをお楽しみください。

 清洲橋通り北からスタートするコースは、JR馬喰町駅の出口④③が便利です。各作品の開催日時は、HPやパンフレットでご確認ください。白地に赤文字の看板がそびえる1 エトワール海渡 リビング館は、CET23の展示とともに、東京ビエンナーレ i-A総合インフォメーションセンター と展示があります。



1 エトワール海渡 リビング館

その後の「そこで生えている。」|佐藤直樹 (11:00-18:00)

・4F
 2003年「CET」当初から関わっていた佐藤直樹は、「CET23」でアーティストとして参加しています。「 TRANS ARTS TOKYO 2013 」の公開制作でアーツ千代田3331(当時)の桜、楠から描き始めた木炭画は、東京ビエンナーレ2020/2021の展示では幅250メートルを超え、「CET23」で300メートルに達しようとしています。別シリーズ「植物立像」を思わせる花も近作近辺に描かれています。フロア全体を使った展示は、木の香りに包まれた胎内めぐりのようであり、ここでしか体験できません。
(有料 エトワール海渡リビング館共通チケット 一般 ¥2,500 学生 ¥1,500
高校生以下無料 リビング館内外の東京ビエンナーレ(以下TB)有料展示が鑑賞できます。TB参加作家94組(うち海外作家12組)のうちいくつか有料展示会場がありますのでインフォメーションでご確認ください)

Tokyo Bench Project 2023|グランドレベル(田中元子)

・入り口横
 「まち の1階に人が居る光景をつくる」ベンチは、そこを人が通過する場所から佇む場所に変えます。町中で目にしたことがあるかもしれないTokyo Benchが、CET23に登場します。この後のショールーム館と、NH2 Bldg.でも展示され、以前からあるかのように街ゆく人に使われています。

交差点「馬喰町一丁目」を渡って問屋街を進み、2エトワール海渡 ショールーム館では6つの展示を鑑賞できます。

2 エトワール海渡 ショールーム館

TMPRの実験室|TMPR(岩沢兄弟+堀川淳⼀郎+美⼭有+中⽥⼀会)

・1F 
   窓にも書かれているように、TMPRは人工知能とかアルゴリスムとか位置情報とか木工とかデザインとか日記とかロボットアームとか、「ちょっと変わった移動実験」をつくってみるチームです。作業日には会議と開発と実証実験を会場で行っており、部屋に入って見学した会議では、なじみのない単語が飛び交い、さまざまな言葉のテンポ良いやりとりが進んでいきました。意味がわかればさらに面白いのかもしれません。Tokyo Moving Point Researchersの略 TMPRの読み方は「てんぷら」です。作業日(予定)10/23(月)、24(火)、25(水)、26(木)、29(日)、11/4(土)、5(日)

誰かが置いた|ただ  

・1F窓
 写真家 ただ による会期中に制作される写真のインスタレーション。「誰かが置いた」は、建物のウチとソトを隔てながらも建物の内側がなんとなく滲み出してくる気がするし、その写真からはウチとソトの関係も立ち昇ってくるかもしれません。窓がどのように変わるのか、楽しみです。

ここにも「Tokyo Bench」が置かれています。

From Island to Island|suzueri(すずえり)、gift_(池田史子+後藤寿和) (11:00-18:00)

・2F
 gift_により招聘された三組のサウンド・アーティストの一人であるsuzueriは、ポスト・コロナに海外5カ国を巡ってパフォーマンスを演じ、その作品や映像をCET23に持ってきました。渡り鳥をイメージし、光の波長を音の波長に変換するデバイス‘フォトフォン‘やトイピアノが動く視覚と聴覚を行き交うインスタレーションは、2022-23にかけての新作です。
10/28(土)29(日)のワークショップsuzueri メディアアートワークショップ「Photophone - 光を聴く装置をつくろう」ではデバイスを制作後、「街の光を聴く」ツアーを行います。

by the Window_ CET2023.v|池田光宏 (17:30-20:00)

・3F
    昼間の来場の場合、是非暗くなってから戻ってきて、外から3Fを見てください。中で人が動いているのか?影絵か?姿を変えるビデオプロジェクションに目を奪われます。左右2面見比べたくなります。

記憶の質感|カガリユウスケ (11:00-18:00)

・4F
 階段の踊り場のドローイングを眺めながら4Fに到着すると、カバン作家カガリユウスケの「廃墟のようなカバン」が迎えます。部屋のあちこちには作家がアトリエまで歩いている間に浮かんだ言葉が、壁にはショールーム館から徒歩30分圏内で撮影された写真が展示され、作家の記憶にまつわる表現です。

3 SANGO

 向かいに置かれている「Tokyo Bench」を見つつ、 1Fがカフェになっている建物の左奥に進みます。

monolith|栁澤貴彦 (8:00-20:00)

・RF
 黒い扉を開けてスリッパに履き替えてから屋上を目指します。途中、床の模様とメタル装飾のレトロさに浸りながら屋上に着くと、正面に問屋街の空と一体化した作品が広がります。近くからと遠くからで見え方が変わるメッシュシートの素材は、差し込む光の加減や風による動きでも見え方が変わりました。

4 ソラビル

問屋の街の小さな階段|冨川浩史、日山豪、AISO(13:00-18:00)

・階段室
 建築家 冨川浩史がリノベーションした設計事務所は、元々の建物にあった階段室を中心にデザインされています。サウンドデザイナー日山豪により、階段室で聴くと最適になるよう作られた音楽が流れます。階段室を見上げたり、見下ろしたりしながら、音楽から模型を作るカッターを引く音、鉛筆の音が聞き取れるでしょうか。屋上からは、建築家こだわりの「電柱以上からしか望めない街の風景」が楽しめます。

5 +PLUS LOBBY日本橋問屋街

Tiny Mud Park|N/A(石川由佳子+金岡大輝) (11:00-17:00)

・屋外
   10/22一日限り、作品名の通り「小さなどろの公園」が出張してきました。子どもも大人も遊ぶのは、タイヤがついて独立して移動する「どろモジュール」「植栽モジュール」「トタンたらいモジュール」。都市のプロジェクトを手がけていた石川由佳子は、現代人が土に遠くなった今、どろ山に触れることで五感を刺激する体験をいろいろな人に届けたいといいます。会場にはTiny Mud Parkの展示とともに、「出張!どろ山」の依頼を受けるQRコードがあります。

   北コース10、南コース10の併せて20の展示会場の見どころをご紹介しています。馬喰横山からスタートする清洲橋通り南側の展示も続けてお楽しみください。


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