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トルクメニスタンにまつわるプロフの話2

4. トルクメニスタンにまつわるプロフの話
 前置きが長くなったが、本章ではトルクメニスタンのプロフの話を読者の皆さんにお届けしたい。ただ、私の知る限りのプロフ事情をご紹介することしかできないので、特に他国のプロフ事情と重複していることも多いと思うが、皆様がご存じのプロフ事情と対照しながら読んでいただけると面白い発見があるかもしれない。

4.1. プロフの作り方・地域性
 プロフの説明はもはや必要ないと思うが、念のため説明しておくと、(中央アジアに関して言うと大量の油で)痛めたにんじんやタマネギ、肉などと一緒に米を炊き込む料理である。トルクメニスタンでは伝統的には綿の油を用いるが、近年はひまわり油を使うことも多い。当時の油は品質に問題があったため、野菜を炒める前に数欠片のタマネギをはじめに油に入れ、油の悪い部分をすわせてそのタマネギは捨てるという。
米もダショグズ州で取れるものが最も上質とされ、見た目は何ら日本の米と変わらないように見えるが、水分を多く含む日本の米とは異なり、炒めてから炊き込むプロフに適した米である。

首都のアシガバットに多く住むテケ族は材料にタマネギ、赤人参、肉(牛、羊、鶏のどれか)を主に用いる。至ってシンプルで、調味料も塩のみを用いる。首都と同じテケ民族が多く住むマルィ州ではニンニクを、カスピ海沿いのバルカン州では魚や野鳥の肉を用いるところが特徴的である。ウズベキスタンのウルゲンチを国境にもつダショグズ州は黄色い人参(水分が多く、甘みが強い)やクミンシードを、同じくウズベキスタンのブハラからほど近いレバプ州では干しぶどうや干しアプリコットなどを用いてプロフを作る。この他、ダショグズ州では小麦粉の生地を薄く伸ばしたものを鍋の底に敷き、野菜や米が焦げないようにする手法もあるという。所変われば料理のスタイルも様々。日本でいうお雑煮が各地で姿を変えて親しまれているのと同じような感覚であろうか。
プロフには作り方にも特徴がある。妻がトルクメン人の友人とプロフを作った際に聞いた話だが、必ず3回お米を研がなければならないらしい。また、洗った米を鍋に入れる際も手に取って3回入れた後、残りの米を入れることが出来るという。プロフだけでなく、トルクメニスタンではお茶をティーポットで入れる際も、湯飲みにお茶を入れ、それをポットに戻す動作を3回繰り返さなければならない。イスラム教では礼拝前に手や足、口を水で清めるが、これらの動作がすべて3回であることと関係があるのかもしれない。
プロフを作るときは一人で作るべきだと言われている。なぜなら、プロフの作り方は十人十色で、部族・地域差等、人によって様々な作り方のこだわりがあり、意見が一致しない可能性があるためである。トルクメニスタンでは地域の違いだけでなく、民族の下位概念である部族や氏族という概念が色濃く残っており、料理のみならず方言や習慣にも大きく関係している点が特徴的である。

【オマケ】
トルクメン航空では機内食でもプロフ

奥真裕

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