見出し画像

トルクメニスタンにまつわるプロフの話

1. 序論
 まず初めに断っておかなければならないことは、著者はプロフの専門家でも料理の研究家でもないということである。そのため、読者の皆様には浅はかな知識を露呈することになるかもしれないことをお許しいただきたい。ただ、トルクメニスタンという国に住む数少ない日本人として少しでも興味深い情報を集めようと努力し、情報の選択に関しては十分注意をしたつもりである。筆者はこの記事を拝読してくださっている皆様と同じ、もしくはそれ以上のプロフをはじめとした中央アジア料理のファンであるため、仲間になったような、そして中央アジア人のようにおおらかな気持ちでこの記事を読んでいただきたい。

2. 総論
 プロフがどこで生まれたか、私が良く行く機会のある中央アジアやトルコでは皆自分の国で生まれたと言い張っている。実際は、歴史や社会の事象を精査しなければ答えは出ないものと思われるのでその点についてここで議論をするつもりはないが、大事なことはプロフが様々な国において愛され、独自の発展を遂げているということだ。
 プロフを示すためにプロフ系列の言葉を用いている国は中央アジア諸国、トルコ、イラン、アフガニスタン、インド、ロシアなど様々あるが、ウズベク人たちは「オシ」と呼んでいる。「オシ」とはウズベク語などのテュルク系の言葉で「食事」を意味する言葉なのだが、食事=プロフとなっているくらい彼らにとってはプロフが重要なものであることがわかる。日本で「ご飯」が「食事」の意味で用いられることに似ているかもしれない。そんな中央アジアの食卓には欠かせないプロフの話をトルクメニスタン中心にご紹介しよう。

3. トルクメニスタンについて
 トルクメニスタンのプロフの話をする前に、トルクメニスタンそのものについて簡単にご説明したい。トルクメニスタンは、西をカスピ海、東をウズベキスタン及びアフガニスタン、南をイランに囲まれた、まさにプロフ地域ど真ん中に位置する国である。面積は48万8000㎢で日本の約1.3倍、人口は580万人(2017年:国連人口基金)で、首都はイラン国境に面するアシガバットである。公用語はトルクメン語で、トルコ語やアゼルバイジャン語と共にテュルク諸語のオグズ語群に分類される。ロシア帝国、ソ連時代を経て1991年に独立した新しい国家であるため、ロシア語も広く通用する。天然ガスの埋蔵量世界第4位を誇る資源国で、一人あたりGDPは6,642ドル(2017年:IMF推計)と中央アジアではカザフスタンに次ぐ第2位に位置している。
女性は伝統的な民族衣装であるロングドレス「コイネク」を常用しており、街中では色とりどりの民族衣装を目にすることができる。その襟元には「ヤカー」と呼ばれる華やかな刺繍が入っており、トルクメン人女性のポイントとなっている。

 汗血馬の名で有名な「アハル・テケ」はトルクメン民族の誇りであり、見かけの美しさはさることながら、アシガバットからモスクワまでの4,000キロ程を走りきった程の記録をもっており、この事実が証明するように抜群の持久力を持つ品種である。馬業界では有名で、府中競馬場にはアハル・テケの像が建てられる程。サラブレッド等の競走馬には必ずといっていいほどアハル・テケが交配されているという。

 トルクメニスタンの絨毯も伝統工芸品の一つである。伝統的には赤を基調とした絨毯に「ゴル」と呼ばれるトルクメン人の部族の紋様を編み込んで作られる。「ゴル」は部族ごとに模様や用いられる絵が異なり、それぞれ意味が込められている。絨毯博物館にはギネスブックにも登録されている世界最大の手織り絨毯が展示されており、その大きさには圧巻である。

(続く)

奥真裕

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?