お前の知らないライミングの世界1
最近、「幸せ」と「屍(しかばね)」で韻が踏めることに気づいた。なんと言うか、対を成すものかつ響きもほとんど一緒で良いライムだと思って、「その幸せは誰の屍の恩恵だ?」というラインを書いたが使い所に困ったのでボツにした。流石に恨みがこもり過ぎているし、最近そんなに何かを恨んでいないので。
まずライム(Rhyme)とは、韻だ。ライミングとは韻を踏むことを指す。ヒップホップのラップにおけるライミングをよく知らない人たちは、いわゆる「パーフェクトライム(完踏み)」の次元でしか韻を認識していないと思う。俺は「RHYME SCHEME」というYouTubeチャンネルでライミングの知識を蓄えていったが世界が変わった。まずライミングにあんまり馴染みのない人達に向けて、ライミングがもたらす効果に付いて説明しよう。
•ライミングがもたらす効果
1.押韻箇所の強調
まずはこのラインを見てほしい。
「薬品 / 悪事 / 悪人 / 烙印 / 各位 / 失くし/ 確認」というように、単語単位で踏むという90’s後期によく見られる踏みかたなのだが、自然とこの単語に目が行くのが分かるだろうか。押韻箇所が立って聞こえる。特に「薬品 / 悪事 / 悪人 / 烙印」の4つは、この楽曲がリリースされた1999年ごろ、まだホットな話題だった地下鉄サリン事件を表現するには十分だ。強調もそうだが、リリック(歌詞)としての説得力や強度も増してくる。
2.グルーヴを作る
次に見てほしいのはこのライン。
「退化/sucker/ばっか/却下」「内容/無いよう/ライム」の2種類の韻で踏まれている。文字通り内容のない韻ばかり踏むラッパーに対するDisだ。韻が等間隔に配置されているため、実際に聴くとものすごい前進するようなグルーヴがある。いわゆる「前ノリ」だ。これがラップが「言語のパーカッション」と言われるが所以だ。
•ライミングのやり方
【母音】
声が口を出るまでの間、その通路が舌やくちびる等で妨げられない時の音。標準的な現代日本語では、ア・イ・ウ・エ・オの五つ。
だそうだ。まず、踏みたい単語を母音に変換する必要がある。
例えば自分の名前、「鳥天(とりてん)」で踏むとする。口を開いたまま「鳥天」と言ってみると「おいえん(OIEN)」になる。「ん(N)」は「U」として捉えても良いし、無視しても構わない。伸ばし棒(ー)やつまる音(っ/ッ)も同様に無視しても良い。「おいえん(OIEN)」と連呼して、子音を取ったり付けたりして「鳥天(とりてん)」と同じ響きの言葉を探そう。すると、
「4次元」「ご機嫌」「のり弁」「トイレ」「添い寝」……
まあこんなもんだ。5つは踏めた。もっと他にある。これは基本的な踏み方だ。分けて書くことにするが次はライミングのテクニックについて書くことにする。
•ライミングのススメ
もちろんなのだが別にライミングはラップ以外でもやって良い。そういう曲も増えてきた。というか今まで皆やらなさ過ぎたのだ。特にボカロを中心に。「Ado/唱」なんかも。まああれは少しラップっぽくはあるが、
とか踏みまくっている。文も破綻してないしラッパー顔負けぐらいだ。
みんなも韻を踏みませんか?文末の1文字2文字で踏むだけでもいい。やってくれたら、俺は静かに心の中で喜んでいます。
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