和訳(La sentence/1789 バスティーユの恋人たち)

1789, les Amants de la Bastille(1789 バスティーユの恋人たち)の全訳です。仏語話者というわけではないので、誤訳があるかも。見つけたらご指摘ください。

曲のタイトルの和訳は、日本公演時の邦題からとっています。

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オランプ「パパ! パパ! 協力して!」
デュ・ピュジェ中尉「オランプ?」
オランプ「無実のひとなの、私が嘘を吐いたために捕まってしまった! あいつらが来たら、セーヌ川に沈められてしまうわ!」
デュ・ピュジェ中尉「何も分からん! 落ち付け」
オランプ「ロナン!」
デュ・ピュジェ中尉「ロナン?」
オランプ「ええ、ロナン!」
デュ・ピュジェ中尉「ロナン、分かった。ピュティ棟の若い囚人だな」
オランプ「パパは、ここでは偉いでしょ?」
デュ・ピュジェ中尉「そうだな」
オランプ「彼を自由にしてあげて! 裏門から出すのよ」
デュ・ピュジェ中尉「そうだな、そうだ…」
オランプ「シャルロットが堀で待っていてくれているはず」
デュ・ピュジェ中尉「そうだ…、いや待て! ダメだダメだ! 職務に背くなんて、絶対にダメだ。見つかりでもしたら…。彼の名前はこの名簿に登録されているんだ。悪い奴らだって、彼に何かできるわけじゃない」
オランプ「でも、相手はアルトワ伯爵よ? 知ってるでしょう!」
ラマール「ピュジェ中尉! オーギュスト・ラマールだ。門を開けたまえ!」
オランプ「来てしまった! 鍵を貸して!」
デュ・ピュジェ中尉「だめだ! 絶対に!」
ラマール「陛下の名において、速やかに門を開けろ!」
デュ・ピュジェ中尉「あり得ない! ああもう! ――オランプ、やめなさい、戻して!」
ラマール「デュ・ピュジェ中尉! ロナン・マズリエを直ちに移送したい」
デュ・ピュジェ中尉「ああ、書類はありますか?」
ラマール「これはなあ、中尉、アルトワ伯爵の命令なのだ!」
デュ・ピュジェ中尉「実は…鍵がないのです。守衛を呼んできましょう」
ラマール「問題ない! 高すぎる、馬鹿者め、縮め! 素早く、効率的に! ははは! うるさいぞ! さて、副官、いつまでここに?」
デュ・ピュジェ中尉「分かりました、分かりました」
ラマール「よろしい!」
デュ・ピュジェ中尉「いやいやいや、ダメです! ダメです!」
ラマール「おい! 動け、間抜けども!」
デュ・ピュジェ中尉「オランプ!」

ラマール「デュ・ピュジェ中尉? 中尉? どこへ行った、探せ! 馬鹿な…伯爵の命だというのに!」
デュ・ピュジェ中尉「オランプ! オランプ! ――オランプ! 戻しなさい!」
ラマール「中尉! デュ・ピュジェ中尉! さっさと…ロワゼルはどこ行った? 姿が…さっさと戻らんか! 探すんだ、無能!」

ロナン「また君か!」
オランプ「ついてきて!」
ロナン「それ以外にないのか? ひとを投獄させておいて?」
オランプ「馬鹿なの? 追われてるのよ、奴らあなたを殺す気なの!」
ロナン「俺は政治犯だぞ? 自由のためなら死ぬさ! ――君、名前は? 今のうちに聞いておかなきゃ」
オランプ「言うもんですか!」
ロナン「そうかよ! 俺は動かないからな!」
オランプ「私はオランプ。言葉が過ぎた罰よ、革命家さん」
ロナン「失礼。――行こう」
デュ・ピュジェ中尉「オランプ! オランプ!」
ラマール「デュ・ピュジェ中尉! 中尉! どこですか! ぼさっとするな!――いつもより調子がよさそうだな、うん? 何をしてたのか、そのまま、私に話してみたまえ。質問に答えろ、何をしていた? そんなこと、してる、場合か!」

シャルロット「やっほー、シャルロットだよ! 運河の隅っこ、武器庫の庭、自由の申し子さ! パリはあなたのものだよ、お若い王子さま!」
ロナン「ありがとう、シャルロット」
シャルロット「行きなよ! さもないと彼女に追い付かれるよ」
オランプ「シャルロット! 彼は?」
シャルロット「貴女の革命家さん? ドブネズミの巣窟の中へ戻っちまったよ」
オランプ「でも、私…私…言わなきゃいけないことが…」
シャルロット「何をさ。――まあ、彼じっさいカワイイよね。さてっと、あたしの仕事はこれで終わりかな、じゃあね!」
オランプ「ちょっと、シャルロット、シャルロット!」


[La sentence(許されない恋)/オランプ]

考えている、何度も いつも、何度も
思考は結局行き止まり
考えている、ずっと 時間の許す限り
私の独房ね

願望は呪い
惹きつけておいて、責め立てるの

報いを受けただけ
私の考えがどれだけ間違っていたか
無知だった 無頓着だった
それゆえに、私は悲しみに苛まれている
あなたを見つけてしまった それが私の過ちだった

疑念、抵抗、面倒、不信、
揺るぎない執着心

欠落、断絶、忘れられた傷心
鋭く美しい中毒性

報いを受けただけ
私の考えがどれだけ間違っていたか
無知だった 無頓着だった
それゆえに、私は悲しみに苛まれている
あなたを見つけてしまった それが私の過ちだった

報いを受けただけ
私の考えがどれだけ暴力的だったか
無知だった 生意気だった
それゆえに、私は悲しみに苛まれている
あなたを見つけてしまった それが私の過ちだった

考えている、何度も
思考は結局行き止まり