和訳(Je veux le monde/1789 バスティーユの恋人たち)

1789, les Amants de la Bastille(1789 バスティーユの恋人たち)の全訳です。仏語話者というわけではないので、誤訳があるかも。見つけたらご指摘ください。

曲のタイトルの和訳は、日本公演時の邦題からとっています。

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女「どこもかしこもパン屋が閉まってる! 何も置いてないわ!」
女「あいつらにはどうしようもないことなのよ」
女「力づくで開けさせましょう」
ソレンヌ「仲間を集めて、わたしについてきて!」

女「パンを! パンを! ドアを開けろ! 死にそうなのよ! パンを! 子供たちに食べ物を!」
パン屋「パン粉もパンもないんだ!」
女「軍に売る分はあるんでしょう!」
パン屋「徴収されてるんだ!」
女「嘘よ!」
女「あんた、在庫溜めこんで、あとで二倍の値段でふっかけてるんでしょ!」
パン屋「違う、違う! 分かった、明日来てくれ!」
女「いいえ、今よ!」

[Je veux le monde(世界を我が手に)/ソレンヌ]

わたしは鏡よ 愛を映す鏡
祈りが通じて嬉しいわ
この日が来るのを見せたかった
あんたは自分を失ったの

権力の名において、あんたたちは変わる
万能だと思ってた? 野心はひとを盲目にするのね
あんたは忘れていた 誰のおかげで生きているのかを

(女)奴ら、どうかしてる!

世界を手に入れたいわ
あんたの涙で 女は王になる
世界を夢見てる 手ぐすねを引いて
何も怖くない 痛みは知っているわ
世界を手に入れたい

兵士の真似事? 私は救世主よ
あんたは戦いに負けたの
わたしにひとを創る9か月があったら
ゲームはまだ続いていたわね

(女)奴ら、どうかしてる!

この闘牛場で 善というものを知りなさい
死んだ方が幸せかも
もしわたしたちを無視するつもりなら、
きっと思い知ることになる

(女)奴ら、どうかしてる!

世界を手に入れたいわ
あんたの涙で 女は王になる
世界を夢見てる 反逆に焦がれてる
何も怖くない 痛みは知っているわ
世界を手に入れたい

女「何もないわ! 何もない!」
ソレンヌ「ヴェルサイユへ行きましょう! 国王の手からネッケルを奪い返す。明日には子供たちにパンが行き渡るわ! ヴェルサイユへ!」
女「ヴェルサイユへ!」

わたしこそが世界よ
地球は丸いから まるで豊満な母のよう
世界が欲しい 暗闇のない世界が
苦しみはもうたくさん 嫌ってほど知ったから

世界を手に入れたいわ
あんたの涙で 女は王になる
世界を夢見てる 手ぐすねを引いて
何も怖くない 痛みは知っているわ
世界を手に入れたい

世界を手に入れたいわ
あんたの涙で 女は王になる
世界を夢見てる 手ぐすねを引いて
何も怖くない 痛みは知っているわ
世界を手に入れたい

ロナン「ソレンヌ! ソレンヌ! ――ソレンヌ、すまなかった。謝りたいんだ、俺は――」
ソレンヌ「知ってるわ。日記にはつけられないけど、わたしは飢えを知ってる。絶対に、何ひとつ忘れない!」
ロナン「ソレンヌ! 待ってくれ!」

ポリニャック夫人「王妃殿下、落ち着いてくださいませ」
マリー「だってあの声が聞こえるのよ! なぜ彼らは叫んでいるの? 国王がヨーロッパで最強じゃないから? 宮殿が見劣りするから?」
ルイ16世「彼らは母親だ。君と同じように。彼らは、よりよい生活のために戦っているのだ」
マリー「窓を閉めて、これ以上聞いていられない! ――よかったわ、安心した」
ルイ16世「好き勝手だな、君。そろそろ分かったか? 最近まで、君は贅沢に溺れ、不倫に現を抜かしていた」
マリー「嘘よ! ルイ、誰に吹き込まれたのか知らないけど、信じちゃだめよ」
ルイ16世「信じてはいないよ。知っているんだ。口裏を合わせても、私は全部知っている。私は、君が望むような夫にも、恋人にもなれないだろうが――」
マリー「ルイ、やめて」
ルイ16世「でも今日、この苦難のときから、君が尊厳と援助を捧げてくれることを期待するよ」
マリー「…それは侮辱ですわ、陛下」

ペイロール「陛下、市民が中庭に押し寄せて、陛下に会せろと」
アルトワ伯「陛下の弱さが招いた結果だ! 代表者が反抗するのをみすみす許容した。今や、奴らは貴方の窓のすぐ外で声を上げている! 行く必要はない!」
ペイロール「パリでは、反抗を呼びかける声が強まっています、陛下。軍事介入が妥当です」
アルトワ伯「どうにかしろ! 主のために! 首謀者を逮捕し、外国人部隊をパリへ派遣して、暴動を蕾のうちに摘み取るんだ!」
ネッケル「抑圧は大量虐殺に繋がります! 陛下、私は彼らの怒りを抑える方法を知っています。交渉させてください」
アルトワ伯「我々の運命を銀行員の手に握らせるおつもりか?」
ネッケル「時間が! ほんの少しでいいから時間をください!」
ペイロール「我が軍は準備の上、陛下のご指示を待っております」
アルトワ伯「子供の頃みたいに、ひっぱたいた方がいいか?」
ルイ16世「ペイロール将校、君に、どんな手段を使っても命令を完遂するよう指示する」
ネッケル「陛下!」
ルイ16世「私の望みは、この王国の安寧だ」
ネッケル「私では、陛下のご期待に沿えないと考えます。辞職をさせていただきたい」
ルイ16世「いいだろう、許す」