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戯れに書く②

冬は空気が澄んでいる。音楽も普段よりその鋭さを増して耳に入ってくるような気がする。全てがだらしなくふやけた感じがする夏はとうに去り、まるで弓を引き絞るような緊張感がある。

久しぶりに散歩と洒落込もうと思い立ち、外套を引っかけて外へ出た。東京に住んでいた頃と比べてここは星が綺麗に見えるな、と月並みな感想を頭の中で言ってみて恥ずかしくなった。ずっと上を向いていたら、聳え立つ電柱に気付かず、したたか頭を打ってしまった。

どこを目指すわけでもなく夜道を歩いていると、寂れた公園に突き当たった。あるいは寂れたように見えただけかもしれない。そもそも夜の公園は例外なく寂しいものだ。

すっかり摩耗して角が丸くなり、滑らかになったベンチに腰を下ろした。
おもむろに、鼻梁を半分隠すほどに高く巻いていたマフラーを少しばかり緩め、先ほどコンビニで買った缶ビールのプルタブを引いた。
プシュ、という軽い音とともに白い泡が溢れて革靴の先端を濡らした。


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