バンドの負の側面を語るよ

音楽家にはソリスト志向の人と、バンド志向の人がいます。歌手であればソリスト志向になりますし、ベースやドラムやパーカッションだとバンド志向になるというように担当パートとの関わりや、社交的かどうかといった性格も関係していると思います。バンドの良いところはたくさんありますが、今回はバンドの負の側面について語ります。僕がいくつかのバンドを経て感じたのは、以下です。

ほかの活動が難しい
バンドを最優先にすると決めたら、ほかのことが入り込む余地はなくなります。バンドの中で人気があるメンバーにソロの依頼やサポートの依頼が入ることがありますが、バンドのスケジュールを優先しているので断らざるを得ない、ということが起こります。

僕の経験談です。毎月レギュラーで入っているバンドのギグがあったのですが、たまたまその日に僕個人にもっとギャラのいいソロやサポートの仕事が入ることがあり、バンドメンバーに頼み込んで仕事を入れさせてもらうということを度々しました。その度に信頼を失っていった気がします……。

自分の代役を立ててもいいギグならほかのメンバーのスケジュールに穴を開けずに済むのですが、そうではない場合はモメる原因になります。先に入っている予定優先の原則で、ギャラのいい仕事を諦めることも多かったです。

スケジュールの融通が利かない
音楽家は留学したり海外で武者修行をすることもキャリアのうえで大事なのですが、数ヶ月〜数年単位で日本を離れることになるので、その間バンドは休止しなくてはいけません。バンドが収入源であれば活動休止は生活に影響を与えます。CD製作やツアーなど年間単位の計画にも影響するので半年前くらいからメンバーにお願いしないといけなくなります。

バンド単位で動かなければいけない
バンドで自分のことを知ってもらって自分に個人的に演奏依頼が来た場合は、バンドに話を振らないで自分の仕事にするのはグレーです。メンバーに内緒で仕事を引き受けると、後でメンバーが知ってモメる原因になります。
漫才師でも片方が売れたりしますが、それはバンドでも起こります。仕事が回ってこないメンバーをうまくフォローできないと、嫉妬で人間関係が悪化します。

仕事の分配でモヤモヤする
人には誰でも得意分野と不得意分野があります。作編曲ができる人、ファンや得意先との関係づくりができる人、MCがうまい人、ホームページなどITに強い人、会計や財務に強い人、フライヤーのデザインができる人などです。

お互いに能力を補いあいながら活動するのがバンドの強みですが、その中で一人だけ仕事の負担感が大きいとか、演奏以外に何も貢献できないメンバーがいるとモメる原因になります。自分はいっぱい仕事しているのに、あの人は演奏しかしていないじゃないか……となります。

それでも大事なメンバーということでお互いに愛情と尊敬を持っていれば不満には至りませんが、若い男だけのバンドだと許せなくなったりします。

お金の分配でモヤモヤする
僕がやってきたバンドは基本的にはギャラから経費を差し引いて残った収入を全員で分けるという、公平で分かりやすいルールでした。しかし、メンバー間の仕事量が違うとか、誰が取ってきた仕事だとか、CDをたくさん売ったとか、誰がたくさんの曲を提供したとか、モメる原因はたくさんあります。それも全部ひっくるめて大らかな気持ちで均等割にしていたらいいのでしょう。

一方で多く稼いだ人が多く受け取る仕組みにすると、それはそれでモヤモヤします。また、仕事を取ってきた人が、全体の予算額を言わないでメンバーに下請けさせると、関係が険悪になるでしょう。

メンバーどうしの人間関係で消耗する
ソロだと気の合う人にその都度サポートをしてもらえば良いのですが、長期間ツアーをしたり家族のような付き合いをするバンドだと、一度関係がマズくなると修復が難しいです。

最初は他人、そして友達、お互いを知るうちに兄弟のようになり、トラブルが起きるとお互いを嫌いになる……。人間関係には前進はあっても元に戻ることは決してありません。人には相性がありますから、音楽の方向性が合っていて演奏している時は楽しくても、友達づきあいとしては厳しい相手というのはよくあります。

そのために、それ以上関係が進展しないようにお互いのプライバシーには深入りしないというのもバンドを長続きさせる知恵だと思います。

僕がやっていたバンドは一緒に生活したり、常に顔を合わせて仕事の行き帰りも宿泊も一緒に、という感じだったのですが、楽しいこともある反面、一人が好きな僕には苦痛でした。今だったら絶対に現地集合・現地解散・食事も宿泊も別々がいいです。

辞める時にモメる
誰かが抜けたいと言った時にすんなり抜けさせてもらえることは少ないでしょう。そもそもいつでも抜けて良いメンバーなら、サポートメンバーで良いのですから。

辞めると言った時点で入っている先の出演予定はすべてきちんとこなして、その上で誰か代わりを埋める人を紹介して辞めなくてはいけないことになるでしょうし、責任を放棄して辞める負い目があるので、楽曲やCDの在庫や売掛金の権利は放棄しなくてはいけないかもしれません。感情的にならずに綺麗に辞めるのはかなり難しいと思います。

解散の時にモメる
これは前回も書きましたが、バンドで長年続けていると共有財産ができます。バンドで作った曲や、CDの売上金、将来のCDの売上、CDの在庫、レギュラー演奏の仕事、ファンの名簿などです。お金であれば均等に分配して終わりで良いのですが、数値化できないものもたくさんあります。話し合いでなるべく平等に分けなければいけないのですが、難しいことは想像に難くないでしょう。

反対にCDを作る時にこしらえた借金とか、ホームページのサーバー代とか負の財産もありえます。

話し合いがこじれるとバンド時代の曲は演奏するなとか、CDは売るなとか、お互いを傷つけ合って終わります。この辺は恋人との破局とすごく似ています。

まとめ

バンドの良いところは、少年漫画みたいに「友情、団結、協力」で一人では達成できないことを達成できる点ですが、僕は以上のすべてがしんどくてストレスだったので、バンドをやめてソロを志向するようになりました。

CDやライブといったプロジェクトごとに集まるようなゆるいバンドは別として、バンドで突き抜けようとすると、こういった面倒なことも起こるのは、知っておいても良いかもしれません。

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