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【今日のバッハのカンタータは?】2024/2/2(金) 聖燭祭

"WHICH BACH CANTATA TODAY?" (「今日のバッハのカンタータは?」)の 2024年2月2日 の記事の和訳です。以下,一部訳注やリンクの追加と関連動画の紹介をしている以外は,ほぼ直訳です。

聖燭祭

2024年2月2日 - 今日はクリスマスと同じく異教の儀式にルーツを持つ聖なる祝日、聖燭祭(Candlemas)。クリスマスの40日前、11月11日のサン・マルタンでは,あまり暗くなったためロウソクに火が灯された。クリスマスから40日後の聖燭祭には再び光が灯る(訳註: "Light of the world"とも呼ばれるイエスが現れることを指す)ので、ロウソクの火を消すことができる。

ただし、聖燭祭はバッハの時代には典礼日ではなかった。代わりに,聖母マリアの清めの祝日(Festo Purificationis Mariae)とされていた。ユダヤ教の伝統では、母親は出産から40日後まで不浄とされていた。清めの日に,母親は清めのため,そして子どもを神の前に捧げる(公現)ために教会を訪れる。そう,この日はキリストが神に捧げられた日だ。

聖ルカの福音書のこの日についての節には、この公現の式に立ち会った敬虔なユダヤ人シメオンが喜びの歌を歌って、イエスをメシアと認めたと書かれている。この歌はシメオンの賛歌(Canticum Simeonis)と呼ばれており,その内容を要約すると「私はメシアを見たので、安心して死ぬことができる。」というものだ。今日のカンタータのテキストは、これらの福音書とシメオンの賛歌に基づいている。

注目すべき点は、聖燭祭のカンタータのどのテキストにも清めや公現に焦点を当てたものではなく、シメオンの物語のみに焦点を当てたものであることだ。これは,痛みや苦悩のないより良い人生への一歩というルター派の死生観に沿ったものである。

まずは、「来たれ、汝甘き死の時よ」《Komm, du süße Todesstunde》BWV 161から。元々はワイマールで三位一体主日後の第16日曜日のためにと,全く異なる機会のために作曲された。しかし,テーマが公現の日にも適していたので、バッハはこのカンタータを1737年から1746年にかけてライプツィヒで演奏した。

「新しき契りの喜びの時」《Erfreute Zeit im neuen Bunde》BWV 83は、ライプツィヒでの初めのカンタータサイクルの年(訳註: 1724年)に作曲された。「平和と喜びのうちに我は逝かん」《Mit Fried und Freud ich fahr dahin》BWV 125も同じコラール・カンタータ・サイクル中の作品(訳註: 1725年)で、マルティン・ルターの讃美歌を用いた集に収録されている。「我は満ちたれり」《Ich habe genug》BWV 82は1727年に作曲された。

「我を祝福したまわずば、汝を離さじ」《Ich lasse dich nicht, du segnest mich denn》BWV 157は、実際には1727年2月6日にあった葬儀のために書かれたが(つまり、あなたは4日後にこの曲をもう一度聴くことになる)、テキストがシメオンの主題も想起させることから、バッハは後年、清めの祝日のためにこの曲を演奏した。

最後に、「平安,汝とともにあれ」《Der Friede sei mit dir》BWV158はちょっと謎だ。この曲は復活祭の火曜日のためのカンタータと考えられているが(この曲はその時のプレイリストに掲載予定)、もともとは清めの祝日のために書かれたのかもしれない。つまり、バッハがまとめた2つの異なる年のカンタータ・プロジェクトの一部かもしれない。作曲年も不明で,ヴァイマル時代の作品かもしれないが、1735年頃ではというという説もある。

Music for today

  • Komm, du süße Todesstunde, BWV 161
    (first performance ? 27 September 1716, Weimar period)

  • Erfreute Zeit im neuen Bunde, BWV 83
    (first performance 2 February 1724, Leipzig period)

  • Mit Fried und Freud ich fahr dahin, BWV 125
    (first performance 2 February 1725, Leipzig period)

  • Ich habe genug, BWV 82
    (first performance 2 February 1727, Leipzig period)

  • Ich lasse dich nicht, du segnest mich denn, BWV 157
    (first performance 6 February 1727, Leipzig period)

  • Der Friede sei mit dir, BWV 158
    (first performance 1730? mostly lost, Leipzig period)

追加情報

オランダ・バッハ協会のウェブサイトに、BWV 82とBWV83についての詳しい情報と演奏が掲載されています:
https://bachvereniging.nl/en/bwv/bwv-82/
https://bachvereniging.nl/en/bwv/bwv-83/

見出しの絵画について

1434年頃にジャック・ダレによって描かれた「教会での公現」。長い灰色の髭を蓄えた人物がシメオン。


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