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学部時代を振り返る

 私は東北大学文学部に在籍していました。振り返ると,とても良い環境だったことが思い出されます。カリキュラムが整っていて,とても学びやすい環境でした。今回は,学部時代を振り返りつつ,良かったと思うことを挙げていこうと思います。


学ぶ場所がまとまっている

 東北大学のキャンパスは複数あり,文学部は川内キャンパスにあります。川内キャンパスは中心を通る道路を境にして,北キャンパスと南キャンパスに分かれています。北キャンパスは1年次と2年次で全学教育科目を学ぶ場所で,南キャンパスは専門教育科目を学ぶ場所です。

 学生が4年間学ぶ場所は,基本的には青葉山のふもと側にある川内キャンパスのみです。2年次には,全学教育科目だけでなく,基礎専門科目を履修することになるため,北キャンパスと南キャンパスを行き来しなければなりませんが,学ぶ場所が川内キャンパス内でまとまっているため,移動の手間が少ないのが特長です。また,私が通っていた頃はなかったのですが,北キャンパス側に地下鉄東西線の川内駅があり,アクセスも良いと思います。


カリキュラムのバランスがとれている

 文学部では2年次に所属する「専修」が決まり,専門科目を学び始めることになります。専門を学び始めるタイミングは大学のカリキュラムによって違うわけですが,個人的には2年次がスタートのタイミングとして最適だと考えています。4年次に卒論執筆や就職活動などに追われることを考慮すると,その前の3年間が学部における学びの中心的期間ということになります。スタートが遅ければ専門の学びが薄くなり,早ければ幅広い教養を身につけるチャンスが減ってしまいます。

 大学の授業をおおざっぱに分類すると,教養科目と専門科目になるわけですが,大学のカリキュラムとして教養と専門のバランスがとれていると思います。1年次に幅広く学び,2年次に専門の基礎を学び始めて,3年次に本格的に専門に取り組むという形は,学生のスキルを育てる設計になっていると考えています。


選択の幅が広い

 東北大学文学部の学科は人文社会学科のみになっていて,26の専修から構成されています(2020年現在)。専修は研究室の単位でもあり,上で述べたように,学部生は2年次から各研究室に所属することになります。26という数が示すとおり,文学部で学べる専門領域は幅広いといえます。おそらくこの幅広さが文学部の強みではないでしょうか。

 文学部を知らない人にとっては,文学部は「文学を勉強するところだよね」というイメージがあるかもしれません。まずいえることは,文学部は「文学の部」ではなく,「文の学部」です。ここでいう「文」とは人間に関わる幅広い知を表しています。実際に,学際性に富んだ学びの場であることは間違いありません。

 ほとんどの人は大学に入る時点で学びたいことがだいたい決まっていると思いますが,細かい専門領域の選択まではできていないという人は少なくないかもしれません。入学したのちに広い選択肢が用意されているというのは,学生にとってはありがたいことだと思われます。


「人文社会総論」と豊富な「概論」の授業

 1年次には全学教育科目を中心に学ぶことになるわけですが,1年次の必修の専門教育科目として「人文社会総論」という科目があります。この科目は,各専修の教員が授業を持ち回りで担当し,文学部の専修すべての内容を広く学べるというものです。

 すでに述べたように文学部は専門領域が広いため,この授業で学べる範囲も広いといえます。言語,社会,歴史,文化,文学など,人間に関わる数多くのテーマについて,体系的に学べる授業は少ないと思われます。当時は,各専修の講義から4つを選択して4つのレポートを書くというのが課題になっていましたが,結果的に良い勉強になったと記憶しています。

 2年次には「概論」という名の付く授業を履修することになります。自分が所属する専修以外の授業科目を履修することができるため,学生は関心のある複数の分野に視野を広げられます。たとえば,心理学の概論を中心に歴史学と言語学の概論をとるといったようなことが可能です。数多くの専門領域の授業が開講されているため,豊富な「概論」に触れることができます。


研究しやすい環境

 3年次になると,配属された研究室に行く機会が増えます。研究室には学部生だけでなく,教員と大学院生がいるため,貴重なアドバイスをもらうことができます。また,川内南キャンパスには東北大学附属図書館の本館がありますが,各研究室にも専門的な学術書や学術雑誌が置かれています。さらに談話が可能な共有スペースもあり,研究のために必要なコミュニケーションがとりやすくなっています。卒論を書く環境としては申し分なかったと思います。

 大学といえば,高度な専門性をもった研究がなされている場所ですが,文学部は研究に必要な資源が揃っていて,研究に専念できる環境が整えられています。


息抜きのできる環境

 川内南キャンパスは自然に囲まれています。植物園(本館)もあり,学生は入園料が無料で,息抜きに散歩することもできます。授業や研究の合間に息抜きできる環境が整った恵まれた場所だと思います。北キャンパスと南キャンパスの両方に学食があるというのも,学生にとっては便利だと思います。

 川内キャンパスは仙台の街から少し離れているため,私が在学していた当時は,大学にいる間に買い物をする場所が生協ばかりになっていました。現在は東西線があるので,街まで移動しやすくなり,息抜きの幅が広がったのではないでしょうか。


 以上,学部時代を振り返って東北大学文学部の長所を挙げてみました。学生のスキルを伸ばす環境としては申し分ないと思います。ここで学んだことは今でもたいへん役に立っています。この記事が文学部のイメージの改善につながったり,文学部を目指そうとしている方の参考になったりすれば幸いです。

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