惜別野球人③

 各チーム、引退試合が開催されている。ペナントレースも最終盤、高橋由伸の言う通り自分からユニフォームを脱げる選手はひと握りの幸せものである。今回はそんなひと握りの幸せものにハイライトを当てよう。

盟主の脇役・亀井義行

 この選手の引退という一報を聞いて、刻一刻と迫る原野球の終わりに大きな一歩が進んでしまったと思った。目立たない存在ではあるが、亀井義行という男はここ数年の巨人軍にとって間違えなくキーマンだったからである。左の代打としてここ一番の決勝打、引退式で原辰徳監督も語った絶対に生還しなければならない場面での代走、強肩で幾度となくランナーを刺殺した。また、故障者が出てしまった時には外野の一角を担った。
 これほどまでに良い選手がレギュラーを取れなかったのは怪我が多かったからだろうか。令和元年に見事なカムバックを遂げながらもたった2年で引退してしまったのは故障が原因だそうだが、これもまた亀井らしいと言ってしまったら巨人ファンに怒られるだろうか。
 中日ファンの僕からしたら、終盤で亀井が出てきたら何かが起きると思い間違えなく脅威であった。来季、巨人は亀井という存在が代打にいないのは間違えなく大きな損失となるだろう。スター軍団の中でいぶし銀の活躍を見せる脇役、何十年経っても会社で昇進できないサラリーマンにどれほどの勇気を与えただろうか。

不死鳥・大竹寛

 この選手は世代によって大きくイメージが変わるのではないか。僕は速球派投手として不安定ながらもローテを守った若手時代は見ていない。その後肩を痛め、バルカン・チェンジアップという特殊球(シンカーのような軌道)とシュートボールを武器に弱い広島のエースとして蘇った全盛期、そして巨人に移籍してからの火消しの切り札としての活躍。皆さんはどの時代の印象が強いだろうか。
 どの時代のイメージが強いかは人それぞれだが、不屈の闘志で何度でも蘇る不死鳥というイメージは皆が持っているだろう。速球派投手として寿命を迎えた大竹は何度も寿命を迎え、その度に自らの身を焼いてきた肩はボロボロのはずである。しかし、傷だらけのエースから放たれるボールは最後まで美しかった。
 現在、広島の二軍に岡田明丈という背番号17の投手がいる。彼は速球投手として侍ジャパンに選ばれるほどの活躍を見せた選手だが、フォームを崩し試行錯誤の日々が続いている。ぜひ、大竹のように何かを掴んで蘇り、灰になっても飛ぶ火の鳥となって欲しいものである。

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