ノンテンダー?

 稲葉篤紀GM、新庄剛志ビッグボスによる新生日ハムが今季盗塁王の西川遥輝をはじめ、大田泰示、秋吉亮の3人を自由契約にしたことが波紋を呼んでいる。それぞれ外野のレギュラー、主戦投手である3人を何故手放すのかを考えていこう。

そもそもノンテンダーとは?

 これはMLBでよく使われる契約手段で、選手が高額な年俸に見合った活躍をしていない場合、その選手を1度自由契約にし、大減俸を飲んでまでそのチームでプレーするという意思があれば実績等を顧みず全く以て新しい査定で再契約をし、他球団からの声がかかれば移籍するというものである。この「来る者拒まず去るもの追わず」というスタンスは選手の権利を尊重するMLBらしいものと言えるだろう。
 また球団側にとっても、コストを抑えられる事が多くなるので、金銭的に余裕のない球団が使う手段となってくるはずである。
 今回の日ハムの例を見てみよう。西川遥輝は低迷した日ハムの切込隊長として盗塁王を獲るなどの素晴らしい活躍を見せたものの、その盗塁成功率は7割をきり、守備でも精彩を欠き長年務めてきた中堅手に失格のらく印を押されてしまった。大田泰示、秋吉亮の2人は今季故障で思うような成績を出すことはできず、2人とも年俸分の活躍をしたとは言えないだろう。

日ハムがノンテンダーを使った理由

 日ハムが日本球界では珍しい「ノンテンダー」を使った背景には北広島新球場が関係しているのではないか。従来の「ただ野球を見せるだけ」の野球場ではなく、ホテルや温泉などもついている施設となっている新球場はコストがかかり、積極的にチームの解体を行っている。昨季は有原航平、今期は中田翔と文字通りエースと4番打者を放出したのは記憶に新しい。また、ジェームス野村、河野竜生のような若手の台頭が今季目立ち、二軍では次期エース候補、4番候補の吉田輝星、今川優馬が一皮むけそうな予感があり、世代交代の意味も強い。
 いくら大選手とはいえ、全盛期を過ぎたら筋肉や視力等の身体の衰えには勝てないものである。レギュラーを固定しすぎるとその選手たちが衰えた時、チームは衰退してしまう。昭和60年の日本一の後の阪神、平成23年のV2の後の中日が長期に渡り低迷してしまったことを考えるとチーム存続には新陳代謝が必要不可欠なのである。

今後、ノンテンダーは流行るのか

 結論から言うと、これは流行らないと思う。ノンテンダーを採用する球団が多く存在するMLBはNPBの倍以上となる30球団が加盟しており、尚且つ3軍制を取り入れる球団が少ないNPBとは全く違い各球団ルーキーリーグから3Aまで細かく分けられたレベルのリーグがピラミッド状になっているため選手の受け皿に困ることはないのだ。
 しかし、NPBが今後16球団制となったり、3軍制が当たり前となった時にはノンテンダーが流行するのでは無いか。

最後に

 野球の醍醐味の1つに、グラウンド内外での流行りを楽しむというものがある。逆指名という制度を巧みに使って西武やダイエーが選手の囲い込みをしたり、球団職員として入団させた選手をドラフト下位指名で獲得してきた時代、3軍制を取り掘り出し物をじっくり育てるという時代、FAの人的補償で他球団にダイヤの原石を横取りされぬように育成枠を巧みに使う時代と90年に迫るNPBの歴史には様々なチーム編成術が見て取れる。
 今回のノンテンダー、今の制度のままでは確実に流行らないだろうが、日本式にどう調理されるのかが楽しみである。

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