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辿りつけない、想像する。

以下はアルビレックス新潟サポーターズ向け「サポーターズリンク新潟SNS」( http://sns.supporterslink.com/ )に投稿した日記ですが上手く公開出来なかったのでnoteに転載します。(2015年10月22日)

ある美術展の話を聞いて下さい。タイトルは「Don't Follow The Wind」国内外12組の美術家が作品を寄せています。今年の3月11日から開催されています。どこかで。場所は明かされていません。場所は東京電力福島第一原子力発電所周辺の帰還困難区域内の「どこか」です。住民に展覧会の趣旨に賛同いただいて場所を提供してもらっています。つまり、誰も見に行けません。それは昨日の日記の通り。

先日この美術展のサテライト展示会場:ワタリウム( http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html )に行ってきました。展示のタイトルは「Non-Visitor Center」(=非・案内所)国立公園や世界遺産などの訪問者のための案内所(Visitor Center)に由来しているとの事。ここでパンフレットから抜粋しますね。

「住む事すら出来ないほどの崩壊と汚染が起きている大災害のもと、アートに出来る事とは何でしょうか?展覧会「Don't Follow The Wind(以下、DFW)」では元住民の方々によって提供された区域内の様々な会場に作品が展示されていますが、会場は立ち入りが制限された危険な場所のため一般公開はされず、したがってこの展覧会「DFW」は封鎖が解除されるまで視覚的にみにいく事ができません。展覧会「DFW」は現状に対する応答でありながらも、人々の目に触れるのは、その場所が再び開放される未来なのです。その未来とは3年後かもしれませんし、10年後、あるいはそれ以上後のことかもしれません。その期間は現在を生きる私たちの生涯を超えて新たな世代へと広がり、私たちにアートと時間の関係性を再び見直すことを問いかけます。「DFW」は人々が住まない場所に存在し、"今"を記録しますが、予測不可能な未来においては過去の記録として存在します。そしてアートそのものは我々が介在することなく、生きる証のように、人間の弱みや願望を背負ってそこに存在し続けます。」

俺は「誰も見れない」と言うことも大事な要素だと思いますが、それ以上に大事な要素があるとノンビジターセンターで気付きました。「誰も見れない」ってアブストラクトであるが故に誰もが想像力を働かさざるを得ない。見えてそこに有るものではないから。だから、その作品展示がみんなが見れるようになる日が来る、そのときがこの美術展のゴールなのだろう、と俺は思ってたんだけど、ちょっと違うみたいです。「見る」ことはゴールじゃない。の"We Shall Overcome,Sameday"を夢見て、その日が来たらめでたしめでたしじゃない。今「想像力で見る」ことが大事なんだと。見えないものを見ようとすること、思うことが。帰れない人、元に戻らないことを思う。都合よく忘れようとしちゃダメだってことなんだろう。美術館のホワイトキューブの中で完結する展示ではなく、観覧者のポジションを問われる「居心地の悪さ」は確実にあります。

なので、より大事な要素として「終わらない」「終わりが決まっていない」ってのがあると思う。俺も含めて今の今苦しんでいる、悲しんでいる人のことを忘れようとしている。そこへ頑張って福島に心寄せる人が、振り向かせようといろいろなイベントを企画したりするが、当然一過性のものが多い。それが悪いわけではない。猪苗代湖ズとか素敵過ぎる。みんな自分の生活が有り自分の守備範囲を持っていて、それぞれの持ち場で頑張ってんだから、全然別々の人が別々の動きで同じ問題にアプローチする点が連なって線になればいいんだ。石巻に行ってた兄ちゃんが、利根川堤防決壊した水害のとき、栃木の小山に泥かきに行く。そりゃずっとはいけない。でも少し暇を作って行って来る、ってのがいいんだ、かっこいい。

これが普通。けど、このイベントが異常なのは終わりが決まってない点だ。ときどき訪れて作品の様子を見に行ったり、修理したり、「意図的に」修理しなかったり(その経年経過の様も作品だからねー)、ずっと続く予定なんだって。作家個人の判断で「意図的に」展示終了させることも可能ってとこも含めて、思考停止に陥らない工夫に思えた。

これからも展示されている様子を想像します。あの家に住んで、ローソンでおにぎり買ってた人のことを想像します。コメリで花の苗を買って庭を飾ってた人が今どこで何してっか想像します。6号を曲がった先の場所のことを想像します。

https://soundcloud.com/user1702173/sets/dont-follow-the-w... ワタリウムでの展示の音声ガイダンスです。sound cloudです。ちょっと雰囲気伝わるでしょうか。

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