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トップレベルの研究者確保と「アート的思考力」の起用が、 これからの日本の「AI」・「ALife」を活性化させていく。

日本には AI や ALife の先端的な研究者が数多く存在し、ユニークな研究を進めているにも関わらず、一向に大きなうねりとして活性化しないのには、主に2つの理由があります。

1つ目は、日本政府・企業側の受け入れ体制、それ自体です。東京大学大学院工学系研究科准教授・松尾豊氏のリサーチによれば、諸外国における最先端のディープラーニング研究者の年収は、トップ5のレベルで数千万ドル。30位内だと数百万ドル。300位前 後でも50万ドルにものぼるとされています。例えば、研究ラボを立ち上げるとして、トップレベルの研究者を20~30名雇うとなると、人件費だけでも数百億円規模になってしまいます。もちろん日本国内でも年間数百億円を投資している日本企業は数多くあります。しかし、人的投資だけで、それほどの予算を割こうという企業は果たしてあるでしょうか。

2つ目は、この分野の産業化において必須とされている、右脳的な知能の欠如。すなわち「アート的思考」への絶望的な関心の薄さです。かつてのアメリカでは、ビジネス界のステータスは「MBA」(経営学修士)を取得することでした。しかし、現在では MBAよりも「Master of Fine Arts=MFA」(美術学修士)を取得することのほうが重要視されています。また、ニューヨーク近代美術館(MOMA)のアートツアーにおいては、ビジネスマンの参加数が急増しているといいます。こうした傾向は、多くのビジネスマンが「右脳的な知能(アート的思考)」こそ、来るべきAI、ALife時代のスタンダードになると見抜いているからだと考えられます。

最近では、アメリカや中国による同分野への投資額は右肩上がりで伸び続けており、特に中国はアメリカを追い抜く勢いで資本を投下しています。同時に、ディープラーニングの研究・開発を担う人材の確保を強化しており、ここ5年のリクルーティングには目覚しいものがあります。一方で平成30年間の我が国の研究費は、横ばいのまま。この先、日本の政府や企業が、国内の気鋭の研 究者たちを国内にひきとめておくことは、困難を極める状況だと言わざるを得ません。

少しばかり悲観的な話題になってしまいました。しかし、日本のもつポテンシャルの一つに「できあがったシステムを磨きあげ、進化させていく」という点にあります。その能力をさらに育むためには、国家戦略としての研究費の投資と人材育成が極めて重要です。さらに、日本人独自の「右脳」と「左脳」を俯瞰と仰視を縦横に行き来する思考性や、景色の奥行きを遠近法的にではなく、レイヤーとして想像する感性、日本の四季折々の自然のありようからインプットされていくリズムなどから生まれるアート的思考力が AI、ALifeの今後の進展に大きな大きな影響を与える予感がします。

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