仲間がライバルに変わるということ

少し前からなのか、もう数年経っているのかもよくわかりませんが、コーヒーはブームです。都会でも田舎でも、自家焙煎やこだわりのカフェが多くオープンし、コーヒーは身近な飲み物として認知されています。コンビニの100円コーヒーが火付け役になったとか、高品質コーヒーが手軽な価格で美味しく飲める自家焙煎店が増えたとか、理由はいろいろとあるとは思いますが、コーヒーを生業とする僕らにとっても、この流れは嬉しく、商売としてもありがたいことです。これが一時的なブームで終わること無く、コーヒーがずっと愛されるるよう、僕らにできることを考え、続けていきたいと思っているわけですが・・ここへきて、予想だにしなかった事態に遭遇しました。

コーヒーとカフェのブームは、コーヒーを販売する側へも大きな影響を与えました。以前までは、飲食店が美味しいコーヒーを提供しようとした場合、大手コーヒー会社や、僕らのような自家焙煎業者にコーヒーの相談や依頼をしていました。珍しい銘柄を紹介したり、オリジナルブレンドを作ったりという流れ。野菜や肉、調味料といったものと同様に、専門の業者から仕入れて使うのがコーヒーでした。しかし、コーヒーのブームは、その垣根を取っ払ってしまいます。小型で扱いやすい焙煎機がいろんな会社から売り出され、生豆もセットで販売するようになり、飲食店が自前でコーヒーを商品化できるようになったのです。メリットは、焼きたてである=美味しそうにみえること。店頭で焙煎していれば効果は抜群ですし、このお店だけのオリジナル品・限定品であると言われれば、お客さんの関心も強くなります。中には、焼きたてであることだけをアピールし、生豆の品質にはこだわならい所もあります。原材料の仕入れ値を下げる=コストを下げられる。その上で付加価値の高いコーヒーとして売れれば、飲食店にとっては良いことだらけなのかもしれません。もちろん、デメリットもあります。機器の導入費用や、担当者の育成などがそうですが、メリットに比べれば小さいことになるかもしれません。実際はそこが一番重要だと思うのですが、売り込む側も導入する側も、そこは重く考えないのでしょうね。しかし、他人事のように考えていたこの「飲食店の自家焙煎ブーム」ですが、当店の卸・関連先にも実際に影響が出ていました。さすがにそーっとやっていたらしいですが、自家焙煎してみようと計画して、試験的に焙煎もしてみたお店があったようです。結果的に、やめたとのこと。その話を聞いた時には驚きましたし、ヤバイなぁと思ったのですが、そのお店の方曰く、「あんな面倒なことやってられん。苦労したわりに、お前のとこほど美味くなかったし」と。褒められたんだか違うんだかわかりませんが、まあ、良い意味にとっておくことにしました。焙煎の技術というのは簡単に身につくものではありません。経験がものをいう、奥が深い世界。高性能でフルオートの優秀な機械であってもマネのできない、職人っぽさを絶対に出せるはずだ!負けていないんだ!そう言い聞かせながら、安心したような今後の不安が増大したような、不思議な気持ちになっていました。それでも、コーヒー屋として勝てる部分は見つけられたような気もしましたし、卸先とも良好な関係を続けていけると思っていたのです。そう、あの日が来るまでは。。

その日は突然やってくる。卸先の会社さんから連絡がありました。こちらの会社さんはカフェを何店舗か運営されていて、そのすべてで当店のコーヒーをお使いいただいています。その会社が、新たに店舗をオープンしたとのこと。んん?なんか今までとは違う。。今までは、計画段階からお話があり、打ち合わせなどもしていたのですが、今回は一切ない。まさか。。はい、予感的中。新店舗は、自家焙煎コーヒーのお店でした。もう、言葉がない。勝手ではありますが、今までの店舗もずっと関わらせていただいていて、なんというか、仲間意識みたいなものを感じていたのです。しかし、その会社が同業になるという。つまり、僕のコーヒーは要らないということなんだ。。いまこうしてこの文を書いてみて、なんだか笑ってしまいました。大げさなこと思ったんだなぁ、て。でも、偽らざる本心でもあります。泣きそうでしたから。久々にグサッと突き刺さりました。そう、まるで失恋したようなそんな気分です。いきなり振られた。予兆は無し。なにがいけなかったんだろ??その日から何度も何度も理由を考えます。落ち度があったに違いない、と。しかし答えはわからない。でも、聞きに行く勇気もない。答えが出ないまま悶々としていた時間でした。ですが、少し経ってから気付いたのです。この冒頭から書いていたカフェブームのこと。カフェ業務を主体としているこの会社が、今後の展開も考えて新しいプランを練っていたんじゃないか。何店舗かやってきて、これから同じものを何店舗も作るはずないじゃないか。きっといろいろ考えて、自家焙煎を選んだ。それって、普通じゃね?むしろ、発展的でスゴくね?そう思うと急に気が楽になり、身体も動きました。オープンからすでに何週間か過ぎてしまいましたが、いつもどおり、同じようにお祝いのお花を持って、新店舗へと伺いました。真新しい焙煎機と、並んだコーヒー豆。おしゃれな内装とたくさんのメニュー。そこは素晴らしい空間でした。お店の方々とも楽しくお話でき、いろんなことを知りました。今後は、地域を共に盛り上げていく同業者として、ご協力できれば嬉しいと思っています。

きっと、今後もこういった流れは続いていくでしょう。卸先が同業になったり、近くに同業が増えていったり。でも、それでコーヒーを飲む人が増えて、結果的に自店のお客さんも増えていくことに繋がるのなら、とても良い流れです。しかし、心の狭い僕は、キレイ事だけでは終われないのです。たくさんの中から選ばれる、一番でありたい。誰にも負けたくない、という気持ちがなければ、商売など続けられません。だからこそ、強力なライバルは不可欠。たくさんのライバルの中で切磋琢磨し、自身の力を高めていきたいと思います。

カフェ開業を希望される方々のお手伝いをしております。お気軽にご相談ください。企業向けの大型案件ばかりでなく、個人店様向けの実績も豊富です。まずはお話だけでもお気軽にどうぞ。お待ちしております。

(伊那)カフェコーデ 0265-76-5117

mail : coordination@cafe-coode.com


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