私を構成するマンガ③:『魔法陣グルグル』

前2作品の記事を読んでくださった方、ありがとうございます。
すごく私的な読書体験を書いているので、「スキ」がいただけるなんて大変光栄でした。

3作目として挙げるのは、今回選んだ5つの作品の中で、唯一のギャグ漫画。

『魔法陣グルグル』:センス・世界観の虜になったギャグ作品

初めて読んだのは、おそらく小学3~4年生の時。友人宅だった。ほんと、お腹がよじれるほど笑って、次の日古本屋に駆け込んだ。

「魔王を倒して世界を救う」というシビアな目的を前に、繰り広げられるのはなんともふざけたバトルとラブコメ。敵も味方も、ユーモラス。以下魅力を3つ挙げていきます。

1)「キャラ全員で」ボケてくる

誰もがボケ要員。冷静な常識人なんていない。
ツッコミはゲーム画面でいう会話ウィンドウにお任せ。

主人公のニケが、先陣切ってふざけているのがいい。しかも主人公らしからぬ下品さとずるさをもっているのがとても魅力(これは『封神演義』にも通じるところかも)。自ら笑いを取りに行かされている感が好き。ちゃんと見せ場はかっこいいしね。

それに、毎エピソード出てくる変なオヤジたち。ゴチンコ、ガタリ様、カヤ、ドキド、アダムスキー、大臣、デリダ、総裁、ワンチン、自然界の王、爺ファンタジー…そしてキタキタおやじ。もはや彼らがストーリーを回しているといっても過言ではないのではないか。
いい感じに話を大きくし、引っ掻き回し、導いてくれ、ちょっとほろりとすることを言ってくれたりする。
この漫画の代名詞は間違いなくキタキタおやじだもんな。

ツッコミ専用キャラっていないんじゃないかな、と思えるほど、全員ボケを仕掛けてくるのが好きなところ。トマとかルンルンはツッコミ寄りかな、と思うけど常にではないし…。ニケの両刀ぶりは、やっぱりすごい。

2)「声に出したくなる」ギャグ

ギャグの言葉の響きにパワーがあると思う。
擬音系(ヒッポロ系ニャポ~ン、ギンギー等)と詩歌系(いかにも御意、レイド等)。どちらも「声に出したくなる」んだろうなと思う。

以下思い出せるものを羅列。主にニケの抜け感が発揮されているギャグシーンが好き。

忘れられないセリフ・単語
 ・このオノを…捨てる!
 ・ぼくにはとてもできない
 ・おもろうてやがてダメージ
 ・バーサーカーペッパー
 ・イイモデード
 ・「ギップリャ!」っていう掛け声を思いついた方、ハイセンスすぎて尊敬です。

長い印象的なギャグ
 ・肩のうしろの2本のゴボウのまんなかにあるスネ毛の下のロココ調の右
 ・パンを尻にはさんで右手の指を鼻の穴に入れて左手でボクシングをしながら『いのちをだいじに』と叫んではいけない
 ・ここのババアはよいババア~子どもにやさしくかねもちだ~ああババアよフォーエバーソーファイン

書いていてなんだこれと思いながら爆笑している。

あと、留め絵でいうと
・アッチ村で披露した勇者の踊り
・ミグミグ劇場のちょっと覗いてくるアイツ
・わきの下おにぎり
あたり。朝寝坊していると夫が寝室のドアでミグミグ劇場やってくるのだが、何回やられても笑う。

3)ファンシーとなまくら感の融合

魔法があって、妖精や魔物がいて、お城にはお姫様がいて、各地に伝説があって、いろんなところに宝物が隠されていて、主人公たちは選ばれしもので…
舞台は超ド直球のファンタジー世界。

ドラクエやFFなどのRPGをやったことがなかったので、この漫画がそういうテイストで描かれていることは分かっていなかった。
それまでにももちろん異世界が舞台の物語には、読んだことはあった。だが、この漫画のように完結した世界地図を丸々旅する冒険物語は、初めてだったように思う。

個人的には西洋風ファンタジーはあまり好きにならないんだけど、この世界観の中で、肩の力の抜けたちょっとジジ臭い笑いが展開されるその取り合わせが最高だった。これはまさに、ククリとニケのキャラクター性そのもの。素晴らしい主人公とヒロインの組み合わせだったんだなと改めて思う。

終始すっごいふざけたテンションなのに、プカプカドラゴンとかアラハビカとか、ちょっと不思議な雰囲気のあるエピソードがフッと差し込まれたとき、なんというか「良いもの読んだな」という感覚になれた。
物語後半はもはや絵本の世界のようにメルヘンでポエミーで、ややついていけなくなった感はあったのだけど…。

あと、「魔法陣」というモチーフが最高。「呪文」よりも呪術的・儀式的で少しダークなイメージもある。その妖しげな魅力に引き込まれたのは間違いない。「シンボル」に惹かれるのはオタクの性かもしれないが、象徴学的原体験は『グルグル』だったかな、とも思う。自由帳に魔法陣描きまくってた。

好きなエピソードは「バナナムーン編」。盗賊になった主人公たちとくしゃみが変な魔物大臣とのバトル。王女奪還。初めてのキラキラ。
ラプンツェルやカエルの王子様などのメルヘン要素、バナナムーンの神秘性、バトルの派手さ・スピード感が良い。

ミルカ姫の愛が、アヒルマンを生んだ!

まとめ

書いていて思い出し笑いをこらえるのに必死だった。
3回もアニメ化されてるっていうのが、世代を超えてみんなの心に響いているということの証明だな、と思う。

続編もあるとのことだが、未読。そろそろ読んでみようかな。

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