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開発と改善は同時進行③

では、木工所から商品開発ができる人材に必要な要素は何でしょうか。

  1. 業務外でも時間・体力を費やすことのできる動機

  2. マーケット感覚

1が大前提です。そもそも納期が迫ってきている仕事があるのに、業務中に中長期目標の商品開発ができる人間はまずいません。なので、普通の木工所では業務時間外で企画や試作を行うのが常です。ここを自身の力で突破できる人材は創造性に富んでいるタイプであり、そうした人が木工所で働いていることは前述したとおり珍しくありません。つまり、十分ではないものの、素地はあります。ここの問題は、なぜ素早く継続的に進めなくてはならないかといった認識を持っていないことであり、だいたいは仕事の忙しさなどの環境要因で流されてしまうのが大体のパターンです。

2は、1の前提をクリアした後で開発を繰り返すと経験的に身に着けることができます。ですが、経験で身に着けることを期待していると、その人材は転職するか老化で力を発揮できなくなるでしょう。高卒で生涯一カ所で働く就業スタイルが常識ではなくなった現代では、経験による成長に期待すると成果を出せません。
具体的にマーケット感覚が欠如している事例を挙げるなら、普通の木工職人が自発的にものを作り出すと、売ることを前提にした物作りをしません。物作りと物売りは一体で考えることで生業として成立します。どんな人に向けて、どんな価格で売るかといったマーケット感覚のない物作りは只の趣味であり、仕事においては実体を持ちません。

とはいえ、木工所の作業員って、趣味でやってる、自分が使いたい、という動機で業務外時間にて物作りをやっているので、当然のことなんですね。ところが、惰性でそんなことやってると現代のプロフェッショナルとして廃れちまうし、何より木工所が潰れてしまうだろう、と私は声に出して叫んでいます。

各自の大事な時間を費やして励んでもらうなんて本当に難しいことだし、何よりお願いするのは辛いです。それが必要と知っている人間ほど、その辛さはよく知っている。次回は、どうやって人を動かすかについて私見を述べます。

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