マガジンのカバー画像

【小説】偶然でも運命でもない

63
1話につき5分以下の連載小説。 60話で完結。 高校生男子:大河と、三十路OL:響子の、日常を切り取って繋ぐ想い。 多分。この出会いは、偶然でも運命でもない。
運営しているクリエイター

#あなたに出会えてよかった

小説『偶然でも運命でもない』 1話:彼女の日常

駅を出て早足で歩きながら、定期券を鞄にしまい、持ち手を肩に掛ける。 持ち手のベルトと肩の…

かのこ
4年前
11

小説『偶然でも運命でもない』 3話:シュシュとローファー

夕陽が差し込む放課後の教室。 黒板の隅に書かれた松本大河という文字を消す。 消したばかりの…

かのこ
4年前
4

小説『偶然でも運命でもない』 4話:ゆっくりと滑り出す

ドアが、閉まりまーす…… 独自のイントネーションで車掌がアナウンスする。 電車のドアが閉ま…

かのこ
4年前
6

小説『偶然でも運命でもない』 5話:交差する点

改札を抜けたところで、後ろから肩を掴まれた。 振り返ると、見知らぬ男性がこちらを見下ろし…

かのこ
4年前
5

小説『偶然でも運命でもない』 6話:年下の男の子

彼は、松本大河と名乗った。 18歳。高校3年生で、大学受験だが進学にあまり興味がなく、受かっ…

かのこ
4年前
6

小説『偶然でも運命でもない』 7話:偶然じゃなくても

響子さんの言葉はもっともだ。 確かに、歳の離れた友人がいてもおかしくはないとは思う。SNS等…

かのこ
4年前
9

小説『偶然でも運命でもない』 8話:ラーメン

「あ、大河くん。」 学校帰り、駅のホームで電車を待っていたら、ふいに名前を呼ばれた。 広げた単語帳から顔を上げなくても、響子がすぐ横に並んで立ち止まるのが視界に入ってくる。 彼女はこちらを見上げて微笑む。 「おつかれさま。」 「おつかれさま。」 単語帳を閉じてポケットにしまうと、大河は伸びをした。 彼女は「今日はネクタイしてるんだね。」と、俺の首元に視線を寄越す。 「うん。今日、寒いし。」 「寒いとネクタイなの?」 「いつもは学校出る前に外してるんだけど。」 「なるほど。……

小説『偶然でも運命でもない』 9話:花の日

響子にとって、水曜日は花の日だ。 駅ナカの花屋さんでは、水曜日だけのサービスがある。 季節…

かのこ
4年前
4

小説『偶然でも運命でもない』 10話:繰り返す日々の合間に

「で、結局、例の人には会えたわけ?」 昼休み。 窓枠に座って、弁当を広げながら海都が訊いて…

かのこ
4年前
7

小説『偶然でも運命でもない』 11話:君は誰が為に紅を纏う

「あ、新色出てる。」 改札からホームに向かう途中、小さなドラッグストアの前で響子は足を止…

かのこ
4年前
4

小説『偶然でも運命でもない』 12話:弱点

券売機にICカードを突っ込む。 定期券の更新ボタンを押す。 学生、3カ月。 これが、最後の更新…

かのこ
4年前
3

小説『偶然でも運命でもない』 13話:天使の詩

「冬休みじゃないの?」 「冬休みだけど学校行ってる。図書室開いてるし、先生も誰かは居るし…

かのこ
4年前
3

小説『偶然でも運命でもない』 14話:メリークリスマス

浮かれたイベントに電車の遅延と運転見合わせが重なって、駅の中は混雑していた。 ざわざわと…

かのこ
4年前
5

小説『偶然でも運命でもない』 15話:思い出の再放送

「そこで、我に返った秀くんが言うわけ。『違う、キミじゃない』って。」 「響子さん。それ、秀じゃなくて、コウスケなんでしょ。秀が出てるドラマかもしれないけど、役者と登場人物を混同したら失礼って、さっき、響子さん言ってたよ。」 焼肉屋のテーブル席。 通された4人掛けのテーブルに、何故か横並びに座って、響子はビールを飲みながら、せっせと肉を焼く。 「え?そうだっけ?」 大河の言葉に、響子は動きを止めた。 こちらを覗き込むその目は潤んでいて、耳が赤い。彼女は今、完全に酔っ払っている。