小説『偶然でも運命でもない』 8話:ラーメン
「あ、大河くん。」
学校帰り、駅のホームで電車を待っていたら、ふいに名前を呼ばれた。
広げた単語帳から顔を上げなくても、響子がすぐ横に並んで立ち止まるのが視界に入ってくる。
彼女はこちらを見上げて微笑む。
「おつかれさま。」
「おつかれさま。」
単語帳を閉じてポケットにしまうと、大河は伸びをした。
彼女は「今日はネクタイしてるんだね。」と、俺の首元に視線を寄越す。
「うん。今日、寒いし。」
「寒いとネクタイなの?」
「いつもは学校出る前に外してるんだけど。」
「なるほど。……