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【小説】偶然でも運命でもない

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1話につき5分以下の連載小説。 60話で完結。 高校生男子:大河と、三十路OL:響子の、日常を切り取って繋ぐ想い。 多分。この出会いは、偶然でも運命でもない。
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記事一覧

ペンを取りて君に贈るうたを編む

片付けをしていたら、ノートに挟んだプリントの束から一枚のルーズリーフが落ちてきた。拾い上…

かのこ
2年前
7

小説『偶然でも運命でもない』 1話:彼女の日常

駅を出て早足で歩きながら、定期券を鞄にしまい、持ち手を肩に掛ける。 持ち手のベルトと肩の…

かのこ
4年前
11

小説『偶然でも運命でもない』 2話:窓の外を流れる

その人はいつも、2両目の先頭側のドアの横に立っていた。 そこにいる彼女に初めて気付いた時、…

かのこ
4年前
7

小説『偶然でも運命でもない』 3話:シュシュとローファー

夕陽が差し込む放課後の教室。 黒板の隅に書かれた松本大河という文字を消す。 消したばかりの…

かのこ
4年前
4

小説『偶然でも運命でもない』 4話:ゆっくりと滑り出す

ドアが、閉まりまーす…… 独自のイントネーションで車掌がアナウンスする。 電車のドアが閉ま…

かのこ
4年前
6

小説『偶然でも運命でもない』 5話:交差する点

改札を抜けたところで、後ろから肩を掴まれた。 振り返ると、見知らぬ男性がこちらを見下ろし…

かのこ
4年前
5

小説『偶然でも運命でもない』 6話:年下の男の子

彼は、松本大河と名乗った。 18歳。高校3年生で、大学受験だが進学にあまり興味がなく、受かっても受からなくても地元に帰って早く仕事がしたいのだという。 大河の着ている制服は、県内でもトップクラスの進学校の筈だった。 秀才の考えることはわからない。 そう思って、響子はそれについて考えるのはやめた。 テーブルにトレイを置くと向かい合って座る。 「大河くん、本当にそれで足りるの?遠慮してない?」 彼のトレイには小さなハンバーガーひとつとセットのポテトとコーラが並んでいた。 高校生男

小説『偶然でも運命でもない』 7話:偶然じゃなくても

響子さんの言葉はもっともだ。 確かに、歳の離れた友人がいてもおかしくはないとは思う。SNS等…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 8話:ラーメン

「あ、大河くん。」 学校帰り、駅のホームで電車を待っていたら、ふいに名前を呼ばれた。 広げ…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 9話:花の日

響子にとって、水曜日は花の日だ。 駅ナカの花屋さんでは、水曜日だけのサービスがある。 季節…

かのこ
4年前
4

小説『偶然でも運命でもない』 10話:繰り返す日々の合間に

「で、結局、例の人には会えたわけ?」 昼休み。 窓枠に座って、弁当を広げながら海都が訊いて…

かのこ
4年前
7

小説『偶然でも運命でもない』 11話:君は誰が為に紅を纏う

「あ、新色出てる。」 改札からホームに向かう途中、小さなドラッグストアの前で響子は足を止…

かのこ
4年前
4

小説『偶然でも運命でもない』 12話:弱点

券売機にICカードを突っ込む。 定期券の更新ボタンを押す。 学生、3カ月。 これが、最後の更新…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 13話:天使の詩

「冬休みじゃないの?」 「冬休みだけど学校行ってる。図書室開いてるし、先生も誰かは居るし。市立図書館も近いし。」 響子の問いに、大河は「家にいるより、その方が便利だから」と答えた。 「そういえば、市立図書館って行ったことないな。……ここの図書館には、何があるの?」 「本。」 「いや、それはわかるよ、流石に。」 「あと、雑誌とか、CDとかレコードとか、DVDもある。観賞用のブースも。」 「そういうんじゃなくて。」 そこまで喋って、響子さんの求めている答えは、図書館の基本機能では