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【小説】偶然でも運命でもない

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1話につき5分以下の連載小説。 60話で完結。 高校生男子:大河と、三十路OL:響子の、日常を切り取って繋ぐ想い。 多分。この出会いは、偶然でも運命でもない。
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2020年2月の記事一覧

小説『偶然でも運命でもない』 31話:煮豆

惣菜屋が並ぶ一角から出てきた響子は豆腐屋のロゴのプリントされた買い物袋を下げていた。 い…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 32話:ハインリッヒーズ

「それ、何、聴いてたの?」 外したイヤホンのコードを巻き取って鞄にしまう。その手元に、響…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 33話:白い絨毯

期待に膨らむ胸で、朝日の透けるカーテンを開ける。 ヒーターをつけた暖かな部屋では、外の寒…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 34話:初恋

「響子はさ、いつまでも独身でそれでいいの?」 「べつに。今、困ってないし。子供が欲しいわ…

かのこ
4年前
6

小説『偶然でも運命でもない』 35話:月の地図

「カニにもウサギにも見えない……。」 そう言って、響子はその写真に視線を落とした。 10年で…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 36話:告白

放課後の教室。 クラスの女子に呼び止められて居残った大河は、ぼんやりと陽の落ち掛けた空を…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 37話:理由

路線の違う片野とホームへと続く階段の前で別れて、大河と海都は並んで階段を降りる。 階段の途中、ホームに響子の姿を見つけると海都は「響子さーん!」と呼びかけた。 「おい。」 慌てて海都を引っ張る大河に「いいじゃん」と笑って海都は階段を駆け下りる。 一緒に引き摺られるようにして階段を降りると、響子はこちらを見上げて笑っていた。 「おつかれさまです。」 「おつかれさま。」 すっかり慣れた挨拶を交わすと、海都は大河の耳元で、「俺、やっぱ戻るわ。片野、心配だし。」そう言って今降りたばか

小説『偶然でも運命でもない』 38話:そういう意味

改札を抜けると、響子はいつもと違う方向に足を向けた。 大河は黙って、数歩後ろをついていく…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 39話:前髪

前髪を切り過ぎた。 いや、切ったのは自分じゃなく、いつもお願いしている美容師なのだが。い…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 40話:変わらないもの

ホームへの階段を降りると、すでに電車は来ていた。 慌てて手近なドアから乗ると同時に後ろで…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 41話:甘い企み

「あら、珍しい。」 響子の声に、こちらを振り返った大河は、太いストローの刺さったプラスチ…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 42話:未知の生き物

駅のホーム。ベンチから離れたところにぽつんと設置された自動販売機のボタンを押し、カードを…

かのこ
4年前
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小説『偶然でも運命でもない』 43話:それぞれの朝

「やっっっっっちまった……。」 ベッドの上で身体を起こして、毛布に包まったまま、響子は溜…

かのこ
4年前
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